薬が効かない「薬剤耐性菌」が世界中で増加!2050年には「がん」による死亡者を上回る予測も
新型コロナ、インフルエンザ、風邪…体調を崩しやすいこの季節は、薬をのむ機会が増える。ところが、ある一部の人の間で「薬が効かない」という現象が起きているという。それはなぜか?薬が効かない細菌の発生メカニズムについて医師に話を聞いた。
教えてくれた人
藤友結実子さん/国立国際医療研究センター病院・AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長。専門分野は臨床感染症、感染対策、呼吸器疾患。
薬ののみ方で「害のない細菌」まで殺してしまう!?
風邪をひいたら薬をのむ。多くの人が普通に行っていることだが、薬ののみ方によっては、それが“逆効果になる”ことがあるという。まずは、下の図を見てほしい。
体内には通常、【1】害のない「常在菌(じょうざいきん)」が多数存在しているが、【2】肺炎球菌などの「病原菌」が増えると、感染症を発症する。そこで治療のため「抗菌薬(抗生物質)」を投与すると、【3】病原菌とともに害のない細菌まで排除してしまう。そして、【4】病原菌が変化して生まれた“薬の効かない菌”だけが生き残ることとなる。その後、体内で【5】「薬剤耐性菌」が独占状態で増殖してしまう。
「薬剤耐性菌」が生まれる5つのステップ
【1】通常時
【2】感染症発症
【3】薬剤(抗菌薬)治療
【4】薬剤耐性菌が残る
【5】薬剤耐性菌が増殖
「薬剤耐性」による死亡者はがんを上回る可能性も
「薬剤耐性」とは、薬剤に対して抵抗性を持ち、薬剤が効かない、あるいは効きにくくなる状態のことをいうが、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターの医師・藤友結実子さんはこう解説する。
「抗菌薬を投与された病原菌は、あの手この手で対抗しようとします。例えば、細胞の外膜を分厚くして抗菌薬が入ってくるのを防ごうとしたり、細胞内からある種の酵素を出して抗菌薬を溶かそうとしたり、さまざまな策を講じて生き残ろうとするのです。『薬剤耐性菌』は上の図のような仕組みでできますが、抗菌薬を不適切に使い続けると、それは起こりやすくなります。医師に処方されたのみ方を守らず、自分勝手な判断で薬をのみすぎたり、逆にのまなかったりすると、薬は効かなくなることがあるのです」
抗生物質が発見されたのは1928(昭和3)年。以来、人間が抗生物質を発明しては微生物側が耐性をつける―そうした“いたちごっこ”が続いているのだという。
実はこの「薬剤耐性」、世界各国で問題になっていて、2019年には約127万人が死に至っている。さらに、2050年には、世界で約1000万人が薬剤耐性で死亡し、がんによる死亡者を上回るという予測もある。
取材・文/北武司 図版・イラスト/勝山英幸 写真/PIXTA
※女性セブン2024年1月4・11日号
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