公開日:2021.06.11 |暮らし   

今どき“お葬式”の特徴や選び方を解説|オンライン葬儀ほか注目のサービス4選

 コロナ禍で人が集まることが難しい状況のなか、新しい生活様式に対応したシニア向けのサービスも続々と生まれている。そのひとつがオンライン葬儀だ。新たなオンライン葬儀が続々と登場しているが、どんなサービスでどのように選べばいいのか、専門家の意見を聞いた。

僧侶のいるお寺と葬儀場を中継で結ぶ『スマート葬儀』(写真提供/ライフエンディングテクノロジーズ)

コロナ禍で注目の「オンライン葬儀」とは

「オンライン葬儀は、パソコンやスマートフォンなどを使って葬儀に参列できるので、コロナ対策としてはもちろん、体調に不安がある場合や、遠方で斎場に足を運べない人でも故人を偲ぶことができるので、高齢者の人でも参加しやすいですよね」

 こう語るのは、訪問看護ステーションの所長として日々、高齢者の相談に乗っている藤澤一馬さんだ。終活事情にも詳しい藤澤さんに、オンライン葬儀のメリットやおすすめのサービスを教えてもらった。

「コロナ禍において、多くの行事やイベントが中止や縮小を余儀なくされました。毎年巡ってくるものならいざ知らず、お葬式のように生涯に一度しかないものもあります。

 お葬式を振り替えたり、延期したりすることは難しいですよね。ITを活用したオンライン葬儀は密を避けられますし、出席か欠席という2つしかない選択肢に悩まずに済むのもポイントです」(藤澤さん)

「オンライン葬儀」には、大手老舗の葬儀社も続々と参入している。

 一般的な葬儀では、写真や動画撮影がマナー違反となることもあるが、オンライン葬儀の登場により、徐々に常識が変わりつつあるようだ。オンライン葬儀のサービスの中には、メモリアルムービーとして動画を撮影し、配布・販売まで行うものもある。

 以下で、注目の葬儀4つをピックアップ。詳しく解説していこう。

【1】大手老舗葬儀社がオンライン葬儀をスタート

 メモリアルアートの大野屋は、『お葬式オンライン参列』の無料提供を2020年6月から開始。仰々しくならないようにタブレットで定点撮影しながら映像を参列者にライブ配信するという。これは葬儀を依頼した人を対象にしたサービスだ。

 喪主が『お葬式オンライン参列』を希望すると、大野屋スタッフが「お悔やみページ」を作成し、QRコードを発行。そのQRコードを伝えられた人が読み込むとメモリアルアルバムやお葬式のライブ配信を見ることができるという仕組みだ。

 メモリアルアートの大野屋の広報担当者によると、

「1度目の緊急事態宣言のときに多くの方からお問い合わせをいただきました。2021年に入ってからは月に数件、安定してご利用いただいています。

 海外在住を含め、遠方のご親戚の方の参列を諦めざるを得ないケースや、感染症への不安を感じている方、ご高齢で弔問が困難な方も多くいらっしゃいます。

 故人と縁の深い方のために、せめてオンライン上で最期のお別れの機会を持っていただければと、おすすめさせていただいています」という。

■大野屋『オンライン参列』
https://www.ohnoya-funeral.com/news/2020/06/news20200623-01.shtml

パソコンやタブレット、スマートフォンで気軽に参列できる
葬儀場では目立たないようにカメラを設置してくれる(写真提供/メモリアルアートの大野屋)

【2】50年以上の実績を持つ葬儀社の『スマートセレモニー』

 藤澤さんによると、50年以上の実績と300か所以上の葬儀ネットワークを持つセレモニーが手がけるオンライン葬儀『スマートセレモニー』のように、参列者の芳名帳管理や供花、返礼品の手配など葬儀に関するほとんどのことがオンラインでできるサービスもあるという。

『スマートセレモニー』の特徴のひとつが、「ご葬家様専用ページ」を無料で用意してくれることだ。弔問・会葬するためにはご葬家から案内されたQRコードやURLを見て専用ページにアクセスする仕組みだ。

 また、葬儀場に来場する場合も事前に発行されたQRコードを提示することで受付が自動でできるので、香典の受付や芳名帳の記入をする必要がないという。

『スマートセレモニー』を提供しているセレモニー代表取締役の志賀司氏によると、

「ご葬儀に足を運ぶことが難しいと諦めていたご高齢者の方、国内外を含めた遠方にお住いの方、新型コロナウイルスの感染防止の観点から葬儀を諦めていたご遺族の方からお喜びの声をいただいています」という。

 どこにいても会葬できるので、移動が難しい高齢者や入院中の人、遠方に住んでいる、過密を避けたいという人にも好評だそうだ。

■スマートセレモニー
https://www.sougi.info/smart-ceremony/

オンライン葬儀の画面
わかりやすい画面なので操作は簡単
オンラインで葬儀に必要なものを頼める
供花や弔電、香典をオンラインで簡単に手配できる(写真提供/スマートセレモニー)

【3】コロナ禍で問合せ急増中『スマート葬儀』

 葬儀関連のマッチングやポータルサイトを運営するライフエンディングテクノロジーズが2020年6月に提供を始めたのが『スマート葬儀』。

 コロナ禍で問合せが急増し、最近は毎日約100件の問合せがあるという。

 通夜・告別式の様子をオンライン葬儀システム上からリアルタイムで確認できるので、感染を気にすることなく故人を見送れる。

 同社の調査結果によると、コロナ禍に関連して多かった相談内容は、

「新型コロナに身内が感染し亡くなった場合、どのような段取りをすれば良いのか?」というもの。

 こういった声に応えるかたちで、新型コロナで亡くなった方に対応した葬儀プランの案内もしている。

 火葬を行う直送プランでは、防護服や手袋、マスク、ゴーグルを装着した担当者によるご遺体の搬送や非透明過の納体袋へ収納し納棺するなどの対策を行っているという。

『スマート葬儀』を展開するライフエンディングテクノロジーズ取締役の栗本喬一さんは、

「どの業界でも同じかもしれませんが、葬儀業界でもデジタル技術による変革という言葉がコロナ渦において多く聞かれるようになり、エンドユーザーもオンラインに対する苦手意識もなくなっているため、オンライン葬儀の需要は一定数ニーズがあると考えています」

 と、今後の見通しについて語っている。

 利便性の高いオンライン葬儀はコロナ収束後も当たり前の風景として定着していくのかもしれない。

■スマート葬儀
https://smartsougi.jp/

僧侶と中継を結ぶオンライン葬儀
僧侶と葬儀場をオンラインで結んで密を避ける(写真提供/ライフエンディングテクノロジーズ)

【4】料金が明確で地元葬儀社とつなぐ『小さなお葬式』

 オンライン葬儀のほかにも、今注目を集めている葬儀サービスがある。

 元々葬儀価格の比較サイトを展開していたユニクエストの『小さなお葬式』は、2009年に誕生したサービスだ。

『小さなお葬式』は、これまでわかりにくかった葬儀の料金を明確にし、利用者が希望する価格や規模に合った全国一律の5つプランから選んで葬儀を行うことができる。『小さなお葬式』のプランを請け負っている提携葬儀社から選ぶことになる。

 また、状況に合わせて規模を縮小した葬儀ができるサービスもあり、「式をせず火葬のみ」「仏具なしで1~5名程度」「告別式のみを1日で」など人数や金額を選んで決めることができる。

『小さなお葬式』を提供しているユニクエスト広報担当者によると、

「従来の大きな葬儀ではないので、最初は不安を感じる喪主様もいらっしゃいますが、葬儀後の満足度はとても高く、小規模でも十分な葬儀ができた、というお声を頂きます」とのことだ。

■小さなお葬式
https://www.osohshiki.jp/

小さなお葬式のプラン
小規模でも満足度の高い『小さなお葬式』(写真提供/ユニクエスト)

今どき葬儀の選び方・使い方【まとめ】

 コロナ禍でますますニーズの高まるオンライン葬儀をはじめ、新しい葬儀の形が登場する中で、改めて藤澤さんに選び方や使い方の注意点を聞いた。

「オンライン葬儀は、コロナの感染対策としても有効ですが、どんな葬儀にせよ、価格やサービスの内容を事前に確認するなど利用には注意も必要です。

 まだまだ新しいサービスなので、実績などを見せてもらい、信頼できる会社かどうか見極めることが大切です。

 オンラインであっても故人を悼む気持ちには変わりありませんので、こういう時代には活用する価値はあると考えています」(藤澤さん)

教えてくれた人

藤澤一馬(ふじさわかずま)さん

看護師として多くの現場を経験してきた藤澤一馬さん

看護師として100人以上の看取りに携わり、医療的側面以外からの支援をするため訪問看護師へ転職。看取りになる前段階からの準備である「終活」の必要性を感じ、AFP、行政書士国家試験に合格。医療、経済、法律の側面から終活、在宅介護を支援する未来設計サポートMeditの代表、訪問看護ステーションの所長を務めている。

取材・文/ヤムラコウジ

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