専門家に相談できる新しい“介護食”コンセプトカフェ
高齢者が安全に、おいしく食べ続けられるように、新しい介護食の提供をめざしているカフェを取材した。介護する家族も一緒においしさを味わえるスイーツも人気だ。
明るい店内はまるでおしゃれなカフェ
ガラス張りの明るい外観や白木張りの床、カラフルなケーキが並ぶショーウインドー。一見すると、そこが介護と関係ある場所だとは思えないが、そこは、介護で起こる“食べること”の悩みや口腔ケアについて相談もできる、歯科医療や栄養管理の専門性がベースにあるカフェ、「Kamulier(カムリエ)」だ。
東京・お茶の水駅から徒歩7分ほどのところ、順天堂大学医学部附属順天堂医院裏手にあるその店は、「介護食」を中心に、ケアの情報や商品を揃えているが、一般の人がお茶を飲むことや、ランチで利用することもできる。
「介護中のお客様には、これまでの介護食のイメージとは少し違う、ご家族一緒に召し上がっていただけるスイーツや介護食作りの工夫を提供し、市販の介護食品のご紹介もしています。介護食というと、見た目や味がよくないものとイメージする方が多いかもしれませんが、この頃はおいしそうで、実際においしい市販品がたくさん発売されるようになりました。スーパーや、ドラッグストアでも取り扱っていますが、売り場を見つけづらい、最初は選び方が分からない等の声も多く、当店では、歯科衛生士や管理栄養士など資格をもったスタッフがご相談にのっています」
とKamulierの店長、志水香代さんは語る。
「介護に関係ない方にも、進化している介護食を知る機会として、また、ご家族などが食べることで困ったときには、このように相談できる場所があると知っていただきたいので、一般のお客様も利用しやすい雰囲気と、メニューをご用意しています」(志水さん)
生活習慣病予防のカフェメニューや定番の焼き菓子などもあり、自分の健康づくりに利用するリピーターも増えているという。
有名パティシエと口腔専門医のコラボでケーキを開発
Kamulierが提案している介護食のコンセプトは「家族みんなで、一緒に食べられるもの」ということで、それが叶うケーキ「イージースイーツ」は特に人気だ。
「イージースイーツは、Kamulierで取り扱う介護食品の監修をお願いしている日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック・菊谷武院長より『高齢者から“ケーキが食べたい”という声は多いが、高齢者は飲み込みの障害(嚥下障害)がある場合が多く、普通のスポンジケーキは食べにくい』と聞いて開発したものです」(志水さん)
『モンサンクレール』オーナーパティシエ・辻口博啓さんに相談したところ「障害のある方にも食べたいものを食べ、喜びを感じてほしい」と、自ら、菊谷院長から嚥下障害について情報提供を受け、障害のある人もむせずに食べられるスポンジとレシピを工夫したという。
「見た目は、カラフルな普通のケーキです。一般の方も嚥下障害のある方も、ご家族一緒に食べられて、口どけがよく、みずみずしくておいしいと評判です」(志水さん)
「イージースイーツ」は、辻口さんが開発した4種のケーキ「キャラメル×ボワール」「まっちゃ×ショコラ」「フランボワーズ×ライチ」「マンゴー×パッションフルーツ」のほか、Kamulierオリジナルケーキと季節の和スイーツがあり、常時5~8種をイートインでき、テイクアウトもできる(各400円/ハーフサイズ200円)。
また、辻口さんの「マンゴー×パッションフルーツ」と「まっちゃ×ショコラ」、Kamulierオリジナルの「ショートケーキ」「モンブラン」「梅チーズケーキ」はお取り寄せもできる(各1パック5切入り2000円送料別 一部地域除く)。
家庭や介護施設での誕生会、敬老会などから注文があり、喜ばれているという。