新しいことへの挑戦が脳を活性化 ガラケーをスマホに替えたり音楽を聴くだけでもOK
年を重ねていくと、同じ年でありながらいつまでも変わらず若々しい人とそうでない人の差がはっきりと表れてくる。その鍵を握るのは、「好奇心」だという。
好奇心がある人とない人では見た目や脳年齢が異なることが研究や調査により示されている。好奇心が旺盛な人ほど認知機能の低下が抑えられ、好奇心を失った人は集中力や記憶力の低下が進む。マンネリ化した刺激のない生活は最も感情の老化を促進させる。それゆえ、高齢者こそマンネリ化した生活を変える努力が必要なのだ。
初めてのことに挑戦してみることが大切
そうは言われても、新しい趣味や習い事を見つけるのは簡単なことではない。「体も痛いし、お金もない。新たに始められることなど思いつかない」と嘆く人もいるだろう。だが、何もマラソンを始めたり、高い授業料を払って習い事を始める必要はない。菅原脳神経外科クリニック理事長で脳外科医の菅原道仁さんが言う。
「人間の脳は決められたことを繰り返すだけでは活性化されません。新しいことに取り組み、それを達成することで、快楽を生み出す神経伝達物質のドーパミンが分泌され、さらなる意欲や集中力が増し、次のことに取り組む気持ちが湧く。つまり、挑戦する人ほど、より挑戦しやすい脳の状態になるという好循環が生まれるのです。“挑戦”というと習い事のイメージを持つ人も多いですが、普段の散歩道を変えたり、初めてのレストランへ行ってみるだけで効果があります。散歩道で花を見て四季を感じる、初めての料理を食べておいしいと感じる、そうした成功体験をするとドーパミンが分泌されて楽しくなり、モチベーションにつながるのです」
ガラケーを使っているならば、それをスマホに替えるだけでも充分に効果が望める。
「写真を撮ってSNSにアップする、ブログに日々の思いを綴る、インターネットで興味のあることを検索するなど、スマホを使ってできることを試してみると、きっと視野が広がるはずです。おもしろくなかったり、逆にストレスになるのなら、すぐにスマホを手放したって構いません。実際にやってみて、自分が何をどう感じたのかという気づきは、新たな挑戦への第一歩となります」(菅原さん)
音楽は脳に好影響
行動することが億劫ならば、音楽を聴くだけでもいい。ブレインフィットネス研究所ディレクターで脳科学者の杉浦理砂さんが言う。
「もともと、音楽は脳や心に好影響を与えることが知られています。好きな歌を聴くと気分が高まりますが、あれはドーパミンが分泌され、『報酬系』と呼ばれる神経系が活性化しているからです。報酬系の活性化は脳の働きを高めてくれます。脳は、使わなければ神経回路が退化して萎縮してしまいますが、その回路は“思い出す”ことで活性化する。青春時代の“懐メロ”を聴くと忘れていた当時の記憶がよみがえるのは、神経回路が活性化したからです。
医療の現場でも、懐かしい曲には認知症の予防効果があるといわれています。さらに、最新のヒットチャートの曲など聴いたことのない曲を聴くと、側頭葉にある『聴覚野』という部分が反応します。側頭葉は記憶をつかさどる海馬の外側にあるため、そこが刺激されると記憶機能への好影響も期待できます。いろいろな音楽に触れ、心がワクワクする音楽に出合えると、より高い効果が期待できます」
年末年始は孫と一緒にテレビを見て、“イマドキ”の曲を聴いてみれば、新たな発見があるかもしれない。反対に、何より避けるべきは「孤独」だ。
「高齢になって仕事をリタイアしたり、夫に先立たれたりすると、誰ともしゃべらず、1人で家にいる時間が一日の大部分になる。その間、ただぼんやりテレビを見ているような生活では、認知機能は著しく低下してしまう。対人関係によって脳が受ける刺激は非常に大きく、孤独になって他者とのコミュニケーションが減少すると、みるみる老け込んで寿命も縮みやすくなります」(菅原さん)
子供やご近所さんと良好な関係を築くおおらかさを身につけ、日常的に会話する相手を失わないことが最大のポイントだ。
■「好奇心」を刺激する ちょっとした行動変化【まとめ】
【1】最新曲を聴いてみる
脳の側頭葉にある「聴覚野」という部分が刺激され、認知機能の向上につながる可能性がある。
【2】散歩のルートを変えてみる
四季折々の植物や、いつもとは違う風景を眺めて「楽しい」と感じるとドーパミンが分泌される。
【3】新しい商品、レストランを試してみる
新しいものを食べて「おいしい」と感じるなど、成功体験の蓄積がモチベーションにつながる。
教えてくれた人
杉浦理砂さん/ブレインフィットネス研究所ディレクターで脳科学者
※女性セブン2022年1月1日号
https://josei7.com/
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