作り置きで驚くほど簡単!塩分控えめ、野菜たっぷりの「ハートレシピ」
心臓の健康を守るための食事のポイントは「塩分控えめ」と「野菜たっぷり」。どちらも大事なことはわかっていても、薄味は味気ない――。そんな思い込みをくつがえすほどおいしくて、食べ応えがあり、手軽に作れる料理「ハートレシピ」が日本心臓財団とエドワーズライフサイエンスより発表された(2018年8月・東京)。
発表会中に行われた料理コーナーでは、ファッションデザイナーのドン小西氏、心臓病のエキスパートである渡辺弘之先生(東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター長)も料理に挑戦。見事な包丁さばきを披露したドン小西氏は「減塩がこんなに簡単だと思わなかったよ」と驚きの表情を見せた。
1日の塩分摂取量を6g未満に
「ハートレシピ」の開発を手がけたのは、ベターホームのお料理教室講師・管理栄養士の森田陽子先生。1日3食を3日分、計9食分のメニューを考案した。
「『ハートレシピ』は、“心臓にやさしい”をコンセプトに、1日の塩分摂取量を6g未満に抑え、野菜を1日350g以上とれるように考えました。また、今回はとくに、あらかじめ『作り置き』しておけばそのまま食べられるものや、ちょっと手を加えてアレンジしやすい『おかずのタネ』など、毎日のごはんの準備がちょっと楽になるよう、工夫してみました」(森田陽子さん)
減塩のコツは「酸味」と「香り」
発表会の料理コーナーで教えてもらったのは「豆入りドライカレー」「カラフル野菜ピクルス」「キウイヨーグルト」の3品だ。ドン小西氏、渡辺先生のほかに平均年齢68才のシニア男性10名も参加し、協力しながら料理を仕上げていった。
豆入りドライカレーの作り方
●材料(4人分)
合びき肉…200g 玉ねぎ…1個(200g) ピーマン…2個(80g) にんじん…1/2本(100g) にんにく…1片(10g) しょうが…10g 油…大さじ1 カレー粉…大さじ2 大豆水煮…120g パセリ…4g 雑穀ごはん…600g
【A】 ウスターソース…大さじ2 トマト水煮缶…200g スープの素(顆粒)…小さじ1/2
●作り方
【1】玉ねぎ、ピーマンはみじん切りにする。にんじん(皮ごと)、にんにく、しょうがはすりおろす。
【2】フライパンに油を入れて温め、ピーマン以外の野菜を中火で炒める。しんなりしたらひき肉を加えて、パラパラになるまでしっかり炒める。ピーマンを加えてさっと炒める。
【3】カレー粉を加えてさらに炒め、全体になじんだら【A】を加えて、ときどき混ぜながら5~6分、汁気がなくなるまで煮る。
※この状態で冷まして4等分して容器に入れ、冷凍または冷蔵保存できる。また、「おかずのタネ」としてパスタソースや野菜炒めの具としても使用できる。
【4】【3】に大豆を混ぜる。器に雑穀ごはんを盛り、カレーをかけ、パセリをちぎって散らす。
●ポイント
・にんにく、しょうが、カレー粉など香りのよい食材を使うと、味にメリハリがつくため塩分を控えやすい。
・ルーではなくカレー粉を使うため、普通のカレーに比べてエネルギー控えめ。
カラフル野菜のピクルスの作り方
●材料(4人分)
きゅうり…1本(100g) パプリカ(赤・黄)…各1/2個(各80g) セロリ…80g
【A】 砂糖…大さじ2(18g) 塩…小さじ2/3 酢…50ml 水…100ml 粒こしょう…小さじ1/4 ローリエ…1枚
●作り方
【1】野菜は長さ4~5cm、幅1cmに切り、ボウルに入れる。
【2】鍋に【A】を入れてひと煮立ちさせ、熱いうちに【1】のボウルに注ぐ。30分以上おき、途中で1~2回混ぜる。冷めたら容器に入れて冷蔵庫へ。
●ポイント
・酸味は塩味を引き立たせるため、減塩でも薄味と感じさせない。
・献立に酸味のある料理を加えると、味に変化がつき、減塩による物足りなさを感じにくい。
・にんじんやかぶ、大根など好みの野菜で作り置きして、野菜不足の解消に。
キウイヨーグルトの作り方
●材料(3~4人分)
キウイ…1個(100g) 砂糖…20g プレーンヨーグルト…1人分80g
●作り方
【1】キウイは皮をむき、5mm厚さのいちょう切りにする。容器に入れ、砂糖をまぶし、30分以上おく。(キウイの砂糖漬け)
【2】ヨーグルトを1人分ずつ器に入れ、キウイの砂糖漬けを1人分ずつ加える。
●ポイント
甘みのあるデザートを献立に加えることで、食事の満足度がアップする。
参加者とドン小西氏も調理体験
「塩・こしょうは省いてもいいんだね!」
同世代の男性たちに混じって、軽やかな手さばきでピーマンを刻むドン小西。じつは8年前からイタリア料理教室に通い、自宅でもよく料理をするという。
「けっこう料理は好きでね、ラタトゥイユ(南仏風の野菜のトマト煮込み)なんて、2日にいっぺんくらい作るよ。あれはクミンを入れるとうまいんですよ」
30分ほどで豆入りドライカレーとピクルスが完成し、実食。
「今日はピクルスにちょっと塩を入れたくらいで、ほかにはまったく塩を使わなかった。でも、カレーもピクルスもすごくおいしいし、薄味なんて全然感じませんよね。今までは『味付けにはとりあえず塩・こしょう』と思っていたけど、そんなことしなくていいんだなっていうのがいちばんの発見でした。自分で料理をすると楽しいし、どんな材料が入っているのかとか、体でわかることがいっぱいある。今日も、すごくいい勉強になりました」(ドン小西氏)
塩が直接、心臓病を引き起こす!?
心臓疾患の患者につねに減塩の大切さを伝えている渡辺先生も、ドライカレーをほおばって大きくうなずく。
減塩は難しいもの、つらいものと僕自身もなんとなく思っていましたが、実はこんなに簡単に減塩する方法もあるんですね。これからは、自信をもって患者さんに『減塩でもおいしい料理があるんですよ』と伝えられます」
渡辺先生は、心臓の手術を受けた患者に食事日誌をつけさせて、体重や塩分摂取量などをきめ細かく指導している。
「心臓に大きく負担をかける要因のひとつに高血圧があります。そして、塩分の摂りすぎは高血圧を引き起こすことはよく知られていますが、最近は塩が直接的に心臓や血管の病気を起こすというデータが出始めているんです。
日本人の塩分摂取量は1日10gと、世界中のどこの国より多い。目標値とされている男性8g、女性7gを大きく超えています。心臓や血管を守るには少なくとも目標値以下、高血圧の人なら6g以下にするのが目標です。塩分1gあたり300mlの水分を体に蓄えます。塩の摂取量が1g減れば体重が0.3kg減るので、心臓への負担は確実に減るんですよ」
ここで紹介した以外の「ハートレシピ」は、日本心臓財団のホームページに公開されている。心臓病が気になる人だけでなく、誰が食べてもおいしくヘルシーな減塩&野菜たっぷりメニューをレパートリーに加えてみてはいかがだろうか。
→心臓にやさしいハートレシピ http://www.jhf.or.jp/heart_recipe/
撮影/政川慎治 取材・文/市原淳子
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