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ジュディ・オングさん亡き愛犬への思い「新たな子を迎えることに罪悪感を抱かないで」

 ジュディ・オング(71)さんは、歌手、女優、版画家としてマルチに活躍。愛犬家の彼女は、2013年に13年間一緒に暮らした愛犬パール(ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア)が死去し、ペットロスになったという。その半年後、パールと同犬種のアイリスと出会い、現在は、アイリスとその息子アポロの2匹と暮らしている。ペットロスを乗り越えたジュディ・オングさんの思いとは――。

ジュディ・オングさん「何度も犬を見送った」

 幼い頃から家にはいつも犬がいたという。

「8才の頃から家族で犬を飼っていました。コリー犬のファニーちゃんが初代で、次にボストン・テリアのバディくん、その後、ポメラニアンのマックとリンリンが来て、ゴールデン・レトリバーのブランディを迎えました」

 彼らを順番に天国に送り、それぞれに悲しい思いはしたものの、ペットロスには陥らなかったという。しかし、ブランディの後に迎えたウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアのパールは、これまでの子たちとはわけが違った。

50才のときに出会ったパール

 パールは50才のときに、初めて飼った“自分だけの犬”だったという。

「それまでの子たちは、両親が主人の“ファミリードッグでしたが、パールは私が主人になった初めての子でした」

 生後間もないパールのしつけのため、3か月間仕事を休むほど気合を入れて“子育て”に取り組んだと、目を遠くに向け、懐かしむ。

「パールはとても賢い子で、私の衣装の収納場所をマネジャーに教えてくれるほど(笑い)。仕事に行くときは玄関で見送り、帰宅すると真っ先に迎えてくれました。彼女は私に無償の愛と仕事への活力を与えてくれました」

 12才で病に倒れたものの2度生還し、3度目の発作の末、13才で亡くなった。

「彼女は私に心の準備をさせてくれたんだと思います。彼女の入院先に私が到着する10分前に亡くなったのですが、まだ体が温かく目が開いていました。最期に私の顔を見てくれたのです」

 時おり目頭を押さえながらそう話してくれた。翌日には火葬したが、その後も家の中でパールの気配を感じていたという。

「“そばにいるから仕事をしなさい”と、励まされているようだったので、仕事は休まず続けましたね」

ただ座っていることしかできなくなった

 しかしその後、異変が―。

「ハウスキーパーさんから“最近笑わなくなりましたね”と言われて驚きました。仕事では笑顔になれるのに、家に帰ると無表情になり、ソファに座ると何をする気にもなれない。パールの遺影を見ながら、何時間もただ座っていることしかできなくなりました」

 半年後の健康診断で、医師から検査結果が急に悪くなったと指摘される。この頃から両親や獣医、犬を飼っている仲間たちから「次の子を考えては?」とすすめられた。

「なかなかそんな気にもなれませんでしたが…。でもね、パールと同じ犬種の女の子に偶然出会ったんです。その子はなんと、パールが四十九日を終えた直後にお腹に宿った命でした。しかもその新しい子・アイリスは、私の自宅に着くと迷うことなくパールの祭壇へ行き、遺影にキスをしたんですよ。そのときに、この子はパールが贈ってくれたのだと直感しました」

仲間の励ましと新たな縁に救われた

 ペットロスを経験すると次の子を迎えることに罪悪感を覚える人は多い。

「私もそうでした、でもね…」と彼女は興奮したように目を輝かせながら続けてくれた。

「世の中って不思議なもので、自分の力だけで生きているわけではなくて、大きな力の中で生かされていると思うんです。ですから、出会いに対して罪悪感を抱かなくていい。喜びを与えに来てくれたんだと素直に受け入れればいい。そう思えました」

 犬友達からの励ましも大きかったという。飼うとなったら最期までという覚悟はあるが、万が一のときは、友達に相談できる環境にいることもきっかけとなった。アイリスが家族になり、再び“育児”に追われるようになってから、家でも声を出して笑うことが増えたという。

「アイリスは5匹の子供まで産んでくれて、私にこれまで以上の幸福を与えてくれました。もちろん、パールのことは忘れていません。悲しいというよりは、会えなくて寂しいという思いはありますが、だからといって、自分から心を不幸せに向ける必要はない。幸せへの道が開けているなら受け入れ、そこへ導いてくれたパールに感謝する。いまはそういう心境ですね」

 パールはいつもそばで見守ってくれている。そう思いつつ新たな道を歩み出すことが、 亡き愛犬への供養にもなっているようだ。

教えてくれた人

ジュディ・オング

1950年台湾生まれ。歌手、女優、版画家として活躍。2才のときに来日し、11才のときに映画『大津波』でデビュー。代表曲に123.5万枚を売り上げた『エーゲ海のテーマ~魅せられて』(1979年)など。

取材・文/前川亜紀

※女性セブン2021年9月2日号
https://josei7.com/

●安藤和津 「介護うつ」「ペットロス」を脱するまで

●認知症予防も期待できるペットとの暮らし シニア世代が準備すべきこと

●美しく歳を重ねる!自然体で輝くシニアセレブの現在

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