ケアマネ試験合格者が急増 「問題が易しくなった」との指摘も 人材確保には課題残る
介護現場で重要な役割を果たすケアマネジャー(介護支援専門員)。10月13日に発表された第27回ケアマネ試験では、約5万3700人が受験し約1万7000人が合格した。合格率は約32%で、前回から10ポイント以上増加したとみられる(2023年度は5万6494人の受験者数に対し、合格者は1万1844人、合格率は21.0%)。
高齢化の加速に伴い介護ニーズが増大する一方で、ケアマネジャーの担い手不足が深刻化している。そうした中で、厚生労働省はケアマネ試験の受験資格に必要な実務経験年数を短縮する方針を打ち出しており、今回の試験合格率の大幅な上昇と合わせて、今後の制度改革に注目が集まっている。
ケアマネ従事者は減少トレンド
ケアマネジャーは、2018年度に18万9754人だった従事者数が2022年度には18万3278人に減少。このダウントレンドには、2018年から受験資格が厳格になったことが一因との見方もある。介護業務10年以上の経験者が受験資格から除外され、国家資格等に基づく業務経験5年または、相談援助業務経験5年のどちらかを満たすことが条件となったからだ。
一方で、2024年度のケアマネ試験では、合格率が3割と、昨年以前よりも大幅に高くなったという事実もある。淑徳大学で介護と医療を中心とした社会保障政策を研究テーマとしている結城康博教授が語る。
「試験問題をみましたが、2〜3年前よりも単純な問題が増えた印象で、やや簡単になっている傾向を感じました。試験が易しくなったことで合格者も増えたのかもしれません。受験資格は厳格化されているのに、試験内容は易しくするというのは、国としての一貫性を感じられません」
「ケアマネ更新研修の見直しを」
現在厚労省で検討されている学士の段階での資格取得を目指せる環境整備や、実務経験の短縮は、人材の裾野を広げる策としては評価される。一方で、ケアマネジャーの質をどう維持するかは今後も残る課題であり、経験年数を短縮することで必要なスキルが身につくのかといった懸念も指摘されている。
「ケアマネ業務において、事務作業や研修に追われるなど負担が大きいことが浮き彫りとなってしまったので、例えば経験年数を3年に短縮したところで、多少の受験生増に留まり、実際にケアマネ職に就く人はそれほど増えないのではないでしょうか。
それよりも、まずは人材確保・定着の足枷となっているケアマネの更新研修の見直しなどを急ぐほうが良いと考えます。例えば社会福祉士、介護福祉士などには更新制度は存在していません。今後は研修は強制でなく、研修を受けたケアマネが多く在籍する事業者に加算するようなケアマネ処遇改善加算を取り入れるなど、多角的な考え方をするべきでしょう」(同前)
ケアマネは超高齢社会を支える要として欠かせない存在だからこそ、人材育成や質の確保が長期的な課題となる。人材の“質と量”をどう両立させるかが、介護現場の未来を左右する鍵になるだろう。
構成・文/介護ポストセブン編集部