作家・落合恵子さん「空き家になっていた実家の遺品整理、土地建物の処分に10年かかった」理由
作家の落合恵子さんの母親は、都内の戸建てで妹と暮らしていた。ところが77才のとき、介護のため落合さんと同居するように。その後、妹が他界すると、実家は主不在のまま、長い時を刻むことに──。実家の片付けから、土地や建物の処分まで、10年かかったという、落合さんにお話を伺った。
プロフィール/作家・落合恵子さん
栃木県出身。文化放送アナウンサーを経て作家に。子供の本の専門店「クレヨンハウス」主宰。『母に歌う子守唄 介護、そして見送ったあとに』(朝日新聞出版)、『泣きかたをわすれていた』(河出書房)など著書多数。
モノが増えるほどモノに振り回される
「人はモノが増えるほどにそれを守りたくなって、モノに振り回されてしまう」
これは、落合恵子さんの母親がよく言っていた言葉で、モノに振り回されないようにと、生前からこまめに整理していたという。そんな母親がパーキンソン病と診断されたのは2000年、77才のときだった。
「それまでは母と叔母で暮らしていたのですが、私の事務所であるマンションの方が通院に便利だったので、引っ越してきてもらいました」(落合さん・以下同)
それから4年、母親はアルツハイマー病も発症。落合さんは仕事の傍ら介護を続けるが、84才で他界した。それまで実家は空き家になっていたが、元気になったら帰るからと改築を行い、きれいに保っていたという。
「整理や掃除の得意な母でしたし、基本的には業者にお願いしたので、遺品整理には悩まされませんでした。残されていたモノといえば、私が誕生日やクリスマスに贈ったプレゼント。中には袖を通していない洋服もありましたから、アクセサリーとともに親戚に譲りました」
実家の“処分”を決断するまで10年かかった
遺品整理は苦労しなかったものの、実家の土地と建物の処分には時間がかかった。
「母が亡くなった後、実家の植物は知人に引き取ってもらったのですが、建物や土地にはどうしても手がつけられず、そのままにしていました。“処分”という言葉の持つ響きにも抵抗がありました」
実家は落合さんにとって母親を偲ぶかけがえのない場所だったのだ。しかし、誰も住まず、掃除だけに通う家をそのままにしておくのは、巷で騒がれている空き家問題に発展しかねないため近隣に申し訳なく、処分を決めたという。
改築した際の業者に解体と土地の処分をお願いし、すべてを終えたときには、母親の死から10年が経っていた。
モノに縛られない生き方を母親から学んだ落合さん。いまは、年に1度のペースで服やアクセサリーなどを友人たちに贈るなどして、自身の生前整理を行っているという。
落合恵子さんの「片付けPOINT」
●庭の草花は実家を処分する前に、母親と親しかった人で、植物好きな人に引き取ってもらった。
●整理と掃除が得意だった母に倣い、自身も生前整理を始めた。
取材・文/上村久留美
※女性セブン2024年1月4・11日号
https://josei7.com/
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