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健康

マスク生活が招く危険な口呼吸を鼻呼吸に戻す「舌回し体操」&「鼻トレ」

 今までにないほど長期的にマスクを着用せざるを得ない状況の中、マスクで鼻呼吸がしづらいことから、口呼吸になってしまう人が増加。それによる弊害が懸念されている。

→「マスクで口呼吸」の弊害 免疫力低下、扁桃腺炎…認知症を招くことも

口呼吸が招くさまざまな弊害とは?

 自然の摂理に反した口呼吸は、さまざまな病気のリスクを上げることが最新の研究によって明らかになってきた。東京有明医療大学学長で呼吸神経生理学が専門の本間生夫さんが言う。

「鼻から息を吸うのは、鼻には外部から体を守る機能があるからです。鼻毛や鼻の粘膜は異物が体に入るのを防いでくれるし、鼻から吸った空気は、適度に加湿・加温されて体内に取り込まれます。一方、口呼吸をすると、異物や乾燥した冷たい空気が、体内にダイレクトに入ってきてしまいます」(本間さん)

 鼻というフィルターを通さずに空気をそのまま吸うことによって、口臭や歯周病など口内環境が悪化することやウイルスへの免疫力の低下が指摘されている。

 一見、口やのどに直接関係ない病気も口呼吸が理由になるケースがある。本間さんは、慢性的な口呼吸をしている人は鼻呼吸の人よりも認知機能や記憶を想起する力が弱くなると指摘する。

注目すべきは呼吸中の舌の位置

 とはいえ、呼吸は基本的に無意識に行うもの。知らず知らずのうちに続けてきた口呼吸を、どうすれば鼻呼吸に変えることができるのだろうか。みらいクリニック院長で内科医の今井一彰さんは「口回りの筋肉を鍛えてほしい」とアドバイスする。

「舌はほとんどの部分が筋肉でできており、実は150~200gもの重さがあります。根元で骨とつながっていますが支えがないため、舌の筋力が低下すると、だらりと下がった状態になってしまう。これを『落ちベロ』といい、この状態になると口を閉じたままでは舌の重さを支えられなくなり、無意識に口を開いてしまう。その結果、口呼吸になるのです。

 一度、口を閉じているときの舌の位置を意識してみてください。舌が上あごにべったりとついていなければ、『落ちベロ』の状態になっているということです。しっかり舌を鍛えて、常に上あごにつけておけるようになると、鼻呼吸をしやすくなります」

舌回し体操のやり方

 舌の筋肉を鍛えるために今井さんが提唱するのが「舌回し体操」だ。

「舌を口の中で動かすことによって、鍛えることができます。マスクをしたままで、いつでもどこでも実践できるためおすすめです。唇の内側と歯の間に舌を入れて、ほうれい線を押しのばすような感じで、上下左右にグルグルと回してみてください。体操をしながら、舌の位置を意識し、鼻から深く息をすることも大切です」(今井さん)

 ただし、無理は禁物だ。

「気温が高く、暑くて息が苦しいときは口呼吸に切り替えたり、マスクを外したりしてください。ただでさえ暑いこの時期に、気温とマスクで体温が上がっているのにもかかわらず鼻呼吸を続ければ、熱中症のリスクが大幅に上昇するため、危険です。汗でマスクが張りついて息をしづらいときも同様です」(今井さん)

『1分で体がすっきり生き返る鼻トレ!』著者で、ヨガインストラクターの深堀真由美さんは、鼻の機能を高め、スムーズな鼻呼吸を促す「鼻トレ」(図参照)を紹介する。

鼻機能を高める「鼻トレ」実践法

右手の親指を右の小鼻に、中指を左小鼻にあてた女性のイラスト
 右手の親指を右の小鼻に、中指を左小鼻にあてて両方の鼻を閉じる。ほかの指は軽く添えること。
 
右手の親指を右の小鼻に、中指を左小鼻にあて、右の鼻で呼吸する女性のイラスト

 そこから親指の力を緩めて、右の鼻孔から息を2回に分けて吐き、吐ききったら2回に分けて吸う。息をしっかり吐ききるのがポイント。

右手の親指を右の小鼻に、中指を左小鼻にあて、左の鼻で呼吸する女性のイラスト

 終わったら右の鼻孔を閉じ、左の鼻孔も中指の力を緩めて同じように息を吐いて吸う。これを3~5回繰り返す。1日に1~3セット行うといい。

 行うときは鼻から吸って鼻から吐くのがベストだが、苦しければ、最初は鼻から吸って口から吐いてもいいという。深堀さんが言う。

「息を吸ったり吐いたりするスピードは自分が心地よいと感じるリズムで行ってください。口呼吸に慣れていた人は最初は違和感があったり、少し苦しくなったりすると思いますが、ゆっくり取り組んで少しずつ慣れていってください。

 余裕があれば、舌の先を上あごにくっつけて、舌の位置を意識しながらやると効果的です。右左、それぞれの鼻の通りをよくしていけば、鼻を使うという感覚を体が覚えてきます。片鼻で呼吸してはじめて、『右の鼻がつまりやすい』といった不調に気づくこともある。普段の生活でも、1日に1回は舌の先を上あごにくっつけて、鼻呼吸を意識できるといいですね。鼻呼吸になれば、いびきも解消されます」(深堀さん)

舌の筋肉や口回りを鍛える食材

 食べ物をしっかり咀嚼するのも、舌の筋肉や口回りを鍛えるのに有効だ。「ステイホームでパンや麺類ばかり食べるのは避けてほしい」と今井さんは言う。

「実は咀嚼力が落ちた高齢者にも、口呼吸の人が多い。ブロッコリーやきゅうりなど硬めの野菜をサラダにしてかじったり、料理の具材をあえて大きめにカットしたりして、噛む力と回数を増やせるように工夫してみるといいですね。するめいかなど乾燥した硬いものをゆっくり咀嚼するのも、口回りの筋肉を鍛えるのにおすすめです」(今井さん)

フィルターの役割をする鼻。お手入れしすぎに要注意

 無意識だが、生きるために欠かせない呼吸。成人の呼吸回数は、1分間に15回程度。つまり、1日に2万回以上呼吸をしていることになる。

「風邪や花粉症でつまったり不調を感じたりしなければその重要さを忘れがちな鼻ですが、心臓と同じでフル稼働している大事な器官です。この機会に鼻の重要さを知って、鼻からの呼吸を大事にしてほしい。また、鼻毛はフィルターの役割も果たしているので、お手入れのしすぎもよくありません。ウイルスを体内に侵入させないためにも、少しは残して」(深堀さん)

 鼻息荒く、取り組みたい。

教えてくれた人

今井一彰さん/みらいクリニック(福岡市)院長。内科医。口呼吸を鼻呼吸に改善していく簡単な口の体操「あいうべ体操」の考案者。

深堀真由美さん/ヨガインストラクター。著書に『1分で体がすっきり生き返る鼻トレ!』。

※女性セブン2020年7月23日号
https://josei7.com/

●浅い呼吸が病気を招く|IT猫背で細胞の酸欠に!チェックリスト 

●腰痛、肩こり、不眠に効く「究極の呼吸術」で健康寿命を10年延ばす

●肩こり・老眼・息切れ・不眠…不調を改善する呼吸法7つ|息苦しい、だるいは「隠れ酸欠」が原因かも

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