「娘にワガママな孫の世話を押しつけられてヘトヘト・・・」お礼も言わない娘に困り果てる女性に毒蝮三太夫がズバリ!アドバイス|「マムちゃんの毒入り相談室」第59回
「孫は目の中に入れても痛くないほどかわいい!」……とは限らない。近くに住む娘に、7歳の孫の世話をしょっちゅう頼まれ、それが「大きな負担になっている」と訴える70歳の女性。自分たちが娘を甘やかせ過ぎたからかと思うと、強い態度に出られない。マムシさんは「きっぱり断ろう。それが娘と孫のためでもある」と背中を叩く。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「娘にワガママな孫の世話を押しつけられて倒れそう」
いやいや、寂しいニュースが続くなあ。先月、同い年で70年の付き合いになる声優の増山江威子の訃報が飛び込んできた。「ルパン三世」の峰不二子や「天才バカボン」のバカボンのママなど、彼女が演じた役をあげたらキリがない。
俺にとっては「劇団山王」の旗揚げから一緒にがんばってきた「トンチ」だ。かわいかったなあ。1年前にはYouTubeの「マムちゃんねる【公式】」に出てくれて、昔の話で盛り上がった。ぜんぜん変わらずに艶のある声だったたし、今もかわいくて素敵なババアだった。まだまだたくさん話したかったな。トンチ、安らかに眠ってくれ。
仕方がないことなんだけど、昭和がどんどん遠ざかっていく。そんな流れを少しでも食い止めるのが俺の役目だ。先に向こうの世界に行った仲間たちの分まで、まだまだがんばらないとな。いつか再会したときには、「お前たち知らないだろうけど、あれから地上ではこんなことがあったんだぜ」って自慢してやるのが楽しみだね。ハハハ。
今回の相談は、孫の世話で夫婦でヘトヘトになっている70歳の女性からだ。
「孫の世話が大きな負担になっています。同じ町内に住む娘夫婦が、休日になると7歳の男の子の孫を『今日、見ててくれる』と、しょっちゅう預けにきます。学校が終わってから直接ウチに来て、夕食を食べていく日もよくあります。今日も来るかもしれないと思うと、うかうか出かけることもできません。
娘が仕事なら仕方ないと思うのですが、そういうわけでもないようです。預ける理由を話してくれたことはありません。夜8時ごろに迎えに来て、お礼も言わずに連れて帰ります。子どものエネルギーは半端ではなく、主人も私もヘトヘトです。
しかも、その孫がとてもワガママで、正直、かわいいとは思えません。ご飯の食べ方を注意したら、『うるさい!』と大暴れして、それを母親に告げ口したようで、娘に『余計なこと言わないで』と怒られました。あんな育て方ではロクな大人にならないでしょう。
自分たちが娘を甘やかせ過ぎたのかもしれません。そのツケが回ってきていると思うと、娘に強い態度に出られません。でも、もう限界です。このままだと二人とも倒れてしまいます。どうすればいいのでしょうか」
回答:「娘さんに『自分の子どもは自分で面倒を見ろ』とガツンと言いなさい。それで縁が切れるなんてことはないよ」
これはねえ、あなたに言うのは酷かもしれないけど、娘が甘ったれてる。親を便利に使うにもほどがあるよ。「かわいい孫の相手ができて嬉しいでしょ」ぐらいに思ってるのかな。お礼も言わない上に、メシの食べ方を注意したら親が逆ギレするなんて、よく今まで我慢してたね。このままだと、あなたも旦那もストレスで早死にしちゃうよ。
育て方に原因があるのかどうか、それはわからない。仮にそうだとしても、いい歳になった娘の言いなりになって、したくもない孫の世話で苦しまなきゃいけない理由にはならないよ。「親をアテにするのもいい加減にしないか。自分の子どもは自分で面倒見ろ!」ってガツンと言ってやりゃいいんだ。
甘やかせ過ぎたという気持ちがあるなら、なおさら今のままじゃいけない。あなたと旦那がやっているのは、さらに娘を甘やかせて、ますます勘違いさせる「甘やかせの上塗り」だ。いきなりガツンと言うのはハードルが高いかもしれないけど、まずは「こっちにはこっちの生活がある。少しは考えてほしい」と伝えよう。
今の70歳は「青春後期」だと俺は思うね。旦那も元気みたいだから、なおさら貴重な時期だ。旅行でも趣味でも、人生を大いに謳歌しようじゃないか。娘が怒って「こんな家、二度と来ない!」と言ったら、これ幸いだよ。こっちは平穏な日々が過ごせるし、娘も少しは反省するかもしれない。しないとしても、そのまま縁が切れるなんてことはないよ。
ジイさんとバアさんの家にしょっちゅう預けられる孫も、きっと寂しいと思う。あなたたちは精一杯やさしく接していても、内心では歓迎されてないことは察してるよ。ワガママに振る舞うのは、そういうことも影響しているかもしれないな。もちろん、あなたたちは悪くない。悪いのは自分たちで面倒を見ない親なんだけど、かわいそうな状態ではある。
ここは勇気を出して、預かることをきっぱり断るのが、娘のためでもあり孫のためでもあるんじゃないかな。何より自分たち夫婦の大切な時間を守るためでもある。孫も7歳なんだから、説明すればわかる年頃だ。していいことと悪いことをやさしく穏便に諭してあげよう。その上で、私たちの言うことを守れるなら、いつでも遊びにいらっしゃいと伝えてやればいい。
今まで言えなかったことを言うのは、あなた自身が変わるきっかけにもなる。「いい親だと思われたい」「娘に嫌われたくない」という強迫観念が、言うべきことを言えずに悩みを深くしている原因になっているケースはよくあるからね。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さん
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。88歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」『失礼な一言』など著書多数。新著『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春出版社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。