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医師、病院との付き合い方|愛され、ひいきされる患者になる方法

 医師の説明が不親切、待ち時間が長い、治療方針の相談をしづらい‥‥病院でありがちな悩みは、実は、患者の心がけ次第で劇的に変わる。しかもそれは、メモを取ったり、要点をまとめて話す程度の簡単なことばかりだ。

 今すぐ実践できる5か条を身につけて、医者から愛される患者になれば得することばかり―

コネなしツテなしお金なし。でも「愛され患者」にはなれる!

「親の心、子知らず」とはよくいうが、病院内では、“医者の心、患者知らず”という不幸な関係がまかり通っているという。

「肺がんが見つかった患者さんに、治療の妨げになるので喫煙はすぐにやめてくださいとお伝えしたのに、入院当日、『吸いだめしてきた』と、悪びれもせずたばこのにおいをプンプンさせてやって来たんです。さすがにうんざりしました」(勤務外科医)

「倦怠感で悩んでいるという患者さんの治療を続けていたところ、実は他の病院で出された睡眠導入剤をのんでいることを隠していて、それが原因だった。隠しごとをされるのは気分がよくないだけでなく、治療に差し障る」(開業内科医)

「入院患者の中には、まるで召し使いに指図するように、看護師に“売店であれを買ってこい”などと高圧的に命令する人がいる。そういう人への対応は、やはり後回しにしてしまいます」(看護師)

 それらは現役の医師や看護師たちが実際に体験した“困った患者”のエピソードだ。友愛記念病院の内科医、平岩正樹さんが語る。

「心音を聴診器で聞く時、女性の中には、胸を出してくださいと言っても出さない人がいる。服の上から聞いてくれということなんでしょうが、それでは充分な聴診はできません。このご時勢ですから、無理にお願いはしませんが、聴診ひとつ満足にさせないというのは“適当に診察してください”と言っているのと同じです」

「モンスターペイシェント」は敬遠される

 神宮外苑ミネルバクリニック院長の仲田洋美さんも、こんな経験を語る。

「緊急を要さない生活習慣病の通院なのに、『昼間は混むから』と深夜の救急診療にやってくる人や、『体がだるいから点滴しろ!』と殴りかかってきた人もいました。患者が医師のご機嫌取りをする必要はないですが、あまりに自己中心的な患者さんには、さすがに困ってしまいます」

 医師だって人間である。そのような迷惑患者は最近、「モンスターペイシェント」と呼ばれ、医師や看護師から敬遠されるのも無理はない。だが、そこまで極端な例でなくても、医師からなんとなく “ひいきされる”あるいは“遠ざけられる”患者がいることも否めない。高額な治療費や医師との特別な関係性などなくても、ちょっとしたコツで一目置かれる存在になり得るのだ。

1か条 医師の時間をできるだけ無駄にしない工夫をする

 改元に伴う前代未聞の10連休となった今年のゴールデンウイーク。連休中も診療を受け付けた病院では、ふだんの1.5~2倍もの患者が詰めかけたという。都内病院勤務の外科医はこう振り返る。

●医師の時間を奪う行為は嫌われる

「大勢の患者を待たせながらも、重大な病気が発覚した患者がいたので30分ほどかけて病状を説明したのですが、『先生、今のお話を文書にまとめてください。1時間後に用事があるので、それまでにお願いします』と言われ、唖然としました」

 実はこのような、「医師の時間を奪う」行為が最も嫌われる。横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック診療教授の北原雅樹さんが言う。

「医師は、大勢の患者さんの診察の他にも数々の業務があり、非常に忙しい。1人にかける時間が長引けば、すべてに影響します。特に開業医などは経営にも直結する。再診料は現在、わずか720円ですから、全員に30分も時間を取っていたらクリニックは経営的に成り立ちません」

 待ちの長い行列は、実は患者当人が原因になっていることがほとんど。病状や悩みを簡潔に伝えたり、医師の話を真面目に聞くことは待ち時間の軽減にもつながり、医師から好感を持たれる。では、具体的に何をすればいいのか。

●症状の画像を見せる、医師の説明をビデオに撮る、スマホで撮影する

「患者さんの中には『こんな発疹が出て』とスマホで撮った画像を見せてくれる人もいて、医師としてはとても理解しやすい。また、『先生の説明をビデオで撮らせてください』『説明の紙をスマホで撮影していいですか』と言われると、熱心な患者さんだな、とうれしくなります。医学的な説明を一度で覚えられるわけがありませんし、繰り返し同じ説明をするのはこちらも大変です」(平岩さん)

 ただし、医師に黙って録音や撮影をするのはマナー違反。必ず事前に許可を得よう。

2か条 症状を正確に伝える プレゼン力を鍛える

 平岩さんは、診察室で医師と向き合う時間は、「勝負の時間と考えるべき」と説く。

「よく診てほしいと思うのなら、たくさんの情報を相手に伝えるのは当然のこと。患者は医師に“プレゼン”をしているのと同じ。症状を正確に伝えることで、どう病気と闘うかをプロに正しく判断してもらう場なのですから、有効に使ってほしい」

 ビジネスの場面などで使われる「プレゼン」という言葉は、たとえば、クライアント企業に対し、自社の商品がどれだけ優れているかを伝えることだが、それくらいの熱意で医師に説明をしてほしいということだ。

●いつから、どんな症状、何がつらいかをまとめておく

 医療ジャーナリストの増田美加さんが解説する。

「医師は患者の症状の訴えを聞き、顔色を見たりしながら診察します。とりとめのない身の上話をしてしまっては、医師にこちらの訴えを正確に伝えられず、もったいない。的確なアドバイスを得て、治療効果を高めたいのであれば、いつ、どんな症状が出て、何がつらいのかを的確に伝えられるように、質問をまとめておくなどの準備はしておいた方がいい」

●A4用紙1枚に、箇条書きで。質問は5つくらいまで

 診察を受ける際には、資料があると非常にスムーズだ。

「質問したいことがあれば、A4用紙1枚に箇条書きでまとめ、そのまま渡せるようにしておく。質問項目は5つくらいまでだと、医師は丁寧に答えてくれるでしょう」(増田さん)

●医師の名を呼んで、目を見てもらって話す

 さらに、アイコンタクトも重要だと増田さんが続ける。

「医師が電子カルテやモニターから目を離さない場合、うまくコミュニケーションを取るには、先生の名前を呼んで、目を見てもらいましょう。話が聞き取りやすくなるし、意図が伝わりやすくなります」

●身だしなみで敬意を示す

 患者の“やる気”は、医師にも自然と伝わるものだ。心臓外科医の南淵明宏さんはこんな話をする。

「身だしなみも医師が判断する時の基準の1つ。きちんとした格好で来た患者さんからは、医師に敬意を払っていることが伝わります。華美である必要はありませんが、メイクや服装、髪などを整えて診察に臨んでくれると、医師として光栄です」

 もちろん、病状によってはメイクなどする必要はない。無理のない範囲で行おう。

3か条 医者任せにせず、積極性を見せる

 つい言ってしまいがちな「先生にお任せします」の一言は、実はNGワードだ

「患者の中には『信頼してお任せしますから、助けてください』と、丸投げするかたが少なくない。ですが、病気に向き合うのは患者自身です。医師と信頼関係を築き上げ、二人三脚で病気に立ち向かうためには、患者自身が治療に関心を持ってくれないと、医師もやりづらい。信頼してくれていることはわかりますが、医師任せの態度は好まれません」(前出・外科医)

●セカンドオピニオンは利用すべき

 主治医以外の意見を聞く「セカンドオピニオン」も積極的に利用すべきだ。

「セカンドオピニオンを担当医師に言い出しにくいと思っている人がいますが、そんなことはありません。『信用できないから他の病院にも行きます』と言えば気分を害すでしょうが、『先生を信じていますが、念のため別の意見も聞いて、納得してから治療を受けたい』と言えばいい。それなら戻って来た時に“よし診てやろう”と一生懸命になってくれる可能性も高まります」(増田さん)

 医師任せにせず、積極的に行動することは決して悪いことではない。中には、患者の情熱に医師が驚くこともある。

「がん患者のかたが、今の主治医を連れて一緒にセカンドオピニオンを求めて来られた時は度肝を抜かれました」(平岩さん)

●医師の言うことを妄信せずに冷静な行動をする

 なかなかできることではないが、決して悪い行いではない。前出の仲田さんはこう説く。

「治療には必ず複数の選択肢があります。それを医師に提案してもらったら、患者さんが自己決定権を行使して決めるべきです。中には選択肢を提案せず『この治療しかない』と押し通す医師もいるようですが、それはおかしいと疑ってほしい。賢い患者になろうとするならば、医師の言うことを妄信せずに冷静な行動をすることに尽きます」

4か条 家族も自覚を持ってかかわろう

 ひいきされるために重要なのは、患者本人の行いだけではない。医師は、「家族」のことも見ている。

「出生前診断を受けに来た若い夫婦に診察室で説明をしていたのですが、夫の方がスマホゲームに夢中で、まったく話を聞こうとしないんです。責任を理解してもらいたくて、そのご夫婦にはお引き取りを願いました。家族に自覚を持ってもらうことも医師の仕事だと思っています」(仲田さん)

●家族は必要な時に、ちゃんと病院に付きそう

 理想の患者家族について、「外科医けいゆう」のペンネームで情報発信する消化器外科医の山本健人さんが語る。

「医師が望むのは、“必要な時に、きっちり病院に付き添ってくれる家族”、その一点に尽きます。大事な話があるのに“どうして行かないといけないんですか”とか、“本人に話しておいてください”と言われるケースも多く、そういう家族の中には、患者本人に何かあった時“そんな話、聞いていない“と怒り出す人もいるのです」

 家族も一緒に病気と闘うことで、治療はよりスムーズになる。

「患者家族も本人と同様に病気を理解することで、医師とのコミュニケーションが取りやすくなる。治療方針を決める大事な場面には可能な限り立ち会ってもらいましょう」(増田さん)

 医師が安心して本気を出し、速やかな治癒を可能にする最大の近道は、家族の協力があってこそだ。

5か条 謝礼は患者の負担にならない程度で

●謝礼を受け取る医師は4割程度いる

  医療専門サイトの調査によると、“袖の下”と呼ばれる手術を受けた際の謝礼金を受け取っている医師は、現在でも4割程度いるという。前出の外科医はこう語る。

「患者さんから『お礼の手紙です』と言われ、現金が入った封筒を渡されたことがありました。あまり高額だと受け取りませんが、数万円程度なら、手術に成功した“ご祝儀”として受け取ることにしています。謝礼をくれるということは自分を信頼してくれているのだなと感じますから、もらったら頑張ろうと気が引き締まるものですよ」

 以前は、大学病院の外科部長や教授クラスに執刀してもらうなら、数百万円単位の謝礼が必要といわれていたが、今は患者の負担にならない、お中元代程度の“おひねり”が主流のようだ。患者と医師の信頼関係があってこその慣習で、必ずしも払う必要はない。

「謝礼は、渡さない患者がほとんどです。渡さないからといって治療が変わることは絶対にないので、準備する必要はありません」(仲田さん)

●お金ではなく、感謝の気持ちを使えることが大切

 謝礼金などなくても、気持ちが伝われば充分だと、都内病院勤務の看護師は話す。

「医師には低姿勢なのに、私たち看護師を標的に怒鳴りつけてくる患者はよくいます。ですが、『あの時は取り乱して申し訳ない』と後から謝罪してくれるかたもいるんです。そうすると、わだかまりがなくなって、その後のケアも丁寧にしようという意識が湧いてきます」

 患者の不安やストレスは、医師や看護師も理解している。さらに近年は、患者に向き合う医師の意識も変化していると北原さんが話す。

「生活上の指導を理解してくれなかったり、高圧的な態度を取る患者の中には、実は軽度の認知症や発達障害などの疾患を持っているかたが相当数いると実感しています。指導を実行してもらえないのは医師の責任でもありますから、具体的に『ウオーキングを毎日30分』など細かく指示をして、プリントアウトした用紙を渡す工夫をしています」

 手間のかかる患者を一概に「モンスターペイシェント」と決めつけ、邪険にすることは今の医療現場ではめったにない。だからといって、医師にも感情があり、敬意を忘れると患者が損をすることになる。これまで紹介した5か条を念頭に、医師と良好な関係を築いて、最高の医療を受ける参考にしてほしい。

※女性セブン2019年5月23日号

●医師へのお礼は必要?知っておきたい病院との付き合い方Q&A

●医者へ上手な気持ちの伝え方|診察時、患者も同じ時間の長さ医師と話すべき

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