「とろみの濃度がバラバラ」は危険!その改善策とは?本人の嚥下能力に合ったとろみづけに必要な3つのルール
飲み込む力が衰えた高齢者の食事や水分摂取に、必要となるのが“とろみ”をつけること。「とろみはその人に合った適切な濃度を保つことが大切です」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。とろみの濃度が毎回バラついていると、命にかかわる危険も。とろみの濃度を一定に保つ方法について、川鍋さんに解説いただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
「とろみのつけ方」はプロでも難しい
飲み込みに不安がある高齢者に介護食を提供する際、とろみは“ついていれば”大丈夫と思っていませんか?
私自身も病院で介護食を作ったり、介護施設で利用者さんの食事を見守ったりする中で、とろみのつけ方については難しいと感じることがあります。そのかたの体調や嚥下の状態にあったとろみをつけて提供する必要がありますので、ベストな濃度を保つために最新の注意を払っています。
とろみの濃度は多少バラついても大丈夫だろうと思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、それは危険です。飲み込む力が弱っている人にとって、ちょっとした濃度の“差”が命に関わることもあるからです。
高齢者や介護中のご家庭でとくに注意したい、とろみの濃度のバラつきを解消し、均一な仕上がりを保つ方法について考えてみましょう。
とろみのバラつきはなぜ危険?
とろみをつけるには、市販のとろみ調整用食品を使うのが一般的です。扱い方や作る人によって、とろみの濃度にバラつきが出てしまうケースは多々あります。
とろみの濃度が本人に合っていないと誤嚥のリスクが一気に高まります。本人がまだ飲み込む力が残っているのに、やみくもにとろみの濃度を上げてしまうと、かえって嚥下能力が低下してしまうこともあります。また、食事のたびに濃度が変わってしまうと、食べる側もストレスを感じますし、食事摂取量の低下を招く可能性もあります。
介護が必要な人にとって、とろみの濃度はとても重要なもの。適切なとろみの濃度については、医師や管理栄養士、訪問看護師などに相談して決めるのが安心です。最初はお茶などで試してみて、薄いとろみから始め、嚥下の状態を確認しながら、薄いとろみ、中間のとろみ、濃いとろみなど、どの状態が飲み込みやすいか試していきます。
とろみの濃度を保つために考えておきたいこと
とろみをつける際、食材や水分の温度、量、酸味の強さなど、さまざまな要因がかかわっているため、すべてにおいて一定のとろみの濃度を保つのはなかなか難しいものです。さらに作り手によっても差が出てしまうこともあります。
介護施設では、調理師のほか、介護職員もとろみつきの飲み物を提供することがありますし、在宅介護ではご家族のほか、訪問介護スタッフなど作り手が複数人になることもあるため、どうしてもとろみの濃度のバラつきが起こりやすくなります。
このバラつきをなるべく抑えるために、以下のことに注意しておきましょう。
こんなことに要注意!
まず、とろみの濃度がバラついてしまう原因は以下のことが考えられます。
作る人による問題点
・目分量など“感覚”でとろみづけをしている
・とろみ剤を入れるタイミングが異なる
・混ぜ方の差から生まれる違い
料理の状態によって変わること
・料理の温度による違い
・食材の特性による違い(酸味・乳製品)
・料理の水分量による違い
とろみ調整用食品の種類によるもの
・とろみの発現時間の差による違い
・時間の経過による変化 など
家庭でもできる!とろみのばらつき予防のコツ
さまざまな要因でとろみの濃度が変わってしまうため、統一ルールを作っておくことをおすすめします。
【1】基本のルールを必ず守る
市販のとろみ調整用食品は、指定の分量を守ること。そして必ず軽量スプーンを使いましょう。
お茶/分量「〇mlに対してとろみ調整用食品〇g」など、とろみをつける分量をしっかり把握したうえでとろみづけを行うこと。
【2】作業手順を統一する
とろみ剤を入れるタイミングや混ぜる時間(30秒間しっかり混ぜる)のルールを統一する。
【3】見た目の基準を共有する
正しくとろみをつけた状態のものを写真や動画で記録し、介護に携わる人たちと共有する。
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介護施設などはもちろんですが、在宅介護の場合でも介護食をひとりで作るとは限りません。家族で分担したり、複数のヘルパーさんに作ってもらったりすることも多いと思います。
とろみをつけるときは、どんなにベテランの人であっても“感覚”に頼るのではなく、基本的なルールを守って作業手順や見た目の基準などを“見える化”して統一する工夫が必要です。
ちょうどよいとろみづけができたときには、とろみ調整用食品の分量や混ぜ時間、手順・作り方をメモしておく、とろみの具合を写真や動画で共有しることで、視覚的にも伝わりやすく、作り手による違いが減らせるのではないでしょうか。
