「おしりふきシートが冷たい」認知症の母を気づかう息子が辿り着いた「冬の排泄ケアの工夫と対策」
岩手・盛岡に暮らす認知症の母を遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。できる限り自宅で暮らしたいと望む母のために様々なアイテムや知恵を駆使して在宅介護を続けている。岩手の寒い冬に直面した、排泄ケアにまつわるエピソード。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。
著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
排泄ケアに使うおしりふきが「冷たい」問題
母は普段からパンツタイプの紙オムツ(紙パンツ)を着用しています。1日に数回交換するのですが、その際、肌の清潔を保つために「おしりふき」を使っています。いつも使っているおしりふきで母のケアをしていたところ、最近こんな反応をするようになりました。
母「ひゃっ、冷たい!」
岩手は冬の足音が近づいていて、朝の最低気温が氷点下になる日が増えてきました。そのため、紙パンツの交換は暖房設備がないトイレではなく、温かい部屋で行っているのですが、それでも水分を多く含むおしりふきの冷たさが、直接肌に伝わるようです。
また、おしりふきよりサイズが大きい「からだふき」を使って、わたしが母の上半身を拭く日もあるのですが、肌に触れる面積が大きいので、おしりふき以上に冷たさを感じるようです。
岩手はこれからもっと寒くなるので、母がおしりふきやからだふきの冷たさでビクッとならないよう、対策を考えることにしました。
おしりふきを温めればいい?
パッケージから取り出したおしりふきが冷たい理由は、おそらく保管場所である脱衣所の室温が低く、その影響もあるのかもしれません。
→認知症の母の排泄介助に欠かせない消耗品2選「地味に凄い!コスパ最強」アイテムの活用法
普段使っているのはライフリー『らくらくおしりふき トイレに流せる』(ユニ・チャーム)。生地が厚手でしっかりしているが、そのまま使うと冬場は冷たいようで…。
少しでも冷たさを軽減するために、わたしの手の体温で1度おしりふきを温めてから使ってみたのですが、母の反応に変化はありませんでした。
他にいい方法はないだろうかと、ネットで「おしりふき 温める」と検索してみると、赤ちゃん用の「おしりふき温め器」なるものが表示されました。介護でも使えるかもしれないと思ったわたしは、早速商品の仕様を調べることにしたのです。
おしりふき温め器の仕組みは、おしりふきをパッケージごと温め器の中に入れて、30分~60分くらい待つと、45度くらいまでおしりふきを温めてくれます。ユーザーである子育て中のママの8割以上が、汚れの落ちやすさを感じるとの声もありました。
しかしメーカーの公式サイトで、「トイレに流せるタイプは破れやすくなるので使用できない」という記述を見つけてしまったのです。わが家で使っているおしりふきはトイレで流せるタイプで、しかも破れにくいものを選んでいるので、温め器を使うと逆効果になります。
また、介護用のおしりふきのパッケージサイズが赤ちゃん用と比べて大きいので、温め器のサイズと合いません。こうなったら赤ちゃん用のおしりふきを介護で使おうかとも思ったのですが、すでに購入した在庫が家にたくさんあります。
それなら、介護用のおしりふきメーカーに問い合わせをして、おしりふきの温め方を聞いたほうが早いと考え、お客様相談室に電話してみました。
メーカーに聞いた介護用おしりふきの温め方
「介護用のおしりふき温め器はないのか」「もしないとしたら、どうやって冷たいおしりふきを温かくすればいいのか」。この2点をメーカーに問い合わせました。
その回答は、まず介護用のおしりふき温め器はなく、おしりふきを温める場合は、パッケージから1枚取り出したあと、ラップに包んで電子レンジで温めてくださいということでした。
また、電子レンジで温める時間は機種によって違うので、お客様ご自身で人肌くらいになる時間を試してみてくださいとのことだったので、まずは実家の電子レンジの最短時間である20秒、500Wで試してみました。
10秒ほどおしりふきを温めると水蒸気が出てきたので、すぐに電子レンジを止めておしりふきの温度を確認すると、アツアツの状態になっていました。蒸しタオルを冷ます感じで、おしりふきの温度を少し下げてから使ってみると、なかなかいい感じです。
おしりふきよりもサイズの大きいからだふきも同じ手順で試してみたところ、やはり10秒程度でアツアツになったので、少し冷ましてから母の体を拭いてみると、以前のようにビクッと反応することもなくなりました。
毎回温めるのは手間がかかる…
ただし、急な失禁で紙パンツの交換を急いでいるときに、おしりふきを毎回ラップに包んで電子レンジで温めるのは手間がかかります。もっといい方法がないか探していたときに、偶然ある商品を見つけました。
わたしが見つけて購入したのは温めても使えるタイプのからだふき。個包装になっていて、パッケージに切り込みを入れて電子レンジで10秒温めるだけで、アツアツになります。サイズは60cm×30cmと大判で、母の背中を拭くには十分な大きさでした。
ラップに包んで温めるのは地味に面倒なので、冬場のからだふきはこのアイテムが役立ちそうです。
同じように温めても使えるトイレに流せるおしりふきは見つけられなかったので、メーカーに言われたとおり、おしりふきに関しては引き続き電子レンジで温めて使うことになりそうです。
ラップの手間については、ブログの読者さんから「100円ショップで販売されているシリコンのフタをかぶせて温めるとラクになりますよ」というアドバイスを頂いたので、試してみるつもりです。
在宅介護で大きなストレスになる排泄ケアですが、少しでもラクができるよう、こうした小さな工夫を重ねていきたいと思っています。
今日もしれっと、しれっと。