高齢者世帯のニーズに応える車いす対応キッチン「ウエルライフ」
10月10日から12日にかけて東京ビックサイトで開かれた「第45回 国際福祉機器展」。14ヶ国・1地域、620を超える企業・団体が、約2万点の福祉機器を出展した。アジア最大規模の展示と共に併催されたイベントでは、「介護ロボットの安全性・導入効果を最大化するために」「高齢者向けの手軽な日々の食事」「一般家庭における介護で腰痛にならないための基本技術」といったセミナーも行われ、高齢者の介護も注目されているテーマの一つだ。
ロボットやIoT・・・介護の世界の福祉機器開発最前線
福祉機器の技術は日進月歩で、新しいものがどんどん開発されている。展示会のような場でお披露目された後に現場に導入され、評価されれば使い続けられる。
今回の国際福祉機器展でも「入浴介護アシストロボット」「IoT杖による見守りサービス」といった最新技術を使った展示があった。「入浴介護アシストロボット」は、富山大学とカナヤママシナリー株式会社の共同開発しているもので、介護職員の負担軽減と高齢者のQOLの向上の両立を目的としている。「IoT杖による見守りサービス」は、公益財団法人ハイパーネットワーク社会研究所が開発しているもので、GPSと加速度センサー、通信モジュール内臓のIoT機器を杖に取り付ける。そうすることで、外出時の位置情報や転倒情報が分かるというサービスだ。
車いす対応キッチンは座ったままで調理がしやすい
高齢者向けの商品として、座ったままで快適に料理ができるキッチンも来場者の注目を集めていた。LIXILの車いす対応キッチン「ウエルライフ」だ。フルモデルチェンジして、2018年10月1日から全国で発売されている。車いす利用者、高齢者、そして海外を含む各企業の担当者が入れ代わり立ち代わり、その使いごこちを試していた。
「ウエルライフ」は、車いす対応キッチンとうたっているが、“座ったままで使いやすい”というところがポイントだ。高齢になると、疲れやすくなったり、足腰が弱ってきたりという理由で、いすに座ったまま調理をしたいという人が多いそうだ。そのニーズに合わせて、膝もつま先もしっかりキッチン台の奥まで入るので、下ごしらえ、加熱調理、洗い物が自然な姿勢でできる。また、奥まで手が届くように奥行を60cmで設計し、高さは73cmから85cmまで1cm刻みで選べるようになっている。
他にも高齢者にやさしい機能が用意されている。水はセンサーに手をかざせば出したり、止めたりできる。また、吊戸棚はリモコン操作で昇降できるので、車いすでも楽に取り出し、収納することができる。換気扇も手を伸ばす必要はなく、手元のスイッチで操作できるように工夫してある。
株式会社LIXILのマーケティング部門マーケティングストラテジー統括部の星野亨統括部長にフルモデルチェンジしたキッチンについて聞いた。今回の展示の責任者を務める星野さんはキッチンの魅力をこのように語る。
「LIXILとしては『多様性の尊重』ということをCR(コーポレート・レスポンシビリティ)戦略の中でも掲げています。高齢者の方や障がいをお持ちの方の生活をより豊かに楽しく過ごせるようにしていこうと考えています。今回の展示の目玉のキッチンは、車いすをお使いでなくとも、高齢になり、足腰が弱くなってきた際に、いすに座って料理ができるようにしてあります。将来を見据えてリフォームをされる方にも最適なキッチンです」
また、LIXILはIoT技術を住まいに活かし、スマートスピーカーに話しかけることでキッチンの照明をつけたり、カーテンを開けたりすることができる「Life Assist(ライフアシスト)」システムを商品化している。センサーやスマートスピーカーなどを活かしたシステムを入れることで、室内の行き来が負担になっている高齢者も、声だけで自分の思い通りの室内環境を作れるようになる。
いかがだっただろうか。車いすを使っている人はもちろん、座って調理がしたい、将来を見据えて車いすでも使えるキッチンにリフォームしたいという人にもピッタリではないだろうか。実際に車いすを使っている人たちに開発段階から参加してもらい、使い勝手を徹底的に検証し、改良を重ねたという。東京、名古屋、大阪のショールームにも展示してあるので、気になる方は使い心地を試してみては。
撮影/津野貴生
【データ】
株式会社LIXIL
https://www.lixil.co.jp/