「便秘」のタイプを症状で自己チェック!悪化させるNG習慣を医師が解説
腸内環境を整えて健康体を目指す「腸活」がブームだが、腸の不調を訴える女性の半数以上は便秘に悩んでいる。一概に便秘といっても、タイプがあることをご存じだろうか?
長引く自粛生活で便秘の人が増加
年を取るごとに便秘の悩みが深くなる、という声をよく聞くが、コロナ禍による運動不足などが原因で、さらに便秘に悩む人が増えている。
「自粛生活が長引き、ストレスが腸の動きを鈍くし、けいれんを引き起こして便をスムーズに運べなくなり、便秘になる人が増えている」と言うのは、長期療養病床・田中病院院長の田中優子さん。
「在宅ワークで通勤リズムが崩れ、決まった時間に朝食を食べないケースも増え、胃と腸が目覚めず、便意を感じにくくなっている。食生活の改善や腸マッサージなど、さまざまな方法を試しても、効果がないと訴える人も多いですね」(田中さん・以下同)
主な便秘のタイプ
便秘は、大腸がんや腸閉塞などの病気が原因で起きるものがあるが、一般的には3つのタイプに分けられる。
【1】便の通過が遅いタイプ
口から摂った食べ物が大腸を移動して便になる際に時間がかかると、水分が吸収されすぎてしまい、便が硬くなって「弛緩性便秘」になる。これは、活動量の低下で代謝が落ちたことが原因だ。
【2】便の出口が緩まないタイプ
便が直腸から肛門に達すると、肛門が緩んで排便が起こるはずが、なかなか緩まず排便できないのが「直腸性便秘」。老化によって排便に必要な筋肉が衰えた高齢者に多い。
【3】生活習慣が原因のタイプ
忙しくてトイレに行く時間がない、便意を感じてもがまんしてしまうなどの生活習慣による「けいれん性便秘」。これは、ストレスが原因のため、コロナ禍で便秘になった人や、少食のため便の量が少ない人に多い。
症状でわかる!あなたの便秘はどれ?
便秘には種類がある。自分のタイプは何か、以下をチェック!
【1】便の通過が遅いタイプ
□便が硬くてコロコロ
□運動不足
□加齢で筋力が落ちた
□ダイエット中なのであまり食べない
□便意を感じない
□お腹が張って、硬い
→弛緩性便秘
【2】便の出口が緩まないタイプ
□便が硬くて太い
□便意をがまんすることがある
□出口で固まっている
□強くいきまないと出ない
□残便感がある
□座っている時間が長い
→直腸性便秘
【3】生活習慣が原因のタイプ
□便がうさぎのフンのように小さい
□便が細い
□ストレスを感じることが多い
□下腹部に痛みがある
□突然激しい便意を感じる
□便秘と下痢を繰り返す
→けいれん性便秘
高齢になると便秘は男女共通の悩みに
「便秘に悩むのは、男性よりも女性の方が多いのですが、それは女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)に大腸のぜん動運動を抑える働きと、便からの水分吸収を促す作用があるから。60才を超えると男性も便秘に悩む人が増え、80才を超えると男女の差がなくなるという統計があります。これは、加齢によって排便時の肛門や直腸の働きが低下し、直腸性便秘が増えてくるからです。超高齢社会において健康長寿を目指すなら、便秘対策は必須。若くても運動不足が続けば排便力が弱まりますから、注意が必要です」
そんなバナナ!便秘の原因となる衝撃の生活習慣
便秘を解消するために、よかれと思ってしている腸内環境の改善が逆に作用し、便秘を悪化させている場合がある。特に注意したいのが以下の3つの習慣だ。
■野菜サラダで食物繊維をたっぷり摂る
便秘解消には食物繊維が重要だから、野菜をしっかり摂って腸内環境を整えようと考える人は多い。みなと芝クリニック院長の川本徹さんは言う。
「確かに食物繊維は便秘予防に効果があります。ですが、便がたまっている状態でさらに食物繊維を摂りすぎると、腸で消化吸収されずに蓄積してしまうため、便秘が悪化しかねません。特に、レタスなどの葉野菜には不溶性食物繊維が多いので、便秘気味のときにはむしろ控え、バナナよりも、マンゴーやキウイなど水溶性食物繊維を多く含む果物と、ヨーグルトを一緒に摂りましょう」(川本さん)
■朝いちばんにコーヒーやお茶を飲む
腸を働かせるためにも、朝いちばんに水や白湯を飲む人が多い。これは、腸のぜん動運動を促し、朝の排便につながりやすいためだ。
「同じ水分だからと、コーヒーや紅茶、緑茶を飲む人がいるのですが、これらには利尿作用があるため、むしろ、便を軟らかくするために必要な水分が失われてしまう可能性があるのです。やはり、起き抜けには肝臓に負担をかけずに水分補給ができる、水か白湯を飲むのが基本です。コーヒーなどは、朝食の最後に飲むといいですね」(田中さん)
■便秘になる前に、予防として便秘薬をのむ
便秘を恐れるあまり、便秘薬が手放せなくなる人が少なからずいる。特に、市販の便秘薬の大半を占める刺激性便秘薬(腸のぜん動運動を促す)には注意が必要だという。
「刺激性便秘薬は、いわば大腸を無理やり動かして排便させるもの。使い続けると大腸が反応しなくなり、薬の量がどんどん増え、便秘が深刻化してしまう可能性があります。ましてや、便秘ではないのに服用すれば下痢になり、腸が炎症を起こします。その結果、腸から栄養が吸収できず、肌荒れになることも。予防のためなら整腸剤を選び、腸に余分な負担をかけず、腸内環境を整えましょう」(田中さん)
教えてくれた人
●田中優子さん/長期療養病床・田中病院院長
●川本徹さん/みなと芝クリニック院長
取材・文/山下和恵 イラスト/オカダナオコ
※女性セブン2021年5月20・27日号
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