見るだけで目が良くなる【ガボール・アイ】制作者の眼科医がやり方を解説
加齢とともに、多くの人を悩ませる「老眼」。これまで、老眼を改善する方法は「ない」と考えられてきた。目の筋力の衰えによって起きる老眼は、進行を遅らせることはできても、改善するのは難しいというのがこれまでの常識である。
また、老眼だけではなく、日本人は近視の人が多く、メガネやコンタクトレンズの使用者は78%と高い。調査会社のマクロミルが20~69歳の男女に行った調査では、日本人の視力の平均値は「0.5」。0.1未満と回答した方も3割にのぼったという(図参照)。
ところが、女優の沢田亜矢子さん69歳は、ある方法で、たった1か月で視力を0.6から1.0に回復させ、老眼の症状を改善させてしまったという。沢田さんによれば、「1日数分実践する。それだけで台本を読むのが楽になり、車の運転も快適に、細かいメイクも老眼鏡なしでできるようになった」のだそうだ。
その方法とは「ガボール・パッチ」と呼ばれるシートを使った、簡単な目のトレーニングである。手術なし、薬も使わず、副作用もない。アメリカのカリフォルニア大学をはじめ、世界の研究機関でその有効性が実証されている。
→1日5分眺めるだけで 老眼回復!全米で話題、驚異のトレーニングシートが日本上陸
画期的なこの手法にいち早く着目し、日本に広めている眼科医の平松類さんに話を伺った。
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「脳」が見る力のカギを握っていた
私たちは物を見るときに、水晶体というレンズの厚みを、筋肉の力で調整してピントを合わせています。ところが加齢とともに、筋肉が弱くなったり、固くなったりすると、ピント調整がうまくいかなくなり、近くのものが見えづらいという老眼の症状が現れてきます。
ですから、老眼を予防するには、目の筋肉を鍛えることが唯一の方法とされてきました。確かに筋力を維持することは大切なのですが、近年、目で捉えた情報を処理する部分の「脳」を鍛えることも、視力のためには重要であることがわかってきたのです。
私たちは目で見た情報を、そのまま認識しているわけではありません。視覚で得た情報は、一度、脳で処理をされ、加工されています。
「見えた」と認識している画像は、脳によって修正されたもの、といえばわかりやすいでしょうか。そのため、緑内障で視野が欠けている人でも、脳が勝手に見えていない部分を補ってしまうため、半分以上、視野を失っていても病気に気づかない人もいるほどです。
また、かすれた文字や、ピントの合っていない写真でも、その情報を読み取るために、脳は補正を行います。その結果「ぼんやり」していた画像であっても、「くっきり」見えたのと同じように、何が描かれているのかを認識ですることができるのです。
ぼやけた縞模様「ガボール・パッチ」を見るだけ
この「画像のぼやけを補正する力」を鍛えるために利用されるのが、「ガボール・パッチ」と呼ばれる特殊な縞模様です。
「ガボール変換」という数学的な処理をほどこしてつくられた縞模様は、もともとは心理学の世界で使われていたものなのですが、視覚的な脳の処理のトレーニングに有効であることがわかってきました。
似たような「ガボール・パッチ」の模様のなかから、同じものを見つける。それだけで、脳が刺激され、視力が改善します。老眼の人も脳の処理能力が向上すれば、症状が緩和されていきます。
実際、私の患者さんや周囲の人にも試してもらいましたが、視力の値が改善される人はもちろんのこと、老眼鏡を使う頻度が減ったという感想がとても多く聞かれます。