山梨・大月市に誕生した注目の高齢者ホスピス「住み慣れた地域で人生の最期を」
人生の終末期を迎えた高齢者が最後まで安心して暮らせる「ホスピス」に注目が集まっている。山梨県大月市に高齢者ホスピス「シェアハウス・さっちゃんち」がオープンした。メットライフ財団と日本財団が手がけたプログラムの一環となる高齢者ホスピスとはどんなものなのか、新たな取り組みをレポートする。
人生の最期をどこで迎えるか?
日本の総人口(2021年)は2020年に比べ51万人減少している一方、65才以上の高齢者は昨年より22万人増加し、過去最多の3640万人になったと総務省統計局が発表した。
超高齢社会となり高齢者が余生を過ごす時間が長くなったことで、「人生の最期」をどこで迎えるかが問題となっている。
2020年に日本財団が行った「人生の最期の迎え方に関する全国意識調査」では、「自分らしくいられる」「住み慣れているから」などの理由から人生の最期を迎えたい場所として「自宅」と回答した人が約6割にのぼった。しかし、介護施設やサービスが整っていない地域では、住み慣れた場所から離れた施設へ入所せざるを得ない状況だ。
高齢者ホスピスが山梨・大月に新オープン
そんな問題を解決するモデルケースとなるべく誕生したのが、山梨県大月市にオープンした高齢者ホスピス「シェアハウス・さっちゃんち」だ。
人口の約4割が高齢者の大月市では初の介護付きシェアハウスとなり、市街地に隣接した場所でアクセスも良く、住み慣れた地域で安心して過ごせる環境だという。入居者に合わせたケアを提供し、看取りにも対応。生活の質(QOL)を維持しつつ自分らしい最期を迎えられるのが特徴だ。
この地区の区長を務める藤田邦芳さんは、
「昭和30年には大月市で4万人の人口がいましたが、現在約2万5000人と減少し、うち約1万人が高齢者という市です。このように、急速に高齢化も進む中で、この高齢者ホスピスができたことで、 誰もが住み慣れた地域で人生の最期を迎えることができるようになることを願っています」と、期待を寄せる。
高齢者と子どものための居場所を
「シェアハウス・さっちゃんち」は、メットライフ財団と日本財団が行うプログラム※における第1号の施設となっており、今後、「高齢者ホスピス」と「子どもの第三の居場所」を全国12か所に開設する予定だ。
入居者の生活支援として入居一時金や入居費の一部も補助される。また、ボランティアの受け入れも行い、地域全体の介護力向上を目指していくという。
※メットライフ財団×日本財団 高齢者・子どもの豊かな居場所プログラム/メットライフ財団から日本財団への約4億円の寄付により、2021年9月に開始。超高齢社会と子どもの課題に取り組むことで、誰一人取り残さない持続可能な社会の構築を目指す。
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ホスピスとは、ラテン語の「Hospitum」に由来し、おもてなしや休息の場、病気や疲れた人を保護する場所を意味する。1967年にイギリス・ロンドンに末期がん患者の痛みを和らげるために設立された施設が、近代ホスピスの発祥といわれている。
高齢者や家族が望む医療的ケアが受けられ、穏やかに最期を迎えられるホスピスの存在は、今後ますます社会で求められていくだろう。
【データ】
シェアハウス・さっちゃんち http://laccood.lsv.jp/wp
メットライフ生命 https://www.metlife.co.jp
メットライフ財団 https://www.metlife.co.jp/about/csr/metlife-foundation
日本財団 https://www.nippon-foundation.or.jp
取材・文/松藤浩一
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