倉田真由美さん「ケーキのお値段」くらたまね~&らいふVol.7
漫画家の倉田真由美さんが最近ハマっていることに「甘活」がある。スイーツを食べ、ホッとする瞬間は至福の時。その想い出は高校時代に遡る。当時の大好きだったショートケーキは1つ180円、そして最近味わった高級スイーツコースのお値段は――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。新たな描きおろし漫画も収録した最新の書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
高校時代の楽しみ
地元福岡での高校時代、ケーキの買い食いが楽しみの一つでした。
高校には電車通学していましたが、時折途中の香椎駅で降りて、駅前にあった「さかえ屋」でケーキを食べて帰っていました。「さかえ屋」は、福岡の老舗和洋菓子メーカーで、ここの、名前は忘れてしまったけど、キャラメル味っぽいクリームのショートケーキが大好物だったんです。
このケーキが確か、一個180円くらいでした。
仲のいい女友だちと、さかえ屋の色とりどりのケーキが並んだショーウインドウの前で、「あれにしようか」「いやこれもおいしそう」と悩んだ挙句、結局私はいつも同じキャラメル味のケーキを注文していました。明るい照明の店内の、白い小さなテーブル席で友だちと向かい合って座って食べるケーキの美味しさ。今でも忘れられません。
予約の取れないスイーツ店へ
そしてそれから35年以上経った今年の3月。知人から「全然予約が取れないスイーツ店のイートイン予約が取れたので、よかったら行きませんか」とのお誘いが来ました。
「超人気店で、一度に4人1組しか入れないお店なんです。コースで価格は5000円くらいなんですが」
安くはないけど、そんなことを聞いたら行くしかありません。是非とお願いして、とうとう先日その予約日が来て行ってきました。
渋谷区千駄ヶ谷にある「おかしやうっちー」、13時からの回に私と知人Oさん、Oさんの友人ご夫妻が集まりました。軽い自己紹介をして、店内へ。店主の内山さんに予約名を告げカーテンで仕切られた店の中に入ると、小さなカウンターテーブルに椅子が4つ並べてあります。
「今日はよろしくお願いします」
カウンター奥の厨房から笑顔の内山さんに、まずはドリンクの注文を聞かれました。私はコーヒーと迷って、中国茶東方美人のホットにしました。
最初に出てきたのはきなこを使っていない「わらびもち」と「よもぎプリン」。
わらびもちはまだ温かくて、もっちりととろける柔らかさ、そしてなんとも上品な甘さで食べたことがない味です。いつも食べているわらびもちも美味しいですが、きなこの味が強いので本来のわらびもちの味をしっかり確認したのは初めてでした。
「よもぎのプリンって初めて」
「ここは、スイーツではあまり使わない食材、野菜なんかもよく使われるんですよ。内容も季節によって変わります」
店の常連だという奥さんが説明してくれました。
続いて出てきたのが「奥田トマトのムース」、これも中に入ったトマトが果物のように甘く、でもしっかりトマトで鮮烈でした。
圧巻のショートケーキ「生クリーム」が!
そして私にとって圧巻だったのは次の「いちごみるく」、いちごのショートケーキです。
クリームがミルク!ミルクがクリーム!
こんな生クリームにはちょっとなかなか出会えません。そして控えめなスポンジとの相性が抜群で、飲むように食べてしまいました。もっとゆっくりちまちま食べればよかったと、食べ終えてから後悔したくらいです。
ラストに出されたのは、モンブランのように見える「さつまいものタルト」。栗よりも甘いんじゃないかというさつまいもペーストに、サックサクのタルトと生クリームが後を引きます。コースの量は多くはないですが、もうこれで充分、お腹いっぱいです。
貴重な甘活体験をしたなあ、と誘ってくれたOさんに礼を言ってお会計をし、皆と別れて一人で最寄りの北参道駅へ向かいました。道々「あれもよかった」「これもおいしかった」と、過去に体験した自分のスイーツ人生を思い返したりました。
当別な高級スイーツのコースを体験したからといって、それらが色褪せることはありません。
高校時代の180円のケーキも、この日の5000円のコースも、どちらも印象深く思い出に刻まれます。若い時に体験した恋愛感情のような強烈さはないけど、じわっと小さな喜びとして、意外と長く残せるものみたいです。
