夫が認知症になり財産を法定後見人に握られた74才妻の絶望 後見人への報酬、驚きの額
認知症などで判断能力を失ったとき第三者が財産を管理する「法廷後見人」制度。一見安心のように思える制度だが、後見人に支払う報酬額は驚くほど高い。この制度によって、夫が残してくれた財産が凍結されたも同然になってしまった妻の実例を紹介する。
先の見えない年金に加え、医療費や介護費用など、将来への不安は尽きない。さらにこのコロナ禍で、お金の不安は一層高まっている。
「退職金や年金など、年を重ねてから入ってくるお金の使い方には、若いとき以上に慎重になるべきです」
こう語るのは、老後問題解決コンサルタントの横手彰太さんだ。
年を重ねれば、判断力の低下はどうしても避けられず、大切な老後資金であってもついつい間違った使い方をしてしまいがちだ。
法定後見人に毎月5万円の報酬
銀行口座や不動産の名義人が認知症などで判断能力を失うと、本人に代わって弁護士などの第三者が財産管理を行う「法定後見人」という制度がある。
一見心強いように思えるが、この制度が“執行”されてしまうと、すべての財産は凍結したも同然になる。
兵庫県の芳賀良子さん(74才・仮名)は、いまも法定後見人に財産を握られている。
「昨年、夫が認知症と診断されました。お金のことは夫に任せきりだったので、役所に相談したところ、法定後見人がつくことになったんです。
夫の財産は数千万円ありましたから、弁護士に管理してもらえると安心していたのですが、その後見人に『生活費以外は口座から引き出せません』と言われ、定期預金も解約させられました。
しかも、その後見人に毎月5万円近い報酬を支払わなければならないと言うんです。一度決めたら取り下げることもできないと聞いて、絶望しています」
厚労省の調査によると、80才では3割、90才では半分が認知症を発症しているとされる。
「弁護士や司法書士がお金を管理してくれるなら」と、制度を利用する人もいるが、法定後見人は家庭裁判所の判断で選出され、基本的に後見人は家族の希望を聞き入れることはない。
法定後見人に支払う報酬はこんなに高い!
■後見人への報酬
財産額1000万円以下…月額1万〜2万円
財産額1000万円超~5000万円以下:月額3万〜4万円
財産額5000万円超…月額5万〜6万円
■監督人への報酬
財産額5000万円以下…月額5000〜2万円
財産額5000万円超…月額5万5000円程度
■後見人への ボーナス・報酬
・不動産の売却…70万円
被後見人の療養看護費用を捻出する目的で、その居住不動産を3000万円で売却した場合。
・遺産分割調停…100万円
被後見人の配偶者が死亡したことによる遺産分割協議で、被後見人が2000万円相当の遺産を取得した場合。
・訴訟…150万円
被後見人が詐欺や押し売りなどの被害を受けたとき、損害賠償請求訴訟を提起し、加害者から1000万円を回収した場合。
※家庭裁判所の資料をもとに本誌作成。金額は目安。
財産を守るためにしておくべきこと
「本人の判断能力がなくなる前に、自分の意思で家族などを後見人に指名する『任意後見制度』を利用するか、あらかじめ家族に自分の財産管理の権限を与えておく『家族信託』を利用することをおすすめします。
要介護認定は、75才を過ぎると急激に増える。この時期までに、任意後見制度か家族信託について、家族で話し合っておくようにしてください」(横手さん)
そもそも、認知症まではいかなくても、年を取れば物忘れはどうしても増えるもの。
「キャッシュカードの場所や暗証番号が思い出せなくなった、といったトラブルは多い。元気なうちにすべて書き留めておいて、万が一のときは家族に共有できるように備えておきましょう」(プレ定年専門ファイナンシャルプランナー・三原由紀さん)
教えてくれた人
老後問題解決コンサルタント・横手彰太さん、プレ定年専門ファイナンシャルプランナー・三原由紀さん
※女性セブン2021年6月10日号