シニア世代が安心して使える暖房器具の選び方「石油ストーブは危険?」「おすすめはオイルやセラミック式」理由を家電のプロが解説
今年度の冬は、暖冬だった昨年度に比べて、冬らしい寒さが戻る見込みだ。冷え込む地域ではすでに暖房器具で部屋を暖めている人も多いだろう。しかし消防庁によると、12月~1月は一年の中でも火災が多い時期。そこで、家電ライターの田中真紀子さんに、シニア世代が安全に使えるおすすめの暖房器具の選び方を教えてもらった。
教えてくれた人
田中真紀子さん / 家電ライター
家電ライター/家電を生活者目線で分析し、雑誌やウェブで紹介する家電のスペシャリスト。特に白物家電・美容家電に詳しい。自宅には最新家電を中心に200以上を所有し、年間300以上の記事執筆・監修に携わる。テレビ・ラジオにも多数出演。公式HP https://makiko-beautifullife.com/
石油・電気ストーブ、どちらが危険?
火事ややけどのリスクが高い暖房器具といえば「石油ストーブ」を思い浮かべる人が多いかもしれない。確かに石油ストーブは、灯油と間違えてガソリンを入れてしまい出火する事故もある。しかし、田中さんは、「電気ストーブ」も意外とリスクが高いと指摘する。
「実は、電気ストーブの火災リスクは、石油ストーブやガスストーブに比べて高いんです。東京消防庁によると、ストーブ火災の半数以上は電気ストーブによるものとされています」(田中さん・以下同)。
電気ストーブは、「輻射熱」(または「放射熱」)といい、太陽が地球に熱を伝えるのと同じ原理で、物と物が触れていなくても遠赤外線などの熱線で熱が伝わる仕組みを利用している。この熱が燃えやすいものに伝わり、出火に至る恐れがあるのだという。
「東京都の調査※によると、電気ストーブは石油ストーブと違って目に見える火などがないため、石油ストーブは『最も火災危険が高いと思う』と考えている人が80.1%なのに対し、電気ストーブはわずか4.2%。つまり、『電気ストーブは危険ではない』と考えている人が多いんです。その油断も出火につながる原因と考えられます。
事例として、電気ストーブに干した洗濯物が落ちたり、就寝中に布団がかかったりしたことで発火し、火災になったという報告があります。また上述の通り、直接触れていなくても、電気ストーブの近くに置いた可燃物が熱くなり、発煙・発火することもあるため注意が必要です」
部屋を空ける時や就寝時は必ず電源をOFFにするようにしたい。
※東京都「東京くらしWEB」より。
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/anzen/test/sutoobu_press.html
シニア世代が安心して使える暖房器具の種類を解説
では、比較的安全な暖房器具とは? 田中さんは、以下の3種を挙げる。
もっとも安心なのは「エアコン」
「火を使わないので火事のリスクが非常に少なく、またヒーターを使わないのでやけどの心配もありません」
表面温度が60℃程度でやけどリスクが低い「オイルヒーター」
「オイルヒーターは、内部のオイルを電気で温めて、その熱をフィンを通して放熱していますので、やはり熱くなるヒーターを使っていません。
表面温度も高くても60℃程度なので、長時間触れなければやけどのリスクも少なく安全です。ちなみに近年は、オイルを使わずに空気を温める『オイルレスヒーター』が増えています。オイルヒーターより軽くて使いやすく、電気代もオイルヒーターより安い傾向にあるのが魅力です」
温風で部屋を暖める「セラミックファンヒーター」
セラミックファンヒーターとは、電気でセラミックを発熱させてファンで温風を送り出す暖房器具。
「燃料を使用せず、温風により部屋全体を暖める仕組みですから、ヒーターの前に燃えやすい物を置いていても発火するリスクが低く、安全性が高いといえるでしょう。
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ただしいずれの場合も家電である以上、正しい使い方をしないと発火の恐れはある。
田中さんは、「主に電源プラグの劣化などに気をつけて」と注意を促す。電源プラグと電源コードの付け根や電源コードが断線し、スパークが発生し火災に至るケースもあるという。