《糖尿病専門医が解説》血糖値上昇を防ぐために避けたいNG習慣 「野菜ジュース」「カロリーを気にする」「ジョギング」
健康のために、日頃からさまざまなことを意識して生活している人は多いだろう。しかし、よかれと思ってやっていた習慣がむしろ健康を阻害することも。特にさまざまな疾患を招く血糖値上昇には注意したいところ。そこで、『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)を上梓した、“ミスター血糖値”糖尿病専門医の矢野宏行さんに、血糖値を上げるNG習慣について教えてもらった。
教えてくれた人
糖尿病専門医・矢野宏行さん
やの・ひろゆき。やのメディカルクリニック勝どき院長、医学博士。日本医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。その後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究。24時間の血糖値の動きを調べつくし、血糖値について熟知していることで、「ミスター血糖値」の異名を持つ。著書に『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)など。
「健康のため」に野菜ジュースを飲むのはNG
野菜は体にいいものの、野菜の種類や摂取の仕方は重要だ。なかでも、健康のために摂取している場合に注意したいのが野菜ジュース。手軽に野菜が摂れるからと毎日飲んでいる人もいるかもしれないが、多くの野菜ジュースは飲みやすくするために砂糖や果物が混ぜられているため、過剰な糖質摂取につながってしまう。
「野菜の栄養素を摂るつもりで飲んでいたとしても、そのプラス面をすべて消し去り、マイナスに転じさせるほどの負のパワーを持った糖質を、過剰に摂取してしまうことになるのです」(矢野さん・以下同)
食品を購入するときに「カロリー」ばかりを気にするのはNG
太らないようにと常にカロリーを意識し、食品を購入する際にもわざわざ低カロリーのものを選んでいないだろうか。
「カロリーは肥満にも血糖値上昇にも関係性が認められません。これが、現在の医学の常識です」と矢野さん。完全に無視していいものとまでは言えないが、神経質になったとしても健康増進にはあまりつながらず、血糖値を下げることにもつながらないそうだ。
「食品購入時に成分表をチェックする際は、カロリーではなく炭水化物(糖質)を真っ先に見るようにしてください。これが、血糖値上昇のもとであり、糖尿病の大きな原因のひとつです。数字(グラム数)が高いほどリスクが上がることはいうまでもありません」
「そばは健康にいい」と食べすぎるのはNG
健康に良いというイメージの強い「そば」。実際、毛細血管を丈夫にするポリフェノールの一種であるルチンや、便通をよくする食物繊維、エネルギー代謝を促すビタミンB群などさまざまな栄養成分がそばには含まれている。
一方で、そばには多くの糖質も含まれていることも事実だ。うどんやラーメンのほうが糖質が多そうなイメージを持っている人もいるだろうが、矢野さんによると、1食当たりの糖質はラーメンもうどんもそばも大差はないそうだ。
「糖質が肥満のもとであり、糖尿病の原因であることに、なんら変わりはないのです。そばを食べること自体は構いません。しかし、リスクを認識しておくことと、食べすぎに注意することは、忘れないようにお願いします」
激しすぎる運動はNG
運動は健康によいが、大切なのは「適度」であること。「血糖値が高い状態のときに激しい運動をすると、血糖値を下げるどころか、さらに上昇させてしまう可能性があるのです」と矢野さん。
特に、無酸素運動は血糖値が上がりやすく、ハードな筋トレやマラソンなどは血糖値の観点からは避けたほうがいいそうだ。
「食後など、血糖値が高いときに行う運動は効果的。ただし、『適度に』ということが大事。激しい運動や長時間の運動は、なるべく控えるようにしましょう」
出勤前のジョギングや運動も「激しい運動」
朝の筋トレやジョギングなどを日課にしている人もいるだろうが、血糖値的にはこうした運動も要注意。通常、ジョギング程度なら激しい運動とは言えないが、睡眠による安静状態から目覚めた直後の体にとっては、ジョギングは激しい運動の範疇に入るためだ。
「どうしても朝しか運動の時間が取れないという人は、いきなりトップスピードで走り出さず、15分程度歩くなどしてアイドリングの時間をつくるようにしてください。それだけで、いくぶんましになります」
歩数を稼ぐために小股で歩くのはNG
健康志向の強い人はスマホやスマートウォッチなどで歩数を計測し、日々どのくらい歩いているか把握していることも多いだろう。しかし、毎日の歩数だけにこだわっている場合は要注意。いくら歩数が多くても、質がともなっていなければ、ウォーキングの効果も下がってしまう。小股でちょこちょこと歩くような歩き方では、歩数が多くても効果は期待できないという。
「歩くのは、歩数計の歩数を稼ぐためではありません。健康のために歩くのです。その頑張り度合が、歩数という結果で示されるのです。そこだけは、はき違えないようにお願いします」
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