鈴木登紀子さん追悼・胸に刻みたい“遺言レシピ”|肉じゃが、おでん、ライスカレー…
NHK『きょうの料理』に40年以上出演し、和食の魅力を伝えてきた料理研究科、鈴木登紀子さんが昨年末に逝去した(享年96)。いくつもの著書で教えてくれた和食の魅力、家庭料理の大切さを、私たちはずっと忘れない――。鈴木登紀子さん が遺してくれた”料理きほんのき”、珠玉のレシピをご紹介する。
“ばぁば”の愛称で親しまれ、女性セブンでも長きにわたる連載で料理エッセイを綴り、いくつものレシピを教えてくれた日本料理研究家の鈴木登紀子さんが、2020年12月28日、肝細胞がんのため96才で亡くなりました。
生涯現役料理研究家として、「食べることは生きること。おいしく食べることは元気に生きること」と、旬の食材を丁寧に料理することを伝え続けた半世紀。ばぁばが遺してくれた“命を育み、心を温める”おふくろの味をお届けします。
肉じゃが
「弱火で煮てはダメよ。じゃがいもが割れて崩れます。調味は足し算。こまめに味をみるのですよ」
<材料・作り方>(4人分)
【1】牛切り落とし肉300gは食べやすく切ってほぐす。じゃがいも大4個(600g)は4等分に切って皮を薄くむき、水に放してざるにあげる。玉ねぎ1個は縦半分に切って芯を取り、繊維に沿って1cm幅に切る。
【2】鍋にサラダ油大さじ2を弱火で熱し、濡れ布巾にのせて鍋底を冷ます。牛肉を入れ、中火にかけて炒める。玉ねぎ、じゃがいもの順に入れてさらに炒める。
【3】薄めのだし3カップ、酒・しょうゆ各大さじ3、砂糖大さじ4、みりん大さじ1、塩ひとつまみを加えて強火にする。煮立ったら中火に落として丁寧にアクを引く。
【4】落とし蓋をして、じゃがいもがやわらかくなるまで14~15分煮る。
★肉じゃがのコツ
煮立ちがきても火を弱めずに、どんどん出るアクを辛抱強く引くことが最大のコツ。
おでん
「具材はひと口大に食べやすく切り揃えます」
<材料・作り方>(作りやすい量)
【1】大根は1.5cm厚さの輪切りを6つ用意する。皮をぐるりと薄くむき、面取りをして片面に十字の裏包丁を入れる。鍋に米のとぎ汁を8カップ入れて大根を水からゆで、やわらかくなったら水で洗いざるにあげる。
【2】さつま揚げなどの揚げものは熱湯をかけて油抜きをし、四角い材料は斜め三角に切って2等分する。
【3】こんにゃく1/4枚は水から10分ほどゆでて水に取り、厚みを半分に切ってひと口大の三角形に切る。揚げボールとともに串に刺す。
【4】早煮昆布9cmは幅2cmに切り分けて結び、焼き豆腐は食べやすい角切りにする。
【5】鍋にだし8カップを入れ、頭と内臓を除いた焼き干し(または煮干し)8本を加える。酒大さじ3、塩少量、薄口しょうゆ大さじ4を入れて煮立て、大根を加えて弱火で7~8分煮る。昆布以外の具材をすべて入れて20分ほど中弱火で煮る。
【6】昆布を入れて火を止め、冷めるまでそのままおく。
【7】食べるときに温めて器に盛り、溶きがらしを添える。
★おでんはだしと薄口しょうゆで炊いた「茶飯」と一緒に
「おでんは熱々がおいしいから器も熱湯につけて温めておきます。冷たいお料理には、あらかじめ器も冷蔵庫で冷やしておきましょう」
→追悼・鈴木登紀子さんが愛した食と旅の話|英国紳士とロンドンで…
かつおだしのとり方(3カップ分)
「おだしとやさしい調味は和食の基盤です。手順さえ覚えれば、誰でも簡単においしいだしがとれます。かつおの削り節だけで充分です。お料理の味がぐんと上がりますから、ぜひ習慣にしてください」
【1】削り節を大きくひとつかみ入れる
3カップの水を鍋に入れて火にかける。沸騰したら大きくひとつかみした削り節を入れる。
【2】煮立ったらアクを引く
ふたたび煮立ったら弱めの中火にし、アクを引きながら2分ほど煮て火を止める。
【3】ゆっくり冷ます
そのまま削り節が鍋底に沈むのを待つ。
【4】こす
布巾を敷いたざるをボウルにのせ、だしを静かに流し入れてこす。
調味料の「さしすせそ」
「さ」(砂糖・酒)、「し」(塩)、「す」(酢)、「せ」(しょうゆ)、「そ」(みそ)。これは調味の順番を表した語呂合わせで、たとえば分子が大きい砂糖は具材へのしみ込みに時間がかかるため、最初に加える。
→「死ぬまで笑って現役」を貫いた、ばぁばの美学とおひとり様ごはん
ほうれん草のおひたし
しっかり絞るのがおいしさの秘訣。
<材料・作り方>(作りやすい量)
【1】ほうれん草1束(200g)は水洗いし、根元に包丁で十字に切り込みを入れる。鍋に湯をわかして塩少量を加え、ほうれん草を2~3株ずつ根元から入れて、一度返してすぐに冷水に放す。水の中でふり洗いし、水気をよく絞る。残りの株も同じようにする。
【2】バットにだし汁1カップ、酒大さじ1/2、薄口しょうゆ大さじ1と1/2、塩少量を入れる。2~3cm長さに切ったほうれん草をひたし、冷蔵庫で30分ほど冷やす。
【3】器に盛り、糸がき(焼きのりをちぎったものでもよい)をたっぷりとのせる。
★おひたしのコツ
「おだしにひたすひと手間が入るから“おひたし”なの。しょうゆをかけただけでは『ゆでほうれん草のしょうゆがけ』ですからね。お間違えないように」
さやいんげんのごまよごし
さやいんげんの代わりにほうれん草で作っても美味。
<材料・作り方>(作りやすい量)
【1】さやいんげん200gはよく洗い、塩少量を加えた熱湯でゆでる。ざるにあげ、うちわであおいで粗熱をとり、天地を落として長さ3cmに切り揃える。薄口しょうゆ少量をふりかけ(しょうゆ洗い)て下味をつけておく。
【2】「和え衣」を作る。すり鉢で黒ごま大さじ3を香りが立つまでよくする。味をみながら砂糖大さじ1と1/2、酒大さじ1/2、しょうゆ小さじ2、塩少量を加えて混ぜる。
【3】さやいんげんに和え衣をよくまぶし、冷蔵庫で冷やす。
お千代さんのライスカレー
母・お千代さんから受け継いだ100年レシピ。
<材料・作り方>(4人分)
【1】豚バラ肉300gは食べよく切る。
【2】じゃがいも3個(400g)、にんじん1本(100g)、玉ねぎ2個(200g)は皮をむき、7~8mm角に切る。じゃがいもとにんじんは水に放し、ざるにあげて水気を切る。
【3】鍋に【2】を入れ、水5カップを張る。ローリエを加えて強火にかける。煮立ったら豚バラ肉とカレー粉大さじ1を入れ、中弱火にしてアクを引きながら野菜がやわらかくなるまで煮る。
【4】水溶き小麦粉大さじ4を少しずつ加え、木ベラでよく混ぜる。塩小さじ3、砂糖大さじ1/2、酢・しょうゆ・ウースターソース・トマトケチャップ各大さじ1、こしょう少量、さらにカレー粉大さじ3を入れ、味をみながら調味する。
【5】大きめの皿にご飯を盛って【4】をたっぷりかけ、福神漬、らっきょう、プチトマト適量を添える。
★ライスカレーのコツ
ご飯とのなじみもよいサラサラのカレー。すべての具材がスプーンにのるよう、野菜は小さな角切りに揃える。
まぜまぜごはん
忙しいときや晩酌の〆に。「ちゃちゃっと作れて栄養満点」
<材料・作り方>(4人分)
【1】炊きたてのご飯2カップを飯台(あるいはボウル)にあけてしゃもじでほぐす。
【2】種を除いて包丁でたたいた梅干し(大1個)、もみのり全形1枚分、白ごま大さじ5、ちりめんじゃこ50gを加え、飯台を回しながらさっくりと混ぜる。
【3】器にふんわりと盛って、木の芽などをあしらう。
覚えておきたい”ばぁば”の言葉:食卓でのお作法
「折敷(おしき)かランチョンマットと箸置きは家族分用意していただきたいの」
「どんなときでも飯碗は向かって左、汁椀は右に配して」
「『いただきます』の後にまず手に取るのはお茶碗」
「大皿料理やお漬けものには必ず取り箸と小皿を添えましょう。直箸はいけませんよ」
「手を添えて食べるのは不作法の極み。小皿あるいはお椀の蓋でもよいですから、器をお使いくださいね」
→「死ぬまで笑って現役」を貫いた、ばぁばの美学とおひとり様ごはん
撮影/近藤篤
※女性セブン2021年1月28日号
https://josei7.com/
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