口腔ケアが脂肪肝の改善に大切な理由 最新研究で判明した歯周病菌と肝臓の関係【医師解説】
体内で余った中性脂肪が肝臓にたまる病気「脂肪肝」。糖尿病や高血圧、心筋梗塞など脂肪肝はあらゆる生活習慣病を引き起こす可能性がある。脂肪肝を予防するには食生活を変えることが重要視されているが、口腔環境も大切になる。一見無関係に思うが肝臓専門医の栗原毅さんは、「実は口腔内細菌が肝臓にダメージを与えることがわかっています」と話す。栗原さんに正しい口腔ケアの仕方を聞いた。
口腔内細菌が肝臓にダメージを与える
脂肪肝の改善には食習慣の見直しと同時に、ていねいな口腔ケアも大切だという。
「口腔ケアがなぜ肝臓に影響をもたらすのか、不思議に思う人もいるでしょう。実は歯周病菌などの口腔内細菌は、これまで胃酸によってすべて死滅すると考えられていました。しかし実際には生きていて、大腸や肝臓にまで到達することが、最近の研究でわかってきました。大腸までたどり着いた口腔内細菌は腸内の悪玉菌を増やして免疫力を低下させたり、肝臓の正常な働きを鈍らせたりするのです」(栗原さん・以下同)
唾液は細菌を死滅させる効果がある
口内環境の悪化は、主に唾液の不足によって起こる。唾液には細菌を死滅させる殺菌効果があるが、ドライマウスなどで唾液の量が減ると口腔内細菌の繁殖が促進される。ドライマウスの原因としては、糖尿病や腎臓病もあるが、たいていの場合は、加齢やストレスによって起こる。また最近では、コロナ禍のマスク生活で口まわりの筋肉を動かさなくなったことなども、原因の1つに挙げられる。
「対策は唾液腺マッサージがおすすめ。また、食事の際、よく噛んで食べることも大切。よく噛んであごをしっかり動かすと唾液腺が刺激されて、唾液が分泌されやすくなります」
対策は唾液腺マッサージのやり方
耳の前下方にある「耳下腺(じかせん)」、あごの骨の内側のやわらかい部分に存在する「顎下腺(がくかせん)」、舌の付け根のあたりにある「舌下腺(せつかせん)」、この3か所の唾液腺を刺激する。
【1】親指以外の4本の指を両頰に当てて、下から上へゆっくりと頰全体に円を描くようにマッサージ。こうすることで、「耳下腺」が刺激される。5~10回を目安に行う。
【2】両手の親指を、左右それぞれの顎下腺に当て、そこからあご先の舌下腺までを、5か所くらいに分けて押していく。5~10回を目安に行う。
口腔ケアには歯間ブラシと舌ブラシの併用を
口腔内には400~700種の常在菌がいる。ブラッシングが充分でなかったり、砂糖を過剰に摂取すると、これらがネバネバした物質“歯垢(プラーク)”を作る。この歯垢1mgの中には約10億個の細菌が存在し、これらが虫歯や歯周病をひき起こす。
歯垢は粘着性が強く、うがい程度では落ちないという。栗原さんがすすめる歯垢ケアのポイントは次の4つだ。
歯周ケア4つのポイント!
【1】歯ブラシはペンを持つように持つ。歯1本につき20~30回ずつ、歯ブラシを小刻みに動かしながら磨く。
【2】歯の裏側と表側はもちろん、噛み合わせ部分や歯と歯の間など、磨きにくい部分もていねいにブラッシング。
【3】歯ブラシと歯間ブラシを併用する。歯ブラシによるブラッシングのみの場合、歯垢の除去率は約60%だが、歯間ブラシを取り入れると除去率は85%までアップする。
【4】舌ブラシを使うと、さらに口内環境が整えられる。舌を中央と左右の3つのエリアに分けたら、舌ブラシを奥から手前にかき出すようにして、各エリアを10回ずつこする。
朝と夜、毎食後もブラッシングを!
「歯磨きをするタイミングは、起床後と就寝前、そして食後です。というのも、睡眠中は唾液が出にくいので、口腔内に菌が増殖しやすくなります。ですから、起床後に歯磨きをしないと、朝食時に食べ物と一緒に大量の菌を飲み込んでしまいます。また、食後のケアを怠ると細菌は8時間以内に歯垢となるので、こまめなケアが必要です」(栗原さん・以下同)
教えてくれた人
栗原毅さん/栗原クリニック東京・日本橋院長・肝臓専門医
取材・文/上村久留美 イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2022年3月3日号
https://josei7.com/
●コロナ太りで急増中 生活習慣病を引き起こす「脂肪肝」とは? セルフチェック付き