全国「大腸環境実態調査」で判明した“快便偏差値” 1位静岡県、47位長崎県の理由
便秘大国ともいわれる日本では、3人に1人以上の割合で「大腸環境」が乱れているという。日本国民の大腸は、いったいどのような状態なのか?47都道府県民1万人超を対象に行われた「大腸環境実態調査」による”快便偏差値”ランキングを発表。調査結果をもとに医師に解説いただいた。
都道府県別「快便偏差値」1位は?
大腸は全身の健康に重要な働きを持つ臓器だが、実際に不調を抱えている人はどのくらいいるのだろう。
森永乳業が行った調査では、「大腸(腸内・お腹)の健康状態に不調はあるか」の問いに、37.3%の日本人が「ある」「どちらかといえばある」と回答。男女別では男性が31.7%、女性42.9%と、女性の多くが実感していることがわかった。
具体的な不調としては、全体の46.3%が「便秘」、29.4%が「軟便・下痢」と回答。女性は「便秘」が58.7%と最も多く、男性の約2倍。男性最多は「軟便・下痢」の44.4%で、女性の約2.4倍だった。
「大腸は全身の健康に深くかかわっており、大腸自身も不調が慢性化しやすい臓器です。大腸に不調があると、肌荒れなど美容面での不調も出てきます。いつまでも美しく、健康長寿でいるためには、日頃から大腸を意識しておくことが、大切だと思います」(みなと芝クリニック 院長・川本徹さん・以下同)
また、このアンケート調査の便秘指標に関する回答を点数化し、都道府県別に「快便偏差値」を算出したところ、
快便偏差値第1位は、静岡県で71.1。
大腸環境の悪化が懸念されるワースト1位は、長崎県で31.3と、実に40ポイントもの差があったのだ。
●快便偏差値1~22位
1位 静岡県 71.1
2位 岡山県 70.3
3位 大阪府 69.3
4位 群馬県 66.0
5位 宮城県 65.1
6位 宮崎県 64.7
7位 栃木県 62.7
8位 和歌山県 60.2
9位 新潟県 59.9
10位 長野県 57.9
11位 北海道 57.1
12位 沖縄県 57.0
13位 福岡県 56.4
14位 岩手県 56.0
15位 東京都 55.6
16位 熊本県 55.2
17位 山梨県 54.4
18位 埼玉県 53.0
19位 香川県 52.7
20位 石川県 52.5
21位 佐賀県 50.7
22位 鹿児島県 49.4
23位 福井県 48.4
24位 滋賀県 48.2
◆便秘の指標
森永乳業が全国47都道府県の20~50代の男女1万1656人(各県248人)を対象に、インターネットで行った「大腸環境」の実態調査。「便秘の指標」は、◎排便回数、〇排便時間帯、◎便のにおい、◎便の形状(硬さ)・色、〇残便感、◎おならのにおい、◎ストレス、◎運動頻度、◎睡眠時間、〇食事の回数、〇朝食の摂取状況、〇水分の摂取状況、〇風邪のひきやすさ(免疫状態)、〇発酵食品の摂取状況。◎は20点満点、〇は10点満点の配点で集計し、偏差値を割り出したもの。
快便偏差値1位 静岡県の理由は?
静岡県と長崎県の違いを比較すると、「排便が毎日ではない状態」と答えた人は静岡県の方が多く、「排便が3日以上ない状態」と答えた人は長崎県の方が多いなど、便秘の捉え方に差があることも判明。
また、静岡県は便もおならも「においが少ない」ランキングで1位に、「毎日朝食を摂取」「風邪をひきにくい」ランキング2位でトップクラスだった。
●快便偏差値1位 静岡県の内訳
便のにおいが少ない 1位
おならのにおいが少ない 1位
毎日朝食を摂取する 2位
風邪をひきにくい 2位
「においが少ないということは、大腸内で善玉菌が優勢で、腸内環境がいいことを示しています。これは食習慣によるものだと考えられます。それに静岡県はお茶処として有名ですが、飲むだけでなく、お茶の葉を食べる食習慣もある。
茶葉にはカテキンなどによる殺菌作用があり、腸内の悪玉菌を減らす効果があることがわかっています。乳酸菌との相性もいいので、腸内環境を改善する効果が高いと考えられます」
ランキング下位県の食習慣とは?
一方、長崎県は「毎日腸スッキリ」と「朝の排便習慣」のランキングで下位に。
●快便偏差値47位 長崎県の内訳
毎日腸スッキリ 46位
朝の排便習慣 47位
睡眠時間がたっぷり 44位
風邪をひきにくい 44位
「やはり、快便のためには毎朝食後に排便するという習慣が重要になります。食生活で考えると、長崎県は全国でも有数のじゃがいもの生産地ですが、じゃがいもには不溶性食物繊維が多いため、食べすぎると便をため込みやすくなる。これが、残念ながら最下位になってしまった遠因かもしれません」
●快便偏差値47~25位
47位 長崎県 31.3
46位 山形県 35.0
45位 愛媛県 35.4
44位 奈良県 35.7
43位 福島県 36.5
42位 岐阜県 38.8
41位 三重県 39.6
40位 山口県 39.8
39位 広島県 40.8
38位 京都府 41.5
37位 神奈川県 41.9
36位 鳥取県 42.7
35位 秋田県 43.1
34位 兵庫県 44.1
33位 愛知県 44.2
32位 徳島県 44.4
31位 大分県 44.6
30位 青森県 45.5
29位 富山県 45.6
28位 茨城県 45.7
27位 島根県 45.9
26位 高知県 46.2
25位 千葉県 47.9
理想的な大便のトップは岡山県
◆理想的な大便 上位県
1位 岡山県 51.2%
2位 宮城県 50.4%
3位 千葉県 49.2%
4位 広島県・沖縄県 48.0%
◆理想的な大便 下位県
47位 北海道 36.7%
45位 青森県・山形県 40.7%
43位 茨城県・香川県 41.1%
理想的な便はバナナ状で、色はこげ茶だといわれているが、便の色や状態では岡山県が 51.2%で、全国一の理想的な大便県となった。岡山県は快便偏差値でも2位になり、同5位の宮城県が理想的な大便県で2位になっていることから、快便には良質な便状態が重要だといえそうだ。
残便感が少ないのは埼玉県
◆残便感が少ない 上位県
1位 埼玉県 29.8%
2位 沖縄県 30.6%
3位 岩手県・東京都・和歌山県 32.3%
◆残便感が少ない 下位県
47位 三重県 46.8%
46位 愛媛県 45.2%
45位 福島県 42.3%
44位 奈良県 41.9%
41位 富山県・岐阜県・島根県 40.3%
たとえ毎日排便があっても、「残便感」があれば快便とはいえない。「残便感があるか」という質問では、埼玉県が29.8%で最も少ない快便県。ワースト1位ではないものの、下位にランクインしている愛媛県、福島県、奈良県は、快便偏差値でもワースト5位以内だ。
「残便感があるのは、直腸に便が残っている状態です。この状態が続くと便はますます硬くなり、排便痛を引き起こし、痔の原因になります。
すでに痔の症状がある人は、痛みのあまり踏ん張り切れず、便が残っていると感じやすい。このことから推察すると、残便感なくスッキリ出せる埼玉県は、痔主が少ないのかもしれません。それに、埼玉県には肛門科が多く、痔の治療で有名な病院が多数あり、気軽に治療にかかれることも、影響していると考えられます」
腸内環境が悪化すると風邪をひきやすい
腸内環境と風邪は、一見関係がなさそうだが、
「風邪のひきやすさも腸内環境をみるバロメーターの1つ」と川本さんは言う。
「腸内環境が悪化すると免疫力が下がるため、風邪をひきやすくなるのです。快便偏差値1位の静岡、3位の大阪は、風邪のひきにくさでは同率の2位。ここからも快便=風邪をひきにくい=免疫力が高いことがわかります。
つまり、快便で腸内環境が良好なら、免疫がきちんと働き、インフルエンザウイルスなどの外敵から体を守ってくれるということ。ヨーグルトなどからビフィズス菌や乳酸菌を摂り、併せて、菌の餌になる水溶性食物繊維をバランスよく摂るよう、習慣づけるといいですね」
腸内環境を整えて便秘を解消し、免疫力を高めることが、まだまだ続くコロナ禍に負けない体づくりには不可欠。快便偏差値が1ポイントでも上がるよう、今日から腸活を始めよう。
教えてくれた人
みなと芝クリニック 院長・川本徹さん
取材・文/山下和恵 イラスト/オカダナオコ
※女性セブン2021年5月20・27日号