高木ブー「雷様コントは僕が中心になってやり続けます」と意欲 元日特番の秘話を明かす|連載 第85回
2022年もあと数日。高木さんは「自分は周囲に助けられて生きてきたと、あらためて感じた年だった」と言う。「1933ウクレレオールスターズ」として何度もステージに立ち、新曲「パパの手」も発表。ますます活躍するいっぽうで、仲本工事さんとの突然の別れというつらい出来事もあった。ブーさんが来年に向けての意気込みを語る。(聞き手・石原壮一郎)
元日の「ドリフに大挑戦」では加藤茶の雷様が初登場する
今年もいろんなことがあった。いちばん大きな出来事は、やっぱり仲本(工事)との突然の別れだな。もちろん志村(けん)のときもショックだったけど、ドリフターズに入る前からの仲間で、今もいっしょに活動していた仲本がいなくなったつらさは、言葉では言い表せない。「いきなりいなくなるんじゃないよ、バカヤロー」って言いたいよね。
だけど、追悼特番(12月15日放送『ドリフ大感謝祭 ありがとう仲本工事さんスペシャル』)も終わったことだし、いつまでも沈んではいられない。若い人にドリフターズを伝えていくために、加藤(茶)と力を合わせてがんばらなきゃね。
元日には『ドリフに大挑戦 あけましていい正月だなスペシャル』(17時~、フジテレビ系)がある。たっぷり4時間やってくれるらしい。「ドリフに大挑戦」は3回目だけど、若い人たちがドリフのコントをやってくれるのは嬉しいよね。きちんとセットを組んで、練り上げた内容で笑ってもらうっていう形は、ドリフが育ててきたと思ってる。最近はそういうコントが少なくなっちゃったけど、絶対になくしてほしくないな。
もちろん、昔のままで残してくれって話じゃなくて、時代に合わせてどんどん変えていけばいい。博物館に飾るわけじゃないんだから、変化した「いちばん面白い形」をまた若い人に見てもらうっていうのが、本当の意味で残して伝えるってことだよね。
今回は「忠臣蔵」のコントが出てくるんだけど、ドリフのメンバーがやった昔の映像と、カンニング竹山君たちがやった今の映像が入り混じって、そのふたつが神田伯山さんの口上でつながっていく。あれは見ごたえがあったし、何より面白かったな。こういうコントの見せ方もあるんだなって感心しちゃった。
考えてみたら、僕はずっと周囲に助けられて生きてきたなと思う。6人きょうだいの末っ子として生まれて、親にとっては孫みたいなもんだし、兄や姉も年の離れた弟をかわいがってくれた。ドリフターズではメンバーに助けられながら、精いっぱい「ドリフの高木ブー」をやってきた。雷様のコントだって、長さんと仲本がいたからこそだよね。
これまで2回あった『ドリフに大挑戦』で雷様をやったときには、もう長さんはいないから、仲本と僕のあいだにいろんなゲストが入ってくれた。武道館でももクロとやったコンサートのときは、高城れにちゃんが紫のかわいいコスチュームで雷様になってくれた。仲本と僕のふたりで、そういう形を取りながら雷様を続けていけるかなと思ってたんだよね。
そしたら、とうとう僕ひとりになっちゃった。雷様に関しては「僕が中心になってがんばらなきゃ」っていう気持ちがあって、リハーサルのときなんかも積極的に「ここはこうしよう」なんて言ってたんだよね。赤い雷様の仲本は、いつも静かに「そうだね」ってうなずいてくれてた。ひとりになったことで、仲本にいかに助けられてたか、いてくれたことがいかにありがたかったか、あらためて感じてる。
仲本のことがあって、いろんな人が「雷様はどうなっちゃうんですか」と心配してくれた。僕も「どうしたらいいんだろう」と一時期は悩んだけど、今回は加藤が助けてくれたんだよね。元日の特番では、ハゲヅラと丸眼鏡をかけた加藤の雷様が登場します。仲本の葬式のときに、加藤が「雷様は続けたほうがいい。俺も手伝うから」って言ってくれた。嬉しかったな。僕が「雷様」を大事にしてるのを見てくれてたみたい。
加藤だけじゃなくて、ほかにも意外な人が雷様をやってます。昭和の時代に3人で始まった雷様が、令和には「雷様ファミリー」に進化しても面白いよね。長さんと仲本は空の上からの参加だけど、そっちからゆっくり見守っていてください。雷様はもともと空の上にいるんだから、きっと居心地いいんじゃないかな。
新年をドリフターズの特番でスタートできるなんて、つくづく幸せなことだと思う。2月には「1933ウクレレオールスターズ」でハワイに乗り込んでライブをする予定になってる。3年ぶりのハワイは、どう変わってるかな。3月には、いよいよ90歳を迎えます。せっかくだから大いに盛り上げようってことで、またまた周囲に助けられながらだけど、プロジェクトがいくつか進んでいます。お楽しみに。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
ブーさんのひと言
「今年もあと数日ですね。いろんなことがありましたが、今はただただ感謝の気持ちです。新しい年も加藤共々がんばりますので、よろしくお願いいたします」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。2021年6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回ニコニコ生放送で、ドリフとももクロらが共演する「もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~」が放送中。2023年1月1日17時より4時間にわたって、フジテレビ系で『ドリフに大挑戦 あけましていい正月だなスペシャル』が放送される。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。