安藤和津 「介護うつ」「ペットロス」を脱するまで
結婚生活37年。夫婦仲は良好で、娘2人は女優、映画監督と大活躍。一見、満ち足りたように見えていた安藤和津(68才)が、うつ病を患っていた。体力がガクッと落ちる60代。それでも長年のクセで家のことを一身に背負ってしまい気づいた時には心が悲鳴―─これって、女性なら誰もが当てはまる話なのかもしれません。
主演映画『SEED』がベネチア国際映画祭(9月1日より開催)に招待され、放送中の連ドラ『ママゴト』(NHK)では、場末のスナックママ役で主演するや「ハマりすぎ」と視聴者が絶賛──。妹の安藤サクラ(30才)が話題を振りまく一方、姉の安藤桃子(34才)は介護ヘルパーを描いた監督作品『0・5ミリ』で上海映画祭の最優秀監督賞、優秀作品賞、優秀脚本賞の三冠を達成。ちなみにサクラの夫、柄本佑(29才)も主演ドラマ『コック警部の晩餐会』(TBS系10月19日スタート)が控えている。
とどまるところを知らない姉妹の快進撃だが、家族に目を向けると、別の側面が浮かんでくる。
サクラと桃子の両親は、俳優兼映画監督の奥田瑛二(66才)と元キャスターでエッセイストの安藤和津(68才)。娘に加えて夫の仕事も順調そのもの、「幸せな芸能一家の象徴」にも見える安藤家だが、近年は異変が起きていたという。
「和津さん、ここのところずっと“うつ状態”というか、気持ちが沈みがちで、引きこもり状態だったんです。たまに公の場に出れば以前と変わらない様子を見せていましたけど、オフになるともう全然ダメで…」(安藤家の知人)
彼女の心身を追い詰めた要因は2つ。最初に襲ったのは「介護うつ」だった。
「和津さんの50代は、母親の介護に全てを捧げたような日々でした。脳腫瘍から認知症が進んだこともあり、日夜問わず母親の排泄処理や入浴の世話に追われていました。
認知症特有の感情の爆発もあり、怒鳴られ、なじられ、意味不明な言動を投げかけられながら、施設にも預けずに何年も自宅介護を貫いたんです。でも、そのうち和津さんにも限界が来てしまった」(前出・知人)
当時、安藤からは喜怒哀楽の感情が消え去り、友人が亡くなっても何も感じなくなっていたという。家族がお笑い番組を見て笑っていても、何が面白いのかわからない。料理もできなくなった。
壮絶介護の末、母は2006年に亡くなるが、彼女のうつ状態は死後もずっと続いたという。安藤は過去にインタビューでこう話している。
《そのあとが大変で…。銀行の通帳とか、家の権利証も、本来あったはずの宝石も着物もなぜかなくなっていました。税金がどっとかかってくるようなものは残されているのに。その後始末は傷に塩をぬり込むようなもので、すべて終わるのに数年かかりました》
安藤を知る芸能関係者もこう証言する。
「もっとああしておけばよかった…っていう後悔や、いなくなってしまった虚無感を抱えてしまったんでしょう。介護うつから脱却に向かい始めたのは、ほんの1年ほど前だと言っていました」