「アルコール消毒は万能」「眼鏡をかけると視力が下がる」健康情報の”ウソ”を専門家が指摘
コロナ禍ですっかり身に着いた消毒だが、実際のところ効果はどうなの?パソコンのブルーライトをカットする眼鏡はかけるべきなのか――。生活の中でなんとなく体にいいと思って実践している行動が、もしかしたら時代遅れかも…。生活習慣にまつわる最新の健康知識を専門家に教えてもらった。
生活習慣で見直すべき健康知識
本格的な寒波が到来し、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念される2023年の冬シーズン。対抗するためには、すでにコロナ禍の日常では常識となった消毒が必須だが、そのやり方も見直す必要があるかもしれない。
アルコール消毒は万能ではない
「首からかける消毒グッズやうがい薬はあまり意味がない。実際に京都大学の研究によれば、うがい薬よりも水の方が効果があることが明らかになっています。
また、アルコール消毒も万能ではありません。こまめに手を洗って菌を洗い流すのがいちばんです」(秋津医院院長・秋津壽男さん)
反対に、けがをしたときは傷口の消毒を行わないのが正解。『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』の著書がある外科医の山本健人さんが言う。
「昔はけがをしたら消毒液を使っていましたが、軽い傷ならば消毒しない方が早く治る。傷をなめるのもNGです。
水道水で泥や砂などを洗い流してください。病院で行う治療でも、手術など特別な処置が必要な場合を除いて消毒はしません」
睡眠時間「7~8時間がベスト」は間違い
睡眠における新常識も押さえておきたい。
雨晴クリニック院長で睡眠が専門の坪田聡さんによれば、睡眠時間の新常識は「オーダーメイド方式」だ。
「『7~8時間がベスト』といわれていた睡眠時間ですが、“最適解”には個人差がある。睡眠不足がない状態で自然に寝起きする時間が、その人に合った睡眠時間です。5日間ほど充分に眠った後、睡眠不足が解消された状態で布団に入り、目覚めるまでの時間を測ってください。
また、起床時に目覚まし時計を使うのも控えるべき。自然に目覚める場合、起床1~2時間前から、ストレスから身を守るホルモンの『コルチゾール』が分泌されますが、目覚ましによって言わば強制的に起こされると、コルチゾールが足りず、強いストレスを感じます」(坪田さん)
寒い冬場は熱いお湯に入りたいけど…
睡眠の質は入浴方法にも左右される。
「“寒い冬だから熱いお湯に入りたい”という人が多いですが40℃以上のお湯は交感神経を優位にし、寝つきが悪くなるので控えてください。同様の理由で寝る前の運動もNGです」(管理栄養士・望月理恵子さん)
浴室に入ったら、まずは湯船で体を温めよう。美容皮膚科医の堀江義明さんがアドバイスする。
「体を洗ってから湯船につかるのではなく、湯船で毛穴をしっかり開いてから体を洗った方が効果的に汚れを落とすことができます」
入浴時のお湯と同様、洗顔時も「ぬるま湯」が正解だ。
「体温より1~2℃高い37~38℃が最も肌に負担をかけない温度です。お風呂と同じく、適度に毛穴が開いて汚れを落としやすくなります。冷水にすると毛穴が閉じて汚れが落ちにくいし、反対に、高温すぎると必要な皮脂が失われます」(堀江さん)
目の汚れを「洗い流す」は間違い!
洗顔が必須である一方、目の汚れを洗い流すために行う「洗眼」は不要。
「昔は小学校などでプールの授業の前後に目を洗ったものですが、最近は行いません。目を洗うことで傷がつくデメリットが懸念されるためです。ゴミなどが入っていない限り洗眼は必要ない」(眼科医の平松類さん・以下同)
「眼鏡をかけると視力が下がる」は都市伝説
平松さんは「眼鏡をかけると視力が下がる」という説も「都市伝説」と切り捨てる。
「老眼や近視で見えにくいのに、“目が悪くなるから裸眼のままで頑張る”と頑なに眼鏡を拒む人がいますが、眼鏡をかけても視力は下がりません。むしろ見えないまま放っておけば、脳への刺激が減って認知機能の低下につながるうえ、白内障を見逃すリスクもあるのです」
ブルーライトカットは「必須」ではない
しかし、同じ眼鏡でもブルーライトカットは必須とは限らない。
「睡眠障害の改善は期待できますが、パソコン作業などによる眼精疲労を抑える効果はありません。特に子供には推奨できない。太陽光が含有する近視の進行を抑制する可能性のあるバイオレットライトまでカットする恐れがあるためです」
ウソの健康知識・生活習慣【まとめ】
■間違った知識…理由
■アルコール消毒…首からかける消毒グッズや、アルコールスプレーの長時間にわたる効果は期待できない。
■うがい薬…京都大学の研究により、うがい薬よりも水によるうがいの方が効果的であると明らかに。
■傷口の消毒…軽微なけがに消毒液を使うとかえって治りが遅くなる。病院でも手術などの特別な処置以外では治療として行っていない。
■8時間睡眠…最適な睡眠時間には個人差がある。「オーダーメイド方式」で自分に合った時間を探るべし。
■目覚ましで起床…ストレスから身を守るホルモンの分泌を阻害して、目覚めが悪くなる。
■熱いお湯につかる…40℃以上のお湯は交感神経を優位にして、寝つきを悪くする。
■体を洗ってから湯船に入る…湯船につかり、しっかり毛穴を開いてから体を洗った方が効果的。
■冷たい水で洗顔する…毛穴が閉じて汚れが落ちにくくなる。反対に、高温すぎると必要な皮脂が失われる。
■目を洗う…洗うことで目が傷つくデメリットが懸念され、現在は小学校などのプールの授業でも実施していない。
■眼鏡をかけると視力が下がる…むしろ見えないまま放っておけば、脳への刺激が減って認知機能の低下につながるうえ、白内障を見逃すリスクも。
■ブルーライトカット眼鏡で目を守る…睡眠障害の改善は期待できるが、パソコン作業などによる眼精疲労を抑える効果はない。
教えてくれた人
外科医・山本健人さん、美容皮膚科医・堀江義明さん、雨晴クリニック院長・坪田聡さん、管理栄養士・望月理恵子さん、秋津医院院長・秋津壽男さん、眼科医・平松類さん
※女性セブン2023年1月5・12日号
https://josei7.com/
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