脳卒中・心筋梗塞が危ない場所3つ|玄関先、寝室、あと1つはどこ?
玄関の中と寒い外、温かい布団の中と冷えた室内――冬場は、気温差による事故に注意が必要だ。脳卒中や心筋梗塞のリスクがある場所を確認しておきたい。その予防策も含め専門家に話を聞いた。
【1】玄関先…薄着でいきなり外に出るのは危険!
会社員の伊藤暁子さん(仮名・43才)は、昨年の冬、玄関先で倒れた母親を発見した。
「明け方、玄関先で大きな物音がしたので飛び起きたら、母が玄関先で倒れていたんです。ポストから新聞を取るだけだからと薄い寝間着のまま外へ出たことで、血圧が急激に上がったようです。幸い無事でしたが、打ちどころが悪かったらと思うとゾッとします」
平成横浜病院健診センター長の東丸貴信さんは、狭心症を抱える日本人女性は、特に注意が必要だと説明する。
「いきなり冷たい外気に触れると、交感神経の興奮で血管が縮み、血圧が急上昇します。なかでも、日本人女性の狭心症の4割くらいは、冠動脈がけいれんによって細くなってしまうタイプ。寒さによる刺激を受けやすく、心筋梗塞になるリスクも高いです」(東丸さん)
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◆散歩やジョギング時も油断大敵
朝の散歩やジョギングが習慣の人も、冬場は注意したい。「汗をかくのが嫌だから」と薄着で出かけると、取り返しのつかないことになる可能性がある。
「高齢になると、血圧が高くなるだけでなく、上と下の数値の差が開いてきます。50mmHg以上の差がある人は、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすい。急激な気温の変化だけでなく、長時間、寒いところにいるのも血管にはストレスになります。いきなり薄着で外へ出るのではなく、暑くなったら上着を脱ぐようにした方がいい」(東丸さん)
外出の際、冷えやすい首や胸の前をマフラーやストールで覆うと効果的だ。家を出る前にウオーミングアップで体を動かしておくのもいい。体が温まるため、急激な血圧の上昇をやわらげる。
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【2】寝室…布団から起き上がった時が危ない!
また、冬の朝は室内も油断大敵。特に寝起きは立ちくらみを起こして転倒しやすいという。
「布団の中は体温と同じくらいの温度があります。そこから急に起き上がると、背中が一気に冷え、ヒートショックを起こしかねない。
また、一日で最も血圧が低い朝は、立ち上がるときに頭に血が上りにくく、ふらつきやすい。危険を避けるため、ゆっくり起き上がるのはもちろんですが、寝起きはタイマーなどで事前に部屋を暖めておき、フリースなど体温を逃がしにくい素材の上着をすぐ羽織れる場所に置いておきましょう」(前田さん)
【3】トイレ…深夜のトイレでいきんだ時が怖い!
さらに、もう1つ危険スポットとして注意したいのが「トイレ」だ。冬の朝や深夜のトイレは脳に危険が及びやすい。東丸さんが指摘する。
「体が冷えた状態で寒いトイレでいきむと、それだけで血圧が60~70mmHgくらいアップするといわれています。たとえば血圧140mmHgの人は、寝ているときは血圧が低下して110~120 mmHgくらいになっていますが、起き抜けにトイレでいきむと200mmHgくらいに急上昇する。脳卒中や脳梗塞などのリスクが高まります」
個室であるトイレは、倒れていても気づかれにくい。風呂場同様、温度差をできるだけ少なくするのが得策だ。
「トイレにも暖房を置くのがベスト。難しい場合はトイレに行くときもダウンなどの上着を着て、首元にマフラーを巻く。家の中だからと甘く見てはいけません」(東丸さん)
「もったいない」と暖房をつけることをケチったり、「めんどくさい」と薄着のまま活動するのはご法度。対策はオーバーなくらいでちょうどいい。
教えてくれた人
東丸貴信さん/平成横浜病院健診センター・センター長、前田眞治さん/国際医療福祉大学教授・温熱医学
※女性セブン2020年12月10日号
https://josei7.com/
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