78才男性、自宅を売却して入居した自立型老人ホームを退去に! 転居先はどうする?【専門家がアドバス】
元気なうちにと、自立型の老人ホームに入居した78才のAさんは、毎日快適に暮らしていましたが、ある問題をきっかけに終の棲家と決めて入居した自立型老人ホームを退去せざるおえなくなったという。その理由とは…。Aさんの体験を通じて、自立型老人ホームの盲点や、入居前に確認しておくべき重要なポイントについて介護福祉士・ケアマネジャーの経験を持つ中谷ミホさんに解説していただきました。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
人気が高い自立型老人ホーム
自立型老人ホームは、介護を必要としない元気な高齢者のための住まいとして人気を集めています。
代表的なものとして、有料老人ホーム(自立者向け)やサービス付き高齢者向け住宅(自立型)、ケアハウス(自立型)が挙げられます。これらの施設では、バリアフリーの住環境や見守りサービスが整っており、高齢者が安心して暮らせるサポートが受けられます。
78才のAさんも、元気なうちに安心して暮らせる環境を求め、2年前に自立型の老人ホームへ入居しました。しかし、病気をきっかけに予想外の問題に直面することに。
終の棲家として選んだのに病気になり一転…
78歳のAさんは、一人暮らしに不安を感じ、元気なうちに安心して暮らせる場所を求めて、自立型有料老人ホームに入居しました。
家族と何度も見学を重ね、バリアフリーや見守りサービスが整ったこの施設を「終の棲家」として選んだAさん。2年前に入居し、快適な生活を送っていました。
しかし、突然の病気により日常的な医療行為が必要になったため、施設での生活が続けられなくなり、施設から退去を求められる事態に。すでに自宅は売却していたため、新しい住まいを探さなければならず、不安が募っていきました。
自立型老人ホームの盲点 介護士が常駐しない
Aさんが入居していた自立型老人ホームには、同じ敷地内に「介護棟」があり、将来的に介護が必要になった場合はそこへ移る予定でした。しかし、介護棟では手厚い介護体制が整っているものの、看護士が常駐していないため、日常的な医療行為が必要な場合には対応できません。
そのため、Aさんはこの施設で生活を続けることが難しく、退去を余儀なくされました。
このように、自立型老人ホームによっては、医療ケアが必要な方の対応が難しい場合があり、医療行為に対応できる施設への住み替えが必要になる場合があります。
医療行為に対応する住み替え先
日常的な医療行為に対応できる施設には、以下の選択肢があります。
1.介護医療院
介護が必要な高齢者の長期療養・生活のための施設です。公的施設のため、比較的安い費用で利用できます。ただし、全国的に数が少ないため入居を希望する地域に施設がない場合があります。
2.介護老人保健施設
リハビリや医療ケア、介護サービスが受けられる公的施設です。医師や看護師、リハビリスタッフが常駐し、幅広い医療行為に対応しています。ただし、自宅復帰を目指すための施設であるため、長期的な利用はできません。
3. 医療対応型の有料老人ホーム
24時間体制で医療行為に対応できる体制が整った老人ホームです。ただし、費用が高額になることが多く、経済的な負担が大きくなる場合があります。
Aさんは、ケアマネジャーや施設の相談員と相談した結果、医療体制が整った「医療対応型の有料老人ホーム」に移り、医療ケアを受けながら安心して生活を続けることができています。
入居する前に確認しておくべきこと
自立型老人ホームを選ぶ際には、将来的な介護や医療のニーズに備えて、事前に確認しておくべきポイントがあります。
元気なうちに入居しても、、Aさんのように病気や体調の変化で予想外の問題に直面することがあるためです。
自立型老人ホームは、基本的に自立した生活を送れることを前提としているため、介護や医療行為が必要になった場合の対応可否や「どのような状態まで施設で暮らせるのか」を確認しておくことが重要です。このことが入居後のトラブルや不安を避けるためのポイントとなります。
今回のAさんのケースように、自立した生活を送っていたはずが、病気をきっかけに生活が一変してしまうケースは少なくありません。自立型老人ホームに入居する際には、医療や介護が必要になった際の対応をしっかり確認しておくことが大切です。