高木ブー自著発売で取材殺到「インタビューを受けるのはわりと好き。新しい人に会えるしね」|連載 第97回
高木ブーさんの言葉は、私たちに多くのことを教えてくれる。ザ・ドリフターズ、昭和の音楽シーン、コントの魅力、そして肩の力を抜いて生きる大切さ……。長い芸能生活で、多くのインタビューに答えてきた。テレビやステージで伝わることと記事で伝わること、どちらも大切だと考える高木さん。伝えることへの思いを語ってもらった。(聞き手・石原壮一郎)
取材を受けて改めて気づく気持ちがある
ウクレレのステージがあったりテレビ番組の収録があったりで、このところなんだかんだ忙しい。4月に自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館)を出してから、新聞や雑誌の取材もたくさん受けた。嬉しいよね。本を読んで僕に興味を持って、話を聞きたいと思ってくれたわけだから。
テレビや舞台でコントを演じてみんなに笑ってもらったり、ステージで演奏や歌を聴いてもらったりするのは、もちろん大好きだしとっても楽しい。それはそれとして、新聞や雑誌のインタビューに答えるのも、わりと好きなんだよね。
同じコメディアンやミュージシャンでも、取材やインタビューは苦手っていう人は少なくない。その気持ちもよくわかる。自分の仕事はコントや曲を楽しんでもらうことで、自分自身のことはどうでもいいっていう考え方はあるよね。あと、人前に出ている仕事をしていても、じつは人見知りで新しい人に会うのが苦手っていう人もけっこういる。
僕はそんなことはないかな。ドリフターズのことや「8時だョ!全員集合」のことにしても、もっと昔のバンドマン時代のことにしても、興味を持って聞きに来てくれるなら、当事者として知っていることや考えていることを伝えるのは、大事な役目だと思ってる。だって、もうそのへんの話ができる人は、ほとんどいないんだもんね。
それに、新しい人と会って話すのは、何より楽しい。インタビューの前は「今日はどんな人で、どういう話になるのかな」なんて考えたりする。たいてい事前に質問を送ってくれるから、それに目を通して何となく考えてはおくけど、実際にはそのとおりの流れにはならない。どんどん話が転がって、意外な話につながっていくのがまた面白いんだよね。
質問されることで、自分では意識していなかった答えが出てきたりもする。たとえば、ドリフの中での自分の役割にしたって、「全員集合」や「ドリフ大爆笑」をやっているときは、一生懸命で客観的に自分を見る余裕なんてなかった。でも、あとになって取材でドリフのコントのことを聞かれているうちに、「もしかしたら、ウケないことに自分の存在意義があったのかもしれない」「そうか、5人の役割分担が大事だったんだ」と気づいたんだよね。
インタビューを受けて話すことで、自分なりに「新しい発見」があるとすごく嬉しい。取材している人にとっても、これまで僕が話したことがない新しい話が出てきたわけだから、きっといいことだよね。そういうふうに感じた取材のときは、自分で言うのもヘンだけど、できあがった記事も面白い。
取材ではないけど、松任谷正隆さんのラジオ番組に出演したときには、今まで一度も話したことがないバンドマン時代の話をたくさんした。質問の着眼点が素晴らしいんだよね。音楽の世界の人だから、話がどんどん深いほうに転がっていく。あれは楽しかったな、やり取りを聞いていた娘のかおるも感動してた。
これまでの経験の中で、そういった「新しい発見」と出会えるインタビューっていうのは、何となく傾向がある気がする。生意気な言い方に聞こえるかもしれないけど、僕のことをあらかじめ調べて、ある程度は知っていてくれたほうが話しやすいかな。
「雷様」にせよ何にせよ、リアルタイムで見てないのは仕方ないんだけど、90年前の生まれた頃から説明してると、それで終わっちゃって話がふくらまないんだよね。なんて偉そうに言っちゃったけど、まっさらな状態じゃないほうが、お互い伸び伸びと話せて、結果的に面白い記事になるんじゃないかなと思ってます。緊張したり構えたりする必要はまったくないけどね。
YouTubeの「ドリフ麻雀」も、おかげさまでたくさんの人が見てくれてる。毎週土曜日朝9時の公開で、5月に練習戦をやったあと6月から「公式戦」が始まった。6月のゲストは井上順さんと浅香唯さんで、僕と加藤を加えた4人で半荘を2回戦ってる。詳しくは見てのお楽しみだけど、6月の1戦目は僕にとっては嬉しい結果になった。
けっして麻雀は強いわけじゃないんだけど、練習戦に続いてわりと運に恵まれてるみたい。加藤や順さんに「どうしちゃったの」なんて驚かれちゃった。「強い高木ブー」を見てみたい方は、めったに見られない姿なので、よかったらのぞいてみてください。8月公開分のサポーターも募集中です。
夏に向けて、ステージやイベントの予定もいろいろ入ってきた。この夏は遠くに出かける機会もありそうかな。最初に書いたテレビ番組も含めて、情報公開の時期になったらまたお知らせします。お楽しみに。90歳の夏に向けて、ますます張り切ってがんばります!
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。卒寿を記念して出版された『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス、2,700円+税)と『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館、2,200円+税)が好評発売中! イザワオフィス公式YouTube新企画「ドリフ麻雀」は、毎週土曜日午前9時に新たな動画を公開。https://www.youtube.com/playlist?list=PLKMESq2tZllFyDSj1TqOds_X_tQMqMMJr
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取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。最新刊『失礼な一言』(新潮新書)が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。
●高木ブー“90歳の自叙伝”にこめた思い「この本は『等身大を生きる人の物語』|連載 第92回