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人気コラムニストが勧める夏休みに小学生の孫と一緒に読みたい5冊「大人も子どもも“なるほど”が止まらない!」

 猛暑の中迎えた夏休み。孫と一緒に過ごしたいが、こう暑くては、外に出かけられない…。そんなときは、読書がオススメ。コラムニストで、自身も5歳になるお孫さんがいる石原壮一郎さんが、オススメの本を紹介してくれました。

教えてくれた人

石原壮一郎さん

1963(昭和38)年三重県生まれ。コラムニスト。1993年『大人養成講座』(扶桑社)がデビュー作にしてベストセラーに。以来、「大人」をキーワードに理想のコミュニケーションのあり方を追求している。『大人力検定』(文藝春秋)、『父親力検定』(岩崎書店)、『夫婦力検定』(実業之日本社)、『大人の言葉の選び方』(日本文芸社)、『無理をしない快感』(KADOKAWA)、『失礼な一言』(新潮社)など著書多数。新著は『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春出版社)。故郷を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。

「孫と一緒に同じ本を読む」大切な経験を!

 子どもは楽しい夏休みの真っ最中。ジイジやバアバの出番も増えます。お出かけも楽しいですが、涼しい家の中で「孫と一緒に同じ本を読む」のはどうでしょう。ページをめくりながら、孫の疑問に答えたり、ふだんは言えない思いを伝えたりすることで、ジイジやバアバを見る目がちょっと変わるかもしれません。

 ここでは、おもに小学年の孫にとって、そして大人にとっても、たくさんの発見や学びが得られる5冊をご紹介します。同じ本を読んだ日のことは、孫の中できっと大切な思い出になってくれるはず。そしてその本は、孫の「大切な一冊」になるに違いありません。

1冊目『おもしろい!進化のふしぎ まだまだざんねんないきもの事典』

(今泉忠明・監修、 下間 文恵、おおうち あす華、uni・イラスト 高橋書店)

 世界は「ざんねんないきもの」に満ちています。このシリーズは、2016年5月に第1弾が発売されて以来、全国の小学生に生き物の面白さと多様性を楽しく伝えてきました。9冊目の「まだまだ」が発売された時点での累計発行部数は、524万4000部。これまでに800種類以上の「ざんねんないきもの」にスポットが当てられています。

「まだまだ」には、「ヘビは自分のしっぽを間違えて食べがち」「セイタカアワダチソウは周りをじゃましようとして自分も死ぬ」「チャイロキツネザルはおしっこを体にぬらないとだれだか気づいてもらえない」など、100近い「ざんねんないきもの」が登場。

 ここで言う「ざんねん」は、けっしてマイナスの意味ではありません。どんな生き物も(私たち人間も)、たくさんの苦手なことや不合理な特徴を抱えながら、与えられた能力と環境の中で居場所を見つけて一生懸命に生きています。

 この本を通して孫に感じてほしいのは、生き物や人間が持ち合わせている「ざんねん」を大らかに受け止める大切さ。いろんな生き物の「ざんねん」をフラットな視点で面白がりつつ、他人や自分の「ざんねん」をニッコリ笑って許す気持ちを持ち続けてほしいですね。

2冊目『キッズペディア 身近で発見!「激レア」図鑑』

(おかべたかし・著、小学館)

 バーチャルの世界も楽しいですが、リアルの世界だって負けちゃいません。著者のおかべ氏は、写真家の山出高士氏とともに『目でみることば』『くらべる東西』『見つける東京』(いずれも東京書籍)など、独自な視点で世界を切り取った写真集を世に送り出し続けています。「レアなものはゲームの中だけじゃなくてみんなの周りにもあるんだよ」というメッセージを込めて、まったく新しいタイプの図鑑を作りました。

〈日常にひそむ「激レア」〉の章では、彩雲やだるま太陽など、めったに出会えない自然現象から、おもしろ道路標識・信号、ラッキーお菓子などを紹介。〈旅先で出会える「激レア」〉の章では、わざわざ行きたい駅やワクワクする岩、思わず見とれる橋など、行ってみたい見てみたいと思わずにはいられない光景がズラリ。毎日をもっと楽しむコツを授けてくれたり、未知の光景への好奇心をかき立ててくれたりします。

 孫と「この『極端すぎる道』に行ってみたいね」と夢をふくらませるもよし、「よし、ほかにも『人の顔に見える』ものがないか探してみよう」と新しい遊びを始めるきっかけにするもよし。孫と自分の発想や視野や行動半径を広げてくれる一冊です。

3冊目『食いねぇ!お寿司まるごと図鑑』

(福地享子・監修、阿部秀樹・写真&文 偕成社)

 多くの子どもにとって回転寿司は別格の大好物であり、グルグル回るレーンの前は心躍るハレの舞台です。この本を孫と一緒に読めば、間違いなく「お寿司食べに連れてって!」という話になるでしょう。そこの出費は覚悟しておく必要がありますが、この図鑑を読んだあとで孫と食べるお寿司は、また一段とおいしいはずです。

 本書が素晴らしいのは、お寿司になった姿と、その寿司種が海で泳いでいる姿の写真が並んで掲載されているところ。さらに、それぞれ「寿司種の特徴」と「生物の特徴」が詳しく述べられていて、大人にとっても「へえー、そうだったのか」の連続です。膨大な種類の寿司種が取り上げられていて、いかだけでも7種類。寿司種に詳しくなるだけでなく、海の生き物の多様性や海に囲まれた日本の食文化の奥深さも感じられるでしょう。

 お寿司の歴史や種類をひも解く解説や、寿司種が海から市場を経てお店に届くまでの道のりは、初めて知ることばかりで読みごたえたっぷり。環境の変化がもたらす影響や食の安全がどう守られているかといった話も、しっかり押さえられています。もしかしたら孫以上に、ジイジやバアバにとって「お寿司をもっともっと好きになる一冊」かもしれません。

4冊目『そうだったのか!国の名前由来ずかん』

(辻原康夫・監修、西村まさゆき・著、タラジロウ・絵、ほるぷ出版)

「大きな川」「うさぎ」「村」を意味する国名が付いた国は? 答えは「インド」「スペイン」「カナダ」です。「知ってたよ」という方は、ほとんどいないのではないでしょうか。ちなみに「日本」の由来は、中国から見て日の出る方角(ひのもと)にあるから。

 この本では、世界中の190を超える国について、国名の由来とその名前になったいきさつが記されています。世界を6つの地域に分けて、見開きで各国名の由来を示した絵地図を掲載。ページをめくると、同じ地図のそれぞれの国に国名が書かれています。まずはあちこちの地域から、知ってる国の由来をチェックしてみるのがいいかもしれません。

「牧場(スイス)」「低い土地(オランダ)」など、国がある土地の特徴を表わした由来もあれば、「フェリペ二世の島々(フィリピン)」「太祖カムブーの子孫(カンボジア)」など、歴史と深く関係する由来もあります。国名の由来を知ることは、その国に興味を持つ第一歩。そして、いろんな国があると知れば知るほど、世界の広さを実感できるでしょう。

 本を読みながら、どの国にもそれぞれに文化や歴史があり、人々の生活があることをさりげなく話すことで、孫が自分の中に新たな「世界観」を築く手助けができそうです。

5冊目『きょうせんそうがはじまると』

(藤代勇人・作、塚本やすし・絵、ニコモ)

 夏は「戦争と平和」について、しっかり考えておきたい季節です。この本をいっしょにめくって、もし戦争が始まったら自分の生活はどう変わるか、大切な人はどうなるか、大好きな街はどう変わるか、やさしい絵を通して想像をふくらませてもらいましょう。

 最初のページには、公園のブランコで仲良く遊ぶ6人の子どもたちの絵と、左上に「きょうせんそうがはじまると」の文字。次のページをめくると、ブランコが破壊されていて、手前には鉄条網を張り巡らせた策があります。そこに「ともだちとあそべない」の文字。そのあとも、平和な日常の風景に続いて、「おとうさんが せんじょうにいく」「すむいえがなくなる」といった言葉とともに、運命が一転する様子が描かれています。

 塚本やすし氏は、食べものを題材にした『しんでくれた』(編集はこの本でもコンビを組んでいる藤代勇人氏)など、命をテーマにした絵本で読者をドキッとさせてきました。ほのぼのとした雰囲気の中に見るものの心を揺さぶる力強さを感じさせるのが、塚本氏の絵の特徴。ミサイルが飛んできて赤く染まった海とイルカを描いた見開きは、圧巻の迫力です。シンプルだからこそ強く響くメッセージは、きっと孫の心に深く刻まれるでしょう。

 * * *

会えない孫には本をプレゼントしてみる

 この5冊に限らず、孫はどんなことに興味を持っているのか、自分は何を伝えてあげられるかを考えながら、一緒に読みたい本を選ぶのも、また楽しからずやです。「自分で選ばせたほうがハズレがない」という考え方もありますが、それはもったいないかも。ジイジやバアバに自分では絶対に手を伸ばさない本を勧められるのも、大切で有意義な経験です。

 夏休みのあいだに孫と会う予定がなくても大丈夫。ネット通販を利用したり書店でラッピングしてもらったりした本をプレゼントしてしまいましょう。その場合は、唐突に本だけ送ったら戸惑わせそうなので、手紙を添えるなりメールを送るなりして、どういう思いを込めてこの本を選んだかを伝えたいですね。

 孫にとってもジイジやバアバにとっても、楽しく実り多い夏になりますように。

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