高齢者の片づけで“やってはいけない”4つの注意ポイント|専門家がアドバイス
老後の快適な暮らしに備えて「人生最後の片づけ」と、身辺整理を始めてみたものの、なかなか部屋がすっきりしない…。不要なものを処分した後、残すことを決めたものたちの賢い整理法や片づけの注意ポイントを、片づけヘルパーの永井美穂さんに教えてもらった。
片づけの達人が提案する仕分け術
老後に備え、身辺整理に一念発起。なかなか捨てられなかった思い出の品を処分し、残すと決めたものは、どのように整理すればいいのだろうか。片づけヘルパーの永井さんは、「使う頻度」によってものを一軍、二軍、三軍に仕分けることをおすすめる。
■毎日使うもの → 一軍
■時々つかうもの → 二軍
■季節行事で使うもの → 三軍
それぞれ、該当するものと、整理・収納する場所を確認していこう。
■一軍:毎日使うものは「見えるところに出しっぱなし」
部屋着、湯飲みや茶碗など普段の食器、化粧水や乳液などのいつものコスメ類、ヘアブラシ、常備薬、スマホ、老眼鏡など。
→食器棚のいちばん手前や洗面台の上など、見えるところに出しっぱなしでOK。
■二軍:時々使うもの「手の届きやすいところ」
お出かけ着や帽子、バッグ、傘や長靴などの雨具、来客用のもの、化粧品や日用品のストックなど、必ず使うけれど、その頻度は、一軍よりは低いものや、あったらうれしいもの。
→クローゼットの手前や、押し入れの上段など、手の届きやすいところに。
■三軍:季節や行事で使うもの「奥のほうにしまう」
重箱やおとそセット、浴衣、礼服、松飾りやリース、ひな人形や五月人形など、使用頻度は低いけれど、季節やイベントによって必ず使うもの。
→二軍と同じ場所の奥のほうにしまっておく。
人生最後の片づけで”やってはいけない”4つの注意ポイント
片づけるときに注意すべき4つのことをまとめた。
1.ものを天袋や床下収納にしまい込んではいけない
永井さんは、天袋や床下収納にしまい込むのは避けたほうがいいという。
「階段を使ったり、腰を屈めたりする必要がある場所にはしまわない方がいい。もっと年を取ってからけがの危険があります。また、長年しまい込んでいると忘れてしまい、いつか使うはずだと思っても、結局日の目を見ないことが多いのです」
2.転倒事故を防ぐためにも散らかったままにしない
「人生最後の片づけ」において、重要なことはもう1つ。「家の中での事故を防止すること」だ。永井さんは、自宅で起こる事故で最も多いのは転倒だと話す。
事実、2020年10月8日の発表によれば、消費者庁に寄せられた65才以上の高齢者の転倒事故情報のうち、最も発生件数が多かったのは、外出先ではなく、住み慣れたわが家だった。その割合は半数近く(48%)にのぼっている。
「自宅が散らかっていると、動線が限られるほか、視野が狭くなって転倒が増えます。結果、入院し体力が衰え…と、健康で明るい晩年とは程遠くなります。家の中ですら動くのがおっくうになり、体を動かさなくなれば、認知症にもつながります」(永井さん・以下同)
3.家具以外のものは床に置いてはいけない
ただでさえ家に引きこもりがちな高齢者は、家の中を安全な環境に整えることは不可欠だ。それには、「家具以外のモノを床に置くこと」と、「モノを積み上げること」を避ければいい。
「つまずきを避けるため、家具以外のモノは極力、床に置くことは避けてください。段ボールや本などを積み上げると、地震があったときに危ないのはもちろんのこと、少し崩れるだけでも動線が塞がり、家の中の通路が“けもの道”のようになってしまう。
危なくて動きにくいので、どんどん動くことがおっくうになっていくんです。“家が散らかっていて危ないから”と、一日中ベッドの上でなんでもするようになってしまったら、認知症まっしぐらです」
4.テーブルやたんすは減らさなくていい
しかし、単純に部屋を空っぽにすればいいということではない。
「家具やテーブル、たんすなどは手すりの代わりになるので、なくしたり、減らしたりしてはいけません。部屋の入口からソファまでの道のりにたんすを配置するなど、片づけと同時に、生活動線をサポートするような位置に模様替えしてみるといいでしょう」
教えてくれた人
永井美穂さん/片づけヘルパー
※女性セブン2021年4月22日号