猫が母になつきません 第453話「キセキ」
去年、梅の実はほとんどなることなく、小さな小さな青い実が数個ほど地面に落ちていただけでした(第398話「梅の実」)。だから「この梅の木は実がならないタイプなのだ」と勝手に思っていました。しかし、今年はたくさんの大きな実をつけたのでいろいろ調べてみると、この木はたぶん《南高梅》で、1本だけでは実はつかない。近くに違う種類の梅の木を植え、さらに蜂や鳥に花粉を運んでもらって受粉してはじめて実がなるのだということがわかりました。
うちには梅の木が2本あって、白梅と紅梅なので種類は違うのだと思います。しかしその2本は一番離れた庭の端と端、対角線上に位置していて近くとは言い難い。だから去年は受粉せず、実がならなかったのでしょう。庭の手入れを少しずつしていくうちにいろんな鳥がやって来るようになって、今年はその鳥たちがせっせと花粉を運んでくれて、たくさんの実をつけたのだと思います。
実家でやっていたのと同じように、朝起きてさびにご飯を出したらすぐに庭に出て落ちている実を拾い、もうすぐ落ちそうな実は木の枝でつついて落とし、台所で洗って乾かす。久々の梅仕事です。実家の木は大きくて1日にバケツ2杯くらい拾っていましたが、ここで拾うのは料理用のザルに半分もないくらい。1日に何度も窓から実が落ちていないかチェック。量が少ないので一粒一粒が大事です。雨の日も傘をさして収穫。結局トータルで5キロくらい採れました。(ちなみに実家で採れていたのは60キロくらい)
採れた梅はフリーザーバッグに梅と同量の氷砂糖、りんご酢少々を加えて《梅シロップ》に。氷砂糖が溶けきるまでは袋を1日に何度か揺らしたり、その後は発酵していないか気をつけたり、一ヶ月くらいはこまめに面倒をみることになります。
表で道を掃除している大家さんに会ったとき「今年は梅がたくさん採れたんですよ」と伝えると「あら、そうなの?食べられるのかしら?」とおっしゃっていたので、これまでもあまり受粉はしていなかったのかもしれません。シロップが完成したらお裾分けしようと思います。
今年突然梅の実がなったのは《奇跡》ではなく、庭を手入れ→鳥がくる→受粉という流れがあったからだということはわかりましたが、何日か降り続いた雨がやんで久しぶりに陽がさした朝、たわわに実った梅を見上げたときには奇跡的な贈り物を与えられたような不思議な気持ちになりました。葉が落ちたらきちんと剪定をしようとか、庭の手入れを続けて鳥たちの誘致もおこたらずとか、もう来年の梅の実を楽しみにしはじめている私です。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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