猫が母になつきません 第229話「さしば」
母は総入れ歯ではありません。歯並びはよくないのですが歯自体は丈夫なのか、高齢になってもけっこう自分の歯が残っていました。しかし80歳を越えると抜けたり折れたりする歯がでてきて、ここ数年で差し歯や部分入れ歯が増えました。そうなると歯並びの悪さが治療を難しくしているのか、差し歯がよく取れてしまう。母が通っている歯科の先生は母と同年代で、ゆうに80歳は超えられているはず…それもどうなんだろうと不安に思ったりして医院を変えたこともあったのですが、母はやっぱりあそこがいいと言ってもとの先生のところへ。高齢者はなんでも変えるのをいやがりますし、病院選びというのもなかなか難しい。母は寝てる間に取れて飲んじゃったかもと言っていましたが、家の中にないということはたぶん庭で畑をいじっているときにでも落としてしまったのだと思います。外で見つけられる気もしないのでもう「飲んだ」ということに。自分で導いた結論が一番納得しやすい。ちなみに私は生まれつき上の永久歯が2本足りません。母のお腹の中に置いて来てしまったのでしょうか。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。