認知症の母が暮らす部屋の温度が30度超!熱中症対策とエアコンを巡る母と息子の未解決事件
岩手・盛岡で暮らす認知症の母を東京から通いで介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。毎年夏場は母の熱中症対策として部屋の温度管理が欠かせない。工藤さんはあるツールを使って遠隔操作で母が居る居間のエアコンをオン。快適な温度を保っているのだが、ある日温度が30度超に!いったいなぜなのか――。
認知症の母の熱中症対策に欠かせないツール
猛暑の影響で、高齢者が熱中症で救急搬送されたり、亡くなったりするニュースが毎日のように報じられています。メディアや自治体が、高齢者に対してこまめな水分補給とエアコンの適切な利用を繰り返し訴えていても、まだまだ情報が行き届いていないのかもしれません。
わたしがエアコンの操作に4年前から使い続けているのが、スマートリモコンです。インターネット環境が必要ですが、古いエアコンでも遠隔操作できるようになりますし、スマートフォンで室温や湿度がリアルタイムで把握できます。
最近のエアコンであれば、こちらもインターネット環境が必要になりますが、スマートリモコンがなくても、遠隔操作に対応している機種もあります。
もっとスマートリモコンを活用して欲しい!
エアコン嫌いな高齢者もいますが、ここまで猛暑になると好き嫌いで片づけられる問題ではなくなっています。不在のタイミングを狙って室温を下げるとか、風向きを変えて風を直接当てないなどの工夫をして、エアコンで大事な命を守って欲しいです。
母も冷房は得意なほうではないので、部屋に居ない時に室温を下げる工夫をしています。例えば寝る直前まで寝室を冷やしておくとか、デイサービスから帰ってくる前に居間を冷やしておくなどです。
また母は、エアコンのリモコン操作ができません。ボタンの意味も分からないし、温度や湿度も理解していません。さらに真夏なのに、雪の話ばかりします。半袖を着て暑いと言っていても、冷房の効いた室内に居ると、外の暑さを忘れてしまうのか季節感もありません。
そこでわが家ではスマートリモコンを使って、冷房を細かく設定しています。室温が28度を超えたら自動で冷房を入れる、24度を下回ったら冷房が自動で切れる設定にしてあるので、わたしが常に見ていなくても室温は調整されています。
せっかく高齢者を熱中症から守れる便利なツールがあるのですから、親の家のインターネット環境の整備やスマートリモコンの設置はためらわずに、活用して欲しいと思っています。
→認知症が進行する母の夏の暑さ対策|エアコンの遠隔操作と熱中症警戒アラートのLINE通知
居間の温度が30度超の事件発生!
熱中症から母を守ってくれているスマートリモコンですが、遠隔操作をしても室温が下がらない日がありました。使い過ぎて、故障してしまったのでしょうか?
東京に居たわたしは、いつものように岩手の実家の居間の室温をスマホでチェックすると、29度と表示されました。
あれ? 何で冷房がついているのに、こんなに高い室温なんだろう? と思い、今度は見守りカメラで母の様子を確認したら、しきりにうちわで仰いでいました。
改めて盛岡の気温を天気サイトで確認すると猛暑日で、東京よりも暑い日でした。あまりの暑さで冷房の効きが悪いのかもと思ったのですが、エアコンは購入して2年しか経過していません。築50年以上が経った実家は、低気密・低断熱だから冷気が逃げるのか?
もう1度見守りカメラで居間をじっくり見たところ、暑さの原因が分かったのです。
母が居間の戸を開け、エアコンの冷気を台所へ逃がしていたからでした。台所の室温をリアルタイムで確認すると、32度と表示されました。
わたしはスマホでエアコンの遠隔操作を行い、冷房設定温度19度、風量5の最大値にして室温を下げようとしました。すると居間の室温は、29度から28.3度に。この調子で下がるかと思いきや、室温は一転して上昇。とうとう30度を超えてしまったのです。
緊急事態と思ったわたしは、ある行動に出ました。
部屋の温度が下がらない!解決策とは
こうなったら、岩手の母に居間の戸を閉めるよう、直接お願いするしかないと思い電話をしました。
わたし「もしもし。目の前にあるガラスの戸あるでしょ、それ閉めてもらえる?」
母「なに? ガラスって何よ? どれ?」
母はわたしがなぜ戸を閉めろと言っているのか、ガラス戸とは何なのかを、なかなか理解できませんでした。それでも繰り返し説明をして、なんとか居間の戸を閉めてもらうことに成功したのです。
しばらくすると、居間の室温は27度と表示され、熱中症から母を守ることができました。
最大にしていた冷房の設定温度を元に戻し、1時間後に念のため居間の室温を確認したら、再び29度と表示されました。
――さっき戸を閉めたばかりなのに、なんで?
エアコンが効いている部屋の戸を閉めない理由
今度は母がトイレに行ったときに、戸を開けっぱなしにしたために、室温が急上昇してしまいました。なぜ、戸を閉めないのでしょう?
母は戸を開けたほうが、涼しい風が入ってくると思っているようです。残念ながら猛暑の今は熱風しか入ってきませんが、一昔前なら窓を開ければ涼しい風が入ってきて、それで生活できていた時期もありました。
またエアコンから冷気が出ていると思っていないようで、ひどい日はエアコンがついているのに窓を開けて、外に冷気を逃がしながら、うちわで仰いていた日もありました。便利なスマートリモコンがあっても、解決できない問題もあるのですね。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。