高齢者施設での面会、家族以外が訪れるときに気をつけたい5つのマナー「突然、大人数、大声は要注意」
高齢者施設に入居している親戚や友人に会いに行く計画をする際、少しの時間だけだからと気軽に考えていないだろうか。介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんは「楽しい面会にするためには、心がけて欲しいことがあります」と話す。実際に起きたトラブル事例をもとに、面会時に気をつけたいマナーについて詳しく教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
訪問者も高齢者施設側も気持ちよい面会になるために
親戚やご友人として施設に面会に訪れる際には、お互いが気持ちよく過ごすために、少しだけ心に留めておきたいマナーがあります。
今回は、実際に施設で起こった面会時のトラブル事例を紹介しながら、家族以外が訪問する際に注意したい5つのポイントをまとめました。これから面会を予定しているかたは、ぜひ参考にしてみてください。
実際に起きた3つの面会トラブル事例
トラブル1:突然の訪問
Aさんが入居する施設に、友人であるSさんとMさんが何の連絡もなく突然訪れたケースがありました。二人は久しぶりのランチを楽しんでいる最中に、「そういえば、この近くの施設にAさんが入居しているよね、今から行ってみようか」という話になり、立ち寄ったのでした。
受付でAさんの名前を告げられた職員は、困った表情を浮かべました。「申し訳ございません、A様は今、入浴中でして…」
突然の来訪に、職員は入浴介助の段取りを急遽変更せざるを得なくなり、他の入居者のケアにも影響が出そうに。Aさん本人も、入浴中に呼び出されて着替えを強いられ、落ち着いて面会できる状況ではありませんでした。結局、SさんとMさんは短い時間で面会を終えましたが、施設側にもAさん本人にも、そして他の入居者のケアにも、思わぬ負担をかけてしまう結果となりました。
トラブル2:大人数での訪問
Bさんの入居している施設に、「久しぶりだから、みんなで会いに行こう」と、Bさんの甥・姪・その子どもたち総勢7名が訪れたケースがありました。
ところが、施設には感染症対策のため、「面会は最大3名まで」という決まりがあり、ご家族はそのことを知らずに来訪。
職員が「一度に全員での面会は難しいです」と説明したものの、家族からは「なぜ会えないんだ」「せっかく来たのに」といった声が上がり、職員との間で気まずい雰囲気に。結局、施設の判断で代表者3名のみが面会し、残る家族は窓ガラス越しに顔を見せるかたちに。施設にも家族にも、そしてBさん本人にも、後味の悪いものとなってしまいました。
トラブル3:大きな話し声
入居者Cさんの幼なじみであるNさんとKさんが、久しぶりの面会に訪れたときのこと。
久々の再会に話が弾み、三人は声を上げて大笑い。昔話に花を咲かせるうちに、自然と声のボリュームも上がっていきました。
しかし、その声は他の入居者にとっては騒音となり、不快に感じてしまう方が何人もいました。職員が声のボリュームについて声がけされるも、話に夢中になってまたすぐに声が大きくなってしまいます。楽しい面会が、図らずも他の入居者の平穏を妨げてしまう結果となり、施設側としても対応に苦慮するケースとなりました。
気持ちよく面会するために心がけたい5つのポイント
施設での面会をよりよい時間にするために、押さえておきたいマナーがあります。
とくに、ご家族以外の立場で訪問する際には、次の5つのポイントを意識してみてください。
1.事前に連絡・予約をする
施設によっては、面会の曜日や時間帯にルールが設けられていることがあります。また、入居されているかたの体調や当日の予定によって、時間の調整が必要になることも。
訪問前には、必ず施設に連絡して、面会の可否やルールを確認しておきましょう。あらかじめ予定を共有しておくことで、施設側もスムーズに準備ができ、ご本人も落ち着いて時間を過ごすことができます。
2.面会できる人数を確認する
「せっかくだから、みんなで訪ねたい」と思うかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、大人数での訪問は、施設側に負担をかけてしまうことがあります。
面会スペースの広さや感染症対策から、人数制限を設けている施設もあります。トラブルを避けるためにも、訪問の前に面会できる人数を施設に確認しておくと安心です。
3.声のボリュームに配慮を
施設は多くの入居者が共同生活を送る「生活の場」です。面会中はつい声が大きくなりがちですが、まわりの入居者への配慮を忘れず、落ち着いた声のトーンを心がけましょう。
4.差し入れは職員に確認を
入居されているかたに持病や食事制限がある場合、差し入れた食品が体調に影響することがあります。トラブルを避けるためにも、必ず事前に職員に相談し、確認をとってから渡すようにしましょう。
とくに、生ものや手作りの食品は衛生面の理由から持ち込みを控えるよう求められることもあります。
こっそり渡すと、あとでトラブルに発展することもありますので、注意が必要です。
5.負担のない面会を心がける
久しぶりの再会で、つい話が弾んでしまうこともあります。しかし、長時間の面会は、入居しているかたの体力を消耗させることもあります。面会中に疲れた様子が見られた場合は、無理をせず、早めに切り上げることも大切です。
笑顔でまた会えるように
高齢者施設での面会は、入居者本人だけでなく、ほかの入居者や施設スタッフへの配慮も大切です。
「会えてよかった。」「また来てね。」そんなふうに思ってもらえるよう、施設のルールを守り、入居者の気持ちに寄り添った面会を心がけていきたいですね。