記者が10年以上悩んだ赤ら顔は「顔のメタボ」とも呼ばれる炎症性疾患だった!腸内環境も関係するという原因、症状と治療・対処法を皮膚科医が解説
年齢を重ねるごとに体のあちこちに表れてくる不調。「まだ大したことはない」「そのうち治る」などと高をくくり、放置していないだろうか。「何事も早期発見が大切」といわれるが、単なる加齢からくる不調ではなく大きな病気につながることもある。最近は保険で治せるものも増えていると聞き、本誌記者が皮膚科を訪問。“顔のメタボ”と呼ばれる意外な病気と治療法を紹介する。
教えてくれた人
吉木伸子さん/皮膚科医、よしき銀座クリニック院長。「肌は内臓を映す鏡」として東洋医学を取り入れ、体の内外からきれいになる治療を提案している。
顔の赤みは「酒(しゅ)さ」だった!
コロナ明けで4年ぶりに開かれた同窓会に参加した本誌記者Y。思い出話が一段落すると、話題はいつしか体の不調のことに…。
「立つたびに、ひざが鳴ってなんとなく痛いのよね」「疲れているのか目がピクピクして、変な感じ」などと不調談議に花が咲いたが、病院に行かずに様子を見ている人がほとんどだった。
かくいう私も、ここ10年ほど「赤ら顔」に悩んでいた。合わない化粧品を使ったせいだとスキンケアを変えてみても改善せず。一体、何が原因なのか?意を決して、「よしき銀座クリニック」を訪ねると、院長で皮膚科医の吉木伸子さんは、私の顔を見るなり、「これは『酒(しゅ)さ』です」とあっさり。
酒さって何?飲酒が関係あるの?
「酒さって何ですか?」
と、目をぱちくりさせる私を前に、吉木さんは次のように説明を始めた。
「顔に赤みやほてり、ブツブツなどができる炎症性疾患です。まぶたには症状は出ず、下まぶたと頰の間に色の境目が現れます。赤い部分をよく見ると、血管が広がって、赤い線として見えるのも特徴ですね」(吉木さん・以下同)
飲酒したときのように顔が赤くなることからこの名前がついたそうだが、詳しい原因やメカニズムはまだよくわかっていないという。
「もともとは欧米人に多かったのですが、最近、日本でも急増しています。遺伝的な体質に、外部からの刺激や免疫バランス・自律神経の乱れなどが加わって発症するとされています」
酒さを起こした肌は温度変化に敏感で、暖かい部屋への入室後や入浴後、運動後などに顔が真っ赤になり熱を感じる。症状は10年以上も続くこともあるという。
症状の重さ別「酒さの3タイプ」
【1】紅斑(こうはん)毛細血管拡張型/症状の重さ:軽度
【2】丘疹膿疱(きゅうしんのうほう)型/症状の重さ:中等度
【3】鼻瘤(びりゅう)/症状の重さ:重度
本誌記者Yの診断結果は「丘疹膿疱型」
上のイラストのように、症状により3つのタイプがある。それは、【1】顔が赤くなる紅斑(こうはん)毛細血管拡張型 【2】ブツブツも加わる丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた) 【3】鼻が腫れる鼻瘤(びりゅう)だ。
記者Yの場合は、【2】の症状が出ているので、進行度は中の上くらいとのこと。
「治療としては、炎症を抑える『ロゼックスゲル』という塗り薬が2022年5月から保険適用になっています。抗生物質が処方されることもありますが、長期間の服用は腸内の悪玉菌だけでなく有用菌も死滅させてしまうため、あまりおすすめできません。体の中から炎症を抑える漢方薬もおすすめです」
そう言って、「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」という漢方薬(1日2回食前に服用)を処方してくれた。この薬には、熱や腫(は)れを抑え、むくみ改善効果があるそうで、症状が治まる目安は4か月ほどという。
レーザーや光を照射して細い血管の広がりを抑えて赤みを改善することもできるが、こちらは保険適用外で、顔全体に行う場合は3万~5万円ほどかかる。
根本的に改善するには食生活の見直しを
酒さを悪化させる主な要因は、紫外線、ストレス、飲酒を含む食生活が考えられるが、最近は、腸内環境に注目が集まっている。