「面会時間外の早朝に、数分だけでも…と譲らない家族」高齢者施設の《面会》を巡るトラブル事例「業務に支障が生じることも考慮して」注意すべき5つのマナー【専門家解説】
家族や友人が高齢者施設に入居している場合、定期的に面会に訪れて様子を確認したいと思うもの。しかしマナーを守らないと、トラブルにつながることも…。そこで、介護職員、ケアマネジャーの経験もある中谷ミホさんに面会におけるトラブル事例と、注意すべき5つのマナーについて解説してもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
高齢者施設の「面会」を巡るトラブル事例と対策
高齢者施設では、家族との面会が入居者の楽しみとなる一方で、マナーを守らない面会がトラブルにつながることもあります。実際にあったトラブルをご紹介し、面会時に注意すべき5つのマナーをご紹介します。
面会時間外の訪問「数分だけならいいだろう」
ある施設では、早朝に面会者が訪れて入居中の親族との面会を求めました。しかし、施設の面会時間は午前10時からと決まっています。夜勤の介護職員が「申し訳ありませんが、面会時間内にお越しください」と丁寧に説明しましたが、家族は「数分だけならいいだろう」と譲りません。
早朝は職員数が限られ、朝食介助や排せつ介助などケアが集中する時間帯です。面会時間外の訪問者対応に時間を取られ、朝の業務に支障が生じました。
また、別の施設では、深夜に遠方に住む家族から電話があり「父親に代わってほしい」と強い口調で要望されました。電話口の家族は酒に酔っている様子でした。
夜勤の職員が「お父様はお休みになっています」と説明したものの「声を聞かせるだけでいい」と、なかなか電話を切ってくれません。結局、なだめたり説明を繰り返したりと電話が続いた結果、夜勤業務に支障が出てしまいました。
面会の際に気をつけたい5つのマナー
上記のようなトラブルを避けるために、確認しておくべき5つのポイントをご紹介します。
【1】面会可能な時間と条件を確認する
施設ごとに、面会時間や条件は異なります。たとえば、事前予約が必要な施設や、小学生以下の子どもの面会を制限している施設もあります。
また、感染症対策として面会できる人数や面会時間が60分以内と定めるなど、ルールも決まっている場合があるため確認が必要です。
例外として、看取り期の入居者に限り、面会時間外の面会が可能な場合もあります。 ただし、対応は施設ごとに異なるため、必ず事前に問い合わせましょう。なお、施設によってはオンライン面会を実施している場合もあります。面会制限に該当する子どもや遠方に住んでいて直接訪問が難しい場合は、オンライン面会を活用するのも一つの方法です。
【2】電話をかける時間にも配慮する
施設によっては、ご家族から入居者へ直接電話を取り次いでくれる場合があります。その際、電話をかける時間帯にも配慮が必要です。
特に、早朝や夜間は、対応できる職員が限られており、すぐに取り次ぐのが難しい場合があります。そのため、職員が多く、対応しやすい10時〜16時頃にかけるのが望ましいでしょう。
また、施設によっては「電話の取り次ぎ可能時間は〇時から〇時まで」といったルールを設けていることもあるため、事前に確認しておくと安心です。
筆者は高齢者施設の相談員をしていた経験がありますが、事前にご家族から「〇月〇日の〇時頃に電話をかけます」と連絡があると、施設側も対応しやすく、とても助かりました。
【3】入居者の体調に配慮する
面会は嬉しいひとときですが、高齢者にとって長時間の面会は負担になる場合もあります。
特に体力が低下している高齢者は疲れやすいため、表情や反応を見ながら適切な時間で切り上げることが大切です。たとえば、口数が減ったり、眠たそうな表情が見られる場合は、そろそろ面会を終えるタイミングといえます。
また、施設によっては「面会時間は60分以内」などのルールが設けられている場合もありますので、事前に確認し、無理のない範囲で面会しましょう。
【4】差し入れはルールを確認する
面会時にお菓子や果物などを差し入れたいと考えるかたも多いでしょう。しかし、高齢者施設には食事制限が必要な方や、誤嚥のリスクがあるかたもいらっしゃるため、持ち込みできる食品が制限されている場合があります。
一見すると問題なく食べられそうに見える高齢者でも、噛む力が低下している場合や、水分をとろみなしでは飲み込みづらい場合があります。
また、普段の様子を知らない家族や知人が持ち込んだ食品によって、事故が発生したケースも報告されています。そのため、差し入れをする際は、事前に施設の職員に確認することが大切です。
【5】菌やウイルスを持ち込まないようにする
高齢者施設には、免疫力が低下しているかたや持病のあるかたが多く暮らしています。そのため、面会時には菌やウイルスを持ち込まないことも大切なマナーです。
特に、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行する時期は、施設でも厳重な感染対策が行われます。面会者が適切な対策をせずに訪れると、施設内で感染が広がり、入居者の健康に影響を及ぼす可能性があります。
面会の際は施設の感染対策に協力し、マスクの着用や手洗い・消毒を行いましょう。 また、自分や家族に発熱や体調不良がある場合は、無理に面会せず、体調が回復するまで延期することも大切です。
入居者が安心して過ごせる環境を守るためにも、菌やウイルスを持ち込まないよう注意し、施設の感染対策に協力しましょう。
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面会の時間は、入居者にとって大きな楽しみの一つです。マナーやルールを守りながら、心地よいひとときを過ごせるといいですね。