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【渋谷区】注目の介護付有料老人ホーム、特別養護老人ホーム【まとめ】

 施設や評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。

 東京23区の西南に位置する東京都渋谷区。「渋谷」と聞くと、スクランブル交差点やハチ公前の賑やかさをイメージする人が多いかもしれないが、実は緑が多いという顔も持っている。明治神宮や代々木公園、新宿御苑の一部を加えると、全体の10分の1を緑地が占めているそうだ。渋谷区の2018年度末の高齢化率(総人口に占める高齢者人口の割合)は19.03%で、前年同時期と比較すると0.18%減少している。一方で、施設サービスの受給者数は2018年3月末の731人から2019年3月末には815人と増加しており、区は小学校の跡地を転用するなど、高齢者向けの施設の整備に取り組んでいる。そこで今回は、渋谷区にある介護付有料老人ホームと特別養護老人ホームを紹介する。

ワンストップサービスで地域の介護ニーズに応える総合福祉施設「渋谷区つばめの里・本町東」

 渋谷区つばめの里・本町東は、渋谷区基本構想の福祉分野の未来像である「あらゆる人が自分らしく生きられる街」の実現のために、高齢者が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを営めるように整備されたという。施設の持ち主は区で、社会福祉法人カメリア会が運営を委託されている。地上5階・地下1階の建物には特別養護老人ホーム(以下、特養)を中心に、グループホーム、ショートステイ、在宅療養支援ショートステイ、デイサービス、トレーニング室、多目的ホール、地域包括支援センターが入っており、地域の高齢者を支える拠点として申し分のない機能が揃っている。

「地域のニーズに合ったサービスを提供しています。ワンストップでサービスを提供できるので、こちらにいらして頂ければ、高齢者の介護に関わる基本的なことには対応できます。在宅の方向けのショートステイとデイサービス、認知症でお体がお元気な方にはグループホーム、そして身体的機能が低下してきている方には特別養護老人ホーム。複合型の施設なので、それぞれの方の状態に合ったサービスを受けることができます」(施設長の山匠さん。以下、同)

 こちらの施設を利用するためには、要介護認定を受ける必要がある。こちらの1階には、別法人が運営をしている地域包括支援センターがあり、高齢者福祉と介護保険サービスの相談や手続きを行える。ただし、こちらの担当地域が渋谷区本町と決まっているように、住んでいる地域によって相談する場所が決まっているので、事前に確認しておくことが必要だ。

 この地には元々、本町東小学校があり、その跡地に2015年から建設が進められた。施設の入居者や利用者を含めた地元住民の期待に応えるため、地域に開かれた運営を意識しているという。

「ご家族やご友人が訪問しやすい環境を作っています。毎日お越しになる方もいらっしゃいますね。地域の方々との交流を活発にすることで、人的な断絶が起こらないようにしているので、特養やグループホームのご利用者はこれまでの生活を継続させやすくなります。認知症の方は環境の変化によって症状が出てしまう場合もありますので、そういったことをできるだけ軽減させることも目的の一つです」

 地下に設けられた多目的ホールは地域住民からの意見を反映させて、小学校の体育館をイメージして作られたという。日常的に地域に貸し出され、スポーツなどに利用されているそうだ。もちろん、施設の利用者のためにも活用されており、夏祭りやクリスマス会などの行事に使用されている。夏祭りでは地域の住民が模擬店を出したり、盆踊りを開催するなど、一体となって交流を深めたという。

 体育館だけではなく、水道設備やロッカーも小学校を思い出させるようなデザインのものを使っている。そして、小学校に飾ってあった卒業制作は実物をそのまま移設している。それを見て懐かしむ地域住民も多いという。

「こちらの地域の町会は活発に活動されていて、防災への意識も高いです。災害時の避難所にもなっているので、地域の方々と一緒に避難訓練も行っています」

 いかがだっただろうか。総合福祉施設、そして防災拠点として地域の期待を集めている渋谷区つばめの里・本町東。期待の高さは各サービスの利用率の高さにも表れている。渋谷区在住の人はもちろんだが、地域交流のイベントなどの機会を捉えて、将来のために自分の住む地域に総合福祉施設があれば、足を運んでおくのも良さそうだ。

→ワンストップサービスで地域の介護ニーズに応える総合福祉施設<前編>
→多職種が連携してチームケアを実践している総合福祉施設<後編>

4つの基本ケアとリハビリで自立支援に取り組む介護付有料老人ホーム「アライブ代々木大山町」

 閑静な高級住宅街として知られる渋谷区大山町。この地に2017年10月にオープンしたのが、セコムグループの一員である株式会社アライブメディケアが運営する「アライブ代々木大山町」だ。 落ち着いた住環境にありながら、小田急線・東京メトロ千代田線「代々木上原」駅、京王新線「幡ヶ谷」駅・「笹塚」駅の4路線が徒歩圏内。都心までのアクセスもよく、駅周辺には飲食店なども多いので生活もしやすい。

 ここでは、自立支援に関わる基本ケアの1つである運動量の確保にも力を入れている。そのために体操などの運動メニューが豊富に準備され、アクティビティや趣味の活動も活発に行われている。運動機能の維持・向上を図るだけではなく、入居者が理想とする生活を実現すること、自立心を向上させることまで目標にしているという。

「最大45名という規模のホームなので、常勤の理学療法士がお一人おひとりの身体の状態を把握しやすくなっています。理学療法士が機能訓練のメニューを作り、介護スタッフと連携して実施しています」(アライブ代々木大山町・ホーム長の鈴木達哉さん 以下「」は同)

 暮らしの動作に直結することを重視し、生活リハビリにも力を入れているそうだ。介護スタッフがその意義を理解し、積極的に取り組んでいる。

「トイレで立ったり、座ったりする。ズボンや下着を自分で下ろす。それもリハビリです。部屋からリビングに移動する際に、今までは車椅子だったのを歩行器に変えることも生活の中でのリハビリです」

 このような取り組みが成果をあげているのには理由がある。それは、介護福祉士の資格保有率の高さだ。アライブメディケア全体で、介護スタッフのうち、なんと71.1%(2019年4月時点)が介護福祉士の資格を持っているという。

「介護福祉士資格の受験には3年以上の実務経験が求められるので、介護技術、経験のある証明になります。入社してから資格をとる場合は受験費用を全額補助しています」

 充実した設備も個別ケア推進を支えているという。居室に設置された行動検知センサーもその一つ。入居者の動きを検知し、転倒やベッドからの転落などの緊急時に映像を記録し、スタッフが持っているスマートフォンに映像が送られてくる。この設備によって、素早い対処と再発防止が可能になるという。

「居室の天井にカメラがついていて、映像を録画できるようになっていますが、全て保存して蓄積しているのではありません。ドライブレコーダーのように、転倒など何かあった時にだけ、その映像を保存しています。それを見ると、転倒の理由が分かるので、再発しないように安全対策を講じることができます」

 スタッフのスマートフォンに即時に映像が送られてくるので、転倒したまま誰にも気づかれないということはないそうだ。安全だけではなくプライバシーにも配慮し、この機能を使うかどうかを選択できるようにしている。このような設備を整えることで、生活リハビリなど必要な部分に人手をかけることができているという。

→4つの基本ケアとリハビリで自立支援に取り組む介護付有料老人ホーム<前編>
→一人ひとりの希望を叶える個別ケアに取り組む介護付有料老人ホーム<後編>

おむつゼロ!自立支援介護に取り組む特別養護老人ホーム「杜の風・上原」

 「おむつは買っていません」。そう語るのは、特別養護老人ホーム「杜の風・上原」施設長の齊藤貴也さん。なんと、ここでは入所したその日から全員、おむつを外すのだという。

 杜の風・上原を運営する社会福祉法人「正吉福祉会」は都内を中心に8つの拠点を持ち、特別養護老人ホームやデイサービス、居宅介護支援センターなど104の事業を展開している。杜の風・上原は2013年の開設当初からおむつを買わず、おむつゼロを目指してきたという。その結果、わずか半年で「常時の便失禁あり」33%が1.1%に減少、「常時の便失禁なし」が67%から98.9%に増加という劇的な変化が。おむつの必要がなくなり、おむつゼロを続けているという。

 では、なぜおむつをゼロにすることができたのだろうか。「おむつを望んでいる利用者はいない」「排泄の失敗が自信を喪失させ、自立に対する意欲をなくしている」との考えが施設全体に浸透しており、職員が一丸となっておむつゼロの目標に取り組んでいるという。そして、おむつをすることになる原因である便失禁を防ぐために、「下剤の廃止」「規則正しい生活」「規則正しい食生活と常食」「水分摂取」「起床時冷水」「食物繊維(ファイバー)」「運動(歩行能力の回復)」「決まった時間の排便」「座位(トイレ等)での排便」など数々の施策を実施。これらを実施することで、生理的で規則的なトイレでの排便が実現できるようになるそうだ。

「今までおむつが外れなかった人はいません。もちろん、最初は失敗しますが、できるだけ短い期間で成功まで持っていく理論や実践するための方法があります。例えば、水分を1500cc摂るために50種類の飲み物を用意し、液体で飲めない方はゼリーにするなどの工夫をしています。入所時は便失禁している方が多いですが、それは腸の機能が低下していて便が作れなくなっているから。うちでは下剤をなくして、ヨーグルトや食物繊維、オリゴ糖を摂ってもらい、腸の機能改善を図ります」(齊藤さん 以下「」は同)

 少子高齢化が諸外国よりも速く進んでいる日本。その対策の一つとして推進されているのが地域包括ケアシステムだ。杜の風・上原はその拠点施設として、在宅入所相互利用以外にも「認知症あんしん生活実践塾」「ひだまりカフェ」「高齢者トレーニング教室」「介護予防公開講座」を実施し、地域に福祉サービスを提供しているという。

「現在は在宅入所相互利用にベッドを5床あてていて、退所者の63%が自宅に帰っています。地域に対しても自立支援介護を基本にしています。元気なうちから予防に取り組んでいるといい結果につながります。地域交流イベントのひだまりカフェを実施したり、介護予防講座をしています。トレーニングマシンも地域の方に無料で開放していて、100名くらいの方に登録してもらっています。私たちが発信をして、地域の方々が要介護者にならないようにしています」

 高齢者トレーニング教室は、渋谷区在住の65歳以上の介護認定を受けていない高齢者が対象。マシンを使ったトレーニングやストレッチ体操などで健康を保つことができるという。介護保険で「非該当(自立)」、または認定されてなく、運動について医師の許可を得ていることが必要だ。

→おむつゼロ!自立支援介護に取り組む特別養護老人ホーム<前編>
→「在宅・入所相互利用」を導入!おむつを外して在宅復帰できる特別養護老人ホーム<後編>

 特養の整備など、高齢者向けの施策にも積極的に取り組んでいる渋谷区。新型コロナウイルスが収束したら見学に足を運べるように、気になる施設をピックアップしておいてみてはいかがだろうか。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。

→このシリーズのバックナンバーを見る

●「家庭内でも高齢の親には近づかない」命を守るため、いますべきこと

●新型コロナで要介護認定はどうなる? 要介護申請の流れをおさらい

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