「朝食前の運動」は糖尿病予防には逆効果だった! 運動習慣のない人におすすめの血糖値改善「四股踏み体操」&「足指タオルつかみ」【医師監修】
日本の糖尿病患者は「境界型」と呼ばれる予備群も含めると推計約2000万人に達する。医療の発達や研究により、近年では糖尿病は決して治らない病気ではなくなっている。しかし、誤った知識で運動療法に取り組んだ結果、糖尿病が悪化し合併症を発症するケースもしばしばあるという。血糖値にまつわる逆効果&正しい運動習慣を専門家が解説する。
教えてくれた人
室井一辰さん/医療経済ジャーナリスト、辛浩基さん/糖尿病専門医・しんクリニック院長
食事制限をしながらの早朝ジョギングはキケン
知識の浅い医師が、「痩せればいい」「血糖値を下げればいい」と安易に考えて患者を診ることで、日本人特有の原因が見過ごされる側面もあるという。
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんもこう指摘する。
「糖尿病の研究自体は海外に引けを取りませんが、臨床の現場で成果として上がってきていない。また、日本の糖尿病治療の現場では、かかりつけ医によって食事療法や運動療法、服薬指導のレベルに差があることが課題の一つとされています」
運動療法も逆効果になる場合がある。
「適度な運動は血糖値を下げインスリンの働きを助ける作用がありますが、1万歩以上歩くなど長時間にわたる運動は、一部の糖尿病患者にとって健康上のリスクになることがわかってきました。とくにインスリンなど服用中の薬によっては、運動で急激な低血糖を招く恐れがあります」(糖尿病専門医・しんクリニック院長の辛浩基さん)
ジョギングも要注意だ。
「食事制限をしながらのジョギングは大変危険です。起床直後の早朝からジョギングをするような人がいますが、低血糖リスクのある薬を服用中の人などが朝食前に走るとふらついたり、意識を失って転倒する危険があります」(同前)
運動習慣のない人におすすめなのが「四股踏み体操」や「足指タオルつかみ」
そうしたなか、近年、注目されているのが「HIIT(ヒート)」と呼ばれる運動法だ。今年4月のブリティッシュ・コロンビア大(カナダ)などの研究報告によると、「有酸素運動」より効率的に血糖値が改善したという。
「HIITは高強度インターバルトレーニングの略で、短い時間で筋肉を刺激する運動を指します。自転車漕ぎや速歩きなどを『息は弾むが会話はできる強度』で行ない、1日合計20分未満、週3~4回取り組むことで効果が期待できます」(室井さん)
辛さんは運動習慣のない人に「四股踏み体操」や「足指タオルつかみ」を推奨する(下図参照)。
「人体で最も大きな太ももの筋肉群を四股踏みで動かすことで、減量や下半身全体の血行促進、糖尿病性の神経症対策につながります。実践した患者さんには3か月でヘモグロビンA1cが正常値内の6%に降下、200mgDlあった食後血糖値が130~140mgDlに安定した方もいます」
「四股踏み体操」のやり方
1日5回×10セットで「ヘモグロビンA1c」が降下!
【1】脚を肩幅より広く開いて立ち腰を真下にゆっくりおろす
背中を丸めず足先を外側に向け、膝が90度曲がるまで腰を落とすことを意識!
【2】脚をしっかり開いたまま左右の膝に力を加え、ゆっくり股関節をほぐす(準備運動)
1日5回×10セットが目標。
【3】準備が整ったら、左右の脚を上げて四股を踏む
脚を上げた状態で1〜2秒静止すること!
<ポイント>
身体のブレを抑えるため、視線は2〜3mを見据える。
「足指タオルつかみ」のやり方
運動が苦手な人は、イスに座ったままできる「足指タオルつかみ」がおすすめ。床にタオルを置き、足指だけでタオルを掴もう(1日5回×10セット)。
<医師の所見>
「糖尿病による脚の血行不良防止策には、血流の要所である『ふくらはぎ』を鍛えることが重要です」(辛さん)
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2025年5月2日号
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