老後の財産管理「話し合ったことがない」が7割超、認知症の備え8割が「検討したことがない」<老後の不安調査レポート>
老後への備えを始めたくても、税金、遺言、相続など気になる点が多く、どこから手をつけたものかわからないという人も多いのではないだろうか。ベンチャーサポート相続税理士法人は、全国の50代~70代の男女に「老後の不安」に関する調査を実施。その結果をもとに、老後をめぐる様々な悩みの声をレポートする。
あなたはどう?多くの人が抱える老後への不安
老後のことを考えると、どうしても様々な悩みがついて回るもの。どのような備えをしておけばいいのか、不安を解消するためにも家族や親族とは話し合っておきたいところだが、それが難しいという人々も多いようだ。
相続税専門の税理士事務所であるベンチャーサポート相続税理士法人は、全国の50代~70代の男女1,024名を対象に「老後の不安」に関するアンケート調査を行った。その結果、老後の財産管理について家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人が7割を超えたようだ。
終活で準備しておきたいこと1位は「身辺整理」
まず、「終活において、準備しておきたいことを教えてください(複数回答可)」と質問したところ、「身辺整理」と回答した人が最も多く、6割を超える結果となった。
身辺整理とは、預貯金や不動産などの財産関係の整理だけでなく、身の回りの不用品や人間関係の整理も含むもの。遺された家族が困らないようにと重要視する人が多いのだろう。同じく遺された家族のためになる「エンディングノートの作成」や「遺言書の作成」も挙げられたが、これらはいずれも2割弱にとどまっている。
老後の財産管理について「話し合ったことはない」人が7割超
年代別では、50代が75.1%、60代が72.9%、70代が63.2%となっており、70代になっても6割の人が老後の財産管理について家族や親族と話し合ったことがないようだ。
老後の財産管理「家族仲は良くても財産の話はしづらい」という声が多数
続いて、老後の財産管理について「話し合ったことはない」と回答した人を対象に、「老後の財産管理について、家族や親族と話し合ったことがない理由を教えてください」という質問を行った。
その結果、「家族や親族との仲は良いが、財産の話はしづらいため」が一番多く、実に4割近くの人がたとえ家族や親族であっても老後の財産管理についての話し合いに難儀していることが判明した。
「その他」と回答した人は21.4%に上り、具体的な理由には「財産がない」「(話し合うには)まだ早い」「家族がいない」などが挙げられたようだ。
老後の財産管理について、約半数が今後「話し合いたい」
老後の財産管理について、家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人に対して、「今後、老後の財産管理について、家族や親族と話し合いたいと思いますか?」と質問したところ、「はい」と答えた人は53.9%、「いいえ」と答えた人が46.1%と、ほぼ半々という結果となった。
年代別では、50代が49.0%、60代が52.8%、70代が67.4%の人が「はい」と回答し、年代が上がるほど老後の財産管理について話し合いたいと思っている人が多いようだ。
認知症への備えを「検討したことがない」が8割以上に
続いて行ったのが「ご自身が認知症になったときに備えて、検討したことがある対策はありますか?(複数回答可)」という質問だが、これには84.1%の人が「特にない」と回答する結果となった。
家族信託や任意後見制度を検討したことがある人はいずれも1割を下回り、認知症患者数が増加傾向にある昨今でも認知症への備えを検討している人はまだまだ少ないようだ。
「介護」をめぐる家族間トラブルを懸念する声が多数
「老後、最も懸念する家族間でのトラブルを教えてください」と質問したところ、最も多い回答は「特にない」だったが、次いで「介護」「亡くなった後の手続き」「認知症」「遺産相続」「財産管理」「住居」など多岐に渡るトラブルが挙げられた。
実際、日常的に介護が必要となった場合には、誰が介護を行うのか、介護サービスや施設を利用するとしてその費用はどうするのか、など様々な問題が生じるものだ。そしてその負担が偏れば、不公平感から家族間でのトラブルに繋がりやすい。不要なトラブルを避けるためにも、介護に限らず懸念される問題については予めよく話し合っておく必要があるだろう。
老後の収入源は「公的年金」が最多の8割超
続いて「老後の収入源を教えてください(複数回答可)」という質問には、「公的年金」という回答が最も多く、84.2%という結果となった。
平均寿命が伸び高齢化が進むことで「老後2,000万円問題」などが話題となる現代だが、「自身の金融資産」や「私的年金」による資産準備を行っている人は、それぞれ3割前後に留まることが明らかとなった。
老後のトラブルが発生したら頼りたい人は「家族」
次に「老後、トラブルが発生したときに頼りたい人は誰ですか(複数回答可)」という質問を行った。最も多かった回答は「家族」だ。約3割の人が家族に頼りたいと答え、改めて身近な存在である家族の重要性が明らかになった。
また、次いで挙げられたのは「弁護士」となっており、家族だけで解決できない問題には専門家を頼りたいと考える人が多いようだ。
老後の財産管理の準備として「財産整理」が最も多い結果に
「老後の財産管理の準備として、どのような準備をしたいですか?(複数回答可)」と質問したところ、「財産整理」「相続に関する知識を身につける」「エンディングノートの作成」を挙げる人が多かった。
近年、約1割の人に相続税がかかっているという。いざという時に焦る必要のないように、前もって相続に関する知識を身につけたり、エンディングノートの作成を検討する人が増えてきているのだろう。
遺産相続では「家族や親族とのトラブル」に不安の声が
最後に、「ご自身の遺産相続で、最も不安に感じることを教えてください」という質問を行った。最も多かった回答は14.4%で「家族や親族とのトラブル」、次いで僅差の14.3%で「相続手続きの難しさ」という結果となった。
前述の「老後、最も懸念する家族間でのトラブルを教えてください」の項目でも「遺産相続」や「財産管理」という回答が挙がっていたように、相続絡みで家族間にトラブルが起こるのではと懸念している人は多いようだ。
この先後悔しないために「老後の不安」解消へ向けやっておくべきこととは
「老後の不安」について、家族や親族とのトラブルを避けるためにはあらかじめ話し合っておくことが一番。とは言えなかなか難しいと感じる人が多いのも現実だ。他に効果的なのは、「遺言書の作成」。いきなり遺言書はハードルが高いと感じる人は、エンディングノートの作成から始めてみるのがおすすめとのこと。
自分の老後への備えを見つめ直してみてはいかがだろうか。
【データ】
ベンチャーサポートグループ
https://vs-group.jp/
ベンチャーサポート相続税理士法人
https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter
【調査概要】
調査方法:ゼネラルリサーチのモニターを利用したWEBアンケート方式で実施
調査対象:ゼネラルリサーチ社登録モニターのうち、全国50代~70代の男女を対象に実施
有効回答数:1,024人
調査実施期間:2024年4月26日(金)~2024年4月27日(土)
※ベンチャーサポートグループの発表したプレスリリース(2024年7月30日)を元に記事を作成。
図表/ベンチャーサポートグループ株式会社提供 構成・文/秋山莉菜