老後、”思い出の品”をどう処分するか 残していいものを見極めるコツ
老後に備えた身辺整理が進んでも、最後まで残ってしまうのは、やはり「思い出の品」だ。人によって、品物も思い出もさまざまなだけに、仕分けも処分も、最も難しい。どういった基準を設ければいいのだろうか。そのまま取っておきたくても場所を取るし、連れ合いや子供にも迷惑がかかる。思い出の品を整理・捨てるための方法を、専門家に取材した。
1.残された人が捨てられるなら残しておいてもいい
「例えば、私にとっての“捨てられない思い出の品”は、医学論文や記事が掲載された雑誌です。段ボール4、5箱分はあって場所を取るのですが、これは自分の人生の軌跡なので、捨てられません。しかし、他人から見れば、ただの紙の束。妻には“自分が先に死んだら燃やしてほしい”と頼んであります」(精神科医・保坂隆さん)
保坂さんは、自分がこの世を去ったあと、残された人が捨てることができるなら、とっておいてもいいのではないか、と話す。その代わり、人形や洋服といった、他人には処分しづらいものは、自分の手で捨てるか、人にゆずった方がいい。
2.写真を撮って“思い出の軽量化”を
「思い出の品は、多くがそのモノ自体に執着心があるのではなく、“海外旅行に行ったときに買った” “尊敬している人にもらった”など、過去の出来事にこだわっていることが多い。
思い出の品を手に持っている自分を写真に撮るなど、モノ自体を手放しても形に残るようにすることで、捨てられるようになることもあります」(保坂さん)
それでも難しいなら、思い切って家の目立つところに飾ってみるといい。
「本当に大切なものなら、そのまま飾りましょう。意外とそれで気が済んで、捨てられることが多い」(片づけヘルパー・永井美穂さん)
3.捨てられないものはグレーゾーン・ボックスで3か月放置
そして、最終手段は、保坂さんがすすめる「グレーゾーン・ボックス」をつくること。とっておくか処分するか白黒つけがたいものを、一時的に保管しておくのだ。
「わが家では、“もう一度思い直す箱”と呼んでいます。決められないものをこの箱に入れて、3か月間、目につくところに置いておくだけ。3か月経ったとき、やっぱり手放したくないと思ったら保管、不要だと思ったらその時点で処分します」(保坂さん)
4.大切なものをまとめて「旅立ちセット」を作る
将来、介護施設に入所することになる場合や、災害などのもしもの事態に備えて、残しておきたいものを「旅立ちセット」としてまとめておくのもいい。
「“人生最後に旅行へ行くとしたら、何を持って行きたい?”と、大切なものをまとめるのをおすすめしています。実際、半分冗談で旅立ちセットをつくっていたかたが急に亡くなられたことがあり、残された娘さんは“旅立ちセットをつくっておいてくれてよかった。母は旅行に行けずに亡くなってしまいましたが、何を天国に持って行きたかったのかは、すぐにわかったので、お棺に入れるものに迷わなかった”と話していました」(永井さん)
5.気持ちに余裕をもって元気なうちに始めよう
「人生最後の片づけ」は、毎年行う大掃除のように、数日で終わるものではない。
「最後の片づけには、3、4年はかかると思ってください。何年もかけてコツコツ増えてきたモノなのだから、コツコツやらないと終わりません。むしろ、“ゆっくりやろう”と思うと、気持ちに余裕ができて、意外と数か月で終わったというケースもある。元気なうちから、気長に取り組むのがベストです」(永井さん)
人生を振り返るように、「最後の片づけ」そのものを楽しみたい。
教えてくれた人
保坂隆さん/精神科医、永井美穂さん/片づけヘルパー
※女性セブン2021年4月22日号