猫が母になつきません 第314話「きっとまた」
シロが来なくなってもう1ヶ月くらいになります。天気が悪い日以外はほぼ毎日来ていたので、顔が見られないのはとてもさみしい。光るみたいに真っ白な毛並み、神々しい姿に似合わず「にゃっにゃっ」とひょうきんな鳴き声を出すところ…来なくなると色々思い出します。これまでも何度もこういうことはあって、忘れた頃に急に現れてびっくりということを繰り返しているので、いつかまたきっと来てくれる…そう思いながら野良猫としては高齢の8〜9歳で少し痩せてきていたことを思うと不安な気持ちにもなります。歳をとってくるといつも「別れ」ということを意識するようになります。若いころには遠いところに置いていたその言葉が、いつもすぐ手に届くところにあるような感じ。そしてわりとすんなりそれを受け入れてしまう。さびはシロがどこへ行ったのか知っているんでしょう。以前のように窓辺でシロが来るのを待つこともなく、淡々と日々を過ごしています。いつになるかはわからないけど…きっとまた、きっとまた。
【関連の回】
第237話「はるとおからじ」
第243話「でてくる」
第256話「さびとシロ」
第258話「まつ」
第296話「はいってくる」
第305話「せいざする」
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。