ライブコンサート鑑賞イベントを実施!【ウイーザス九段】が実践する“音楽”の力でウェルビーイングを目指す取り組みをレポート
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『ウイーザス九段』では、脳研究の第一人者・古賀良彦さんとともに入居者のウェルビーイングを目指す取り組みを行っている。夏から本格的に取り入れたのが音楽鑑賞イベントだ。生の演奏を間近で楽しむことは、高齢者にとってどんな影響があるのだろうか。古賀さんの解説を交え、2組のアーティストによるコンサートの様子をレポートします。
教えてくれた人/プロフィール
古賀良彦さん(77才)
医学博士。杏林大学名誉教授。うつ病、認知症、睡眠障害、統合失調症の治療や研究のエキスパート。日本催眠学会名誉理事長、日本薬物脳波学会副理事長を務め、認知症や不登校などにも精通する。著書は『睡眠と脳の科学』(祥伝社新書)、『毎日脳活スペシャル ねこのまちがいさがし』(文響社)など多数。
※ウェルビーイング=社会的なつながりの中で、心身共に元気で満足して過ごせること。また、その状態が持続することが重要とされている。
音楽で脳を刺激しコミュニケーションを豊かに
「聴覚の中でもとくに、音楽を聴くこと、“音を愛でる”ことは、とても繊細で上質な能力。脳の前頭葉が発達した人間こそが味わえる豊かな体験なんです。
音楽には、高齢者の脳に働きかけ、情緒を豊かにする力があります。演奏者や鑑賞する人同士のコミュニケーションも生まれます。音楽療法というものもありますが、音楽を楽しむことは単なる認知機能の維持向上を超えて、心と体、そして社会的なつながり、つまりウェルビーイングに資する(ウェルビーイングはカタカナにしました)でしょう」(古賀良彦さん、以下同)。
『ウイーザス九段』では、古賀さん監修のもと、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に働きかけることで、高齢者の心と体を元気にする取り組みを行ってきたが、新たに音楽鑑賞イベントの企画を充実させ、さらなるウェルビーイングの実現を目指すという。
8月、9月と2組のアーティストを招き、いつもは落ち着いた雰囲気のダイニングルームは一変、熱気あふれるコンサート会場に。大いに盛り上がったイベントの様子をレポートします。
懐メロプリンスこと中田亮さん「昭和歌謡に涙する人も」
『ウイーザス九段』で8月に実施したお祭りイベント「納涼祭」。その特別ゲストとして招かれたのは、シンガーソングライターの中田亮さんだ。
→『ウイーザス九段』夏のイベント<納涼祭>イベントレポート読む
中田さんは、「コリスライブ」というオンラインレクリーション配信サービスを通して、全国のシニアに向けて歌謡コンサートを発信中。リクエストに応えて昭和歌謡を弾き語りするスタイルは、人気を博し “懐メロプリンス”として注目を集めている。
全国1000か所以上の高齢者施設と繋がり、双方向のライブを行っている中田さんがリアルで訪問してくれるということで、入居者さんとスタッフは、応援うちわを手作りして心待ちにしていたという。
「皆さん、こんにちは!」
中田さんが元気な笑顔で登場すると、応援うちわと盛大な拍手でお出迎え。
入居者さんたちから事前に募ったリクエストから、まずは「銀座カンカン娘」で幕開け。中田さんが奏でるギターの軽快で懐かしいリズムに、目を丸くして体を揺らしながら聴き入る入居者さんたち。手拍子も盛り上がる。
曲の合間のMCで中田さんは、「ようこさんも一緒に歌ってくださいね!」「まさこさん、楽しんでいますか~」と、一人ひとり名前で呼びかけていた。名前を呼ばれた入居者さんたちは、パッと笑顔が弾け嬉しそうだ。
初めは控え目に鑑賞していたが入居者さんたちも、懐かしいメロディーが流れ、スタッフがリズムを取ったり拍手をしたり、一緒に盛り上げるにつれ、表情がイキイキとして大きな笑顔が増えていった。
94才の誕生祝いのサプライズも!
「青い山脈」「夜霧よ今夜もありがとう」「喝采」など、昭和の名曲が次々と披露され、盛り上がったところで、亮さんからなんとサプライズが!
8月に94才の誕生日を迎えた入居者さんにバースデーソングをプレゼント。さらに、ご本人がお好きだという「東京ブギウギ」をデュエットにお誘い、カラオケ好きな入居者さんの感激は最高潮に。
さらに、男性入居者さんが大好きだという「舟唄」「雨の慕情」と八代亜紀さんの名曲が続く。
約400曲のレパートリーがある中田さんだが、「実は『雨の慕情』は知らなかったんですが、今日のために練習してきました!」と、打ち明ける場面も。ギターを抱え、会場を動き回り、手を差し伸べる入居者さんと距離がどんどん縮まっていく。
「次はまさこさんからのリクエスト、美空ひばりさんの『川の流れのように』を歌わせていただきますね」
伸びやかな歌声がフロア中に響き渡ると、想いが溢れてか堪えきれず涙をぬぐう入居者さんの姿もあり、会場内は感動の渦。
中田さんのオリジナル曲「みんなのウタ」に合わせて、スタッフがダンスを披露してフィナーレへ。盛り上がりは最高潮、ダイニングルームが熱気に包まれた。
「脳には記憶を司る中枢(左脳)と、喜びや悲しみなどの情動※を司る中枢(右脳)がありますが、歌はその両方に作用します。
歌によって記憶が呼び覚まされ、当時の感情が蘇る。この日に感激しながら聴いた音楽もまた記憶と情動が結びつくことで強い思い出として脳に残るのではないでしょうか。素敵な記憶と情動を伴った素晴らしい記憶が増えることで、ウェルビーイングがもたらされます」(古賀さん)
※情動/一時的で急激な感情の動き。喜び・感激・悲しみ・怒り・恐怖などに伴って、大きな声を出して笑ったり、泣いたり、跳び上がったりするなどの行動を示すことが多い。
→『ウイーザス九段』夏のイベント<納涼祭>を開催「ハレの日の記憶は心に残ります」
その時間と空間が特別、クラシックの3重奏で優雅なひととき
9月に行われた音楽鑑賞イベントは、現役東京藝術大学院生による三重奏「Trio Espoir(トリオ・エスポワール)」によるクラシックコンサート。
Trio Espoirは、フルートの西邑(にしむら)華梨さん、ヴィオラの菊田萌子さん、ハープの湊あゆみさんの3名で活動している。あまり類のないトリオで、透明感あるハーモニーを奏でる新進気鋭のアーティスト。
ダイニングルームに設けられたステージには、高さ2メートル近くある大きなハープがスタンバイされ、開演前から入居者さんたちも興味津々。
素敵なドレスに身を包んだ3人が登場すると、入居者さんとご家族たちが「わ~っステキ!」と、驚きの表情と大きな拍手でお出迎え。
1曲目は、デヴィーニュの『三重奏曲』。会場には繊細で明るいフルート、低音で落ち着いたヴィオラ、華やかなハープの音色が響き渡り、ダイニングルームは一気に優雅な空間に。
続いて、それぞれの楽器の紹介とソロ演奏が行われた。
「ハープは紀元前からある古い楽器で、狩猟に使う弓をつま弾いたのが始まりと言われています。高さ180cm、重さ40kgもあるんですよ。
実は足元にもペダルがあって、ピアノの黒鍵のような役割をしていて、フラットやシャープの音に変えるときに使っています」とハープの湊さん。
続いてヴィオラのソロ演奏へ。「バイオリンとチェロの間の音の高さを担い、音色が人の声に近い楽器と言われています。弓に張られているのは馬の尻尾なんですよ」とヴィオラの菊田さん。
そして最後はフルートの西邑さん。「フルートは吐いた息がそのまま音になる楽器。歌うように演奏できるのが魅力で、オーケストラではピッコロと一緒に高音を担当します」。
各楽器のソロ演奏では、ハープの透明感のある音、フルートの可憐な音色、しっとりしたヴィオラの落ち着いた調べに、入居者さんたちも目を閉じてじっくりと聴き入り、幸せそうだ。
「生演奏というのはアナログの音。デジタル信号で作られた音とは異なり、アナログの音は、音と音の間に揺らぎが生まれるんです。温かみのある音の揺らぎは、脳をリラックスさせる作用がありますね。
それぞれの楽器が持つ音が織り成すハーモニーは、脳全体をバランスよく活性化してくれます」(古賀さん)
リラックスして眠くなってしまう入居者さんもいるかと思ったが、皆さんとても好奇心に満ちた眼差しで楽器を見つめ、音楽を体中で楽しんでいるように見えた。手の届く距離だからこそ、奏楽を目の当たりにし演者の息遣いに触れ、“音を聴く”以上に“音を楽しめる”のかもしれない。
若いアーティストの将来を応援したい!
途中、アニメ『ドラえもん』の主題歌が演奏されるなど、遊びに来ているお子さんやお孫さんたちを楽しませる演出も。
さらに、ドビュッシーの『ソナタ』や映画『ティファニーで朝食を』で有名な『ムーンリバー』など8曲を演奏し、入居者さんからの質問タイムに。
「ハープは傾けて演奏していますが重くないんですか?」など楽器に関する質問だけでなく、「大学を卒業したらオーケストラに入るんですか?」という質問が。
「オーケストラに所属するためにオーディションを受けて頑張っています」とフルート・西邑さん。ヴィオラの菊田さんは「もう少し勉強もしたいので海外留学も考えています」。
「ハープは毎回オーケストラに登場する楽器ではないのですが、オーケストラでも演奏できるような奏者になりたいです。フランスが発祥の楽器なのでフランスに留学して勉強もしたいです」とハープの湊さん。
3人の若い演奏家たちを入居者さんたちは温かく見守っていた。
演奏終了後には、「こんな近くで生演奏を聴いたのは初めて。この年でこんな体験ができるなんて嬉しい。素晴らしいコンサートだった」「以前はよくクラシックのコンサートに足を運んでいたの。生演奏は久しぶりだったので楽しかった」と、皆さん大満足のご様子。
「亡き夫はフルートがとても上手だったの。夫がフルートを演奏して、私は歌ってね…」と、101才の入居者さんは懐かしい夫婦で過ごした日々を想い出し、目を細めていた。
“推し活”で高齢者の生活をより豊かなものに
今回取材した2つの音楽鑑賞イベントで印象的だったのは、若いアーティストを応援する入居者さんたちの姿だ。
中田亮さんの歌謡ショーでは、何日も前から応援うちわを作成して当日を心待ちにしていたという。Trio Espoirのコンサートでは、現役大学院生でもある3人の将来の活躍を願い、個別に声をかける姿も見られた。なんと心づけまで!
「生の音楽というのはいいものですね。気持ちのこもった歌や演奏には、聴く側の気持ちも大きく揺さぶられます。高齢者のウェルビーイングの実現のためにも演者の情熱に触れる、生の音を愛でる、演奏会はとてもいい試みといえるでしょう。
高齢者の暮らしは、割と淡々と過ごしがち。毎日の中で、喜怒哀楽を表現する場が減ってしまうこともありますから、『応援したい』『頑張ってほしい』という純粋な気持ちや、自分のポジティブな感情をストレートに向けられる対象、いわゆる“推し”がいる生活は、生きている実感を得られ、人生がより豊かにしてくれると思います」
撮影/柴田愛子 取材・文/青山貴子
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【データ】
■ウイーザス九段
介護付有料老人ホーム(一般型(介護予防)特定施設入居者生活介護)
所在地:千代田区神田神保町三丁目6番地
居室数:84室
定員:87名
全室個室 一人用居室81室、二人用居室3室
入居要件:原則満65歳以上、入居時自立・要支援・要介護の方
運営主体:株式会社ウイーザス(株主 小学館不動産株式会社・株式会社久保工)
https://withus-care.jp/
■個別見学・相談会開催中!
問い合わせ:0120-142-089(9:00~19:00)
URL:https://kudan.withus-care.jp/
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