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介護施設訪問レポート|4つの基本ケアとリハビリで自立支援に取り組む介護付有料老人ホーム<前編>

 高齢者向けの住宅の中から、話題の施設をピックアップ。記者が訪問し、施設で働く人の思い、設備、サービスなどをレポートする。今回は、東京都渋谷区にある介護付有料老人ホーム「アライブ代々木大山町」だ。

アライブ代々木大山町

 閑静な高級住宅街として知られる渋谷区大山町。この地に2017年10月にオープンしたのが、セコムグループの一員である株式会社アライブメディケアが運営する「アライブ代々木大山町」だ。

 落ち着いた住環境にありながら、小田急線・東京メトロ千代田線「代々木上原」駅、京王新線「幡ヶ谷」駅・「笹塚」駅の4路線が徒歩圏内。都心までのアクセスもよく、駅周辺には飲食店なども多いので生活もしやすい。

4つの基本ケアを習慣化し、自立ケアを実現

 アライブシリーズの12棟目、最も新しい施設としてオープンした「アライブ代々木大山町」には、アライブメディケアが18年かけて蓄積してきた経験が活かされている。その1つが「水分、食事、排泄、運動」の4つの基本ケアと「睡眠、減薬」から成り立っている自立支援ケアだ。

 1日1500ミリリットル以上の水分を摂取することを目指している。必要な水分量を確保すると代謝がよくなり、身体の活動性が上がるそうだ。また、日中に水分をしっかりと摂って運動することで覚醒レベルが上がり、睡眠の質も高まる相乗効果が期待できるという。

「水分量はきちんと記録し、実際の効果と比較しています。認知症による周辺症状への効果を目の当たりにすると、最初は半信半疑だったスタッフも熱心に取り組んでくれるようになります。水分量を増やしていった結果、表情が生き生きとしてきて、視線が定まるようになった方もいらっしゃいます。朝はコップ1杯のお水を飲んでいただきますが、スムーズな排泄にも効果があります」(アライブ代々木大山町・ホーム長の鈴木達哉さん 以下「」は同)

 起きてから寝るまで、食事以外で無理なく1500ミリリットル以上の水分を摂取できるように、スタッフは細やかな工夫を凝らしている。ゼリーを6種類用意して選んでもらったり、冷たいもの、温かいもの、水、お茶など好みや気分に合わせて飲み物を選べるようにしているという。

「食事の前、体操の後、お風呂の前後、散歩の後など、あらゆる機会を捉えて無理なく飲んでいただけるように、大きさや持ち手があるかないかなどグラスの選び方にもこだわっています。紙コップの方が飲みやすい方もいらっしゃいます。お一人おひとりに合わせて飲みやすいように工夫しています」

 排泄はオムツやパットを使わずに、トイレで排便・排尿を済ませられるように取り組んでいるという。食事については、1日1500キロカロリー以上の常食を噛んで、飲み込むことを目指しているそうだ。歯ぐきで噛める軟菜食や舌で潰せるソフト食も用意されているので、段階を踏みながら職員と一緒に常食を目指せる。

「しっかりと噛むことが脳を刺激しますし、便秘を防ぐことにもなり、排泄にもプラスです。また、下剤を使わないことを目指して、食物繊維を1日15グラム摂っていただくことも始めました」

 鈴木さんによると、減薬も効果をあげているという。複数の病院から色々な種類の薬をもらい、大量の薬を飲んでしまっている高齢者もいる。しかし、ここでは提携している医師の協力で、飲み合わせをチェックするなどして薬を減らす取り組みをしているという。

「退院し、こちらに入居された時にはベッド上で過ごす時間が多く、寝たきりに近い方がいらっしゃいました。夜はなかなか眠れず、立ち上がって転倒してしまうこともあったのですが、医師の指導の元で減薬に取り組みました。10種類以上の薬を飲んでいましたが、少しずつ減らしていくことで、今は規則正しく日常生活を送れるようになっています。以前は、薬の影響で日中ぼうっと過ごしてしまうことが多かったですが、最近はアクティビティにも積極的に参加されています」

常駐の理学療法士と介護福祉士が取り組むリハビリテーション

 アライブ代々木大山町では、自立支援に関わる基本ケアの1つである運動量の確保にも力を入れている。そのために体操などの運動メニューが豊富に準備され、アクティビティや趣味の活動も活発に行われている。運動機能の維持・向上を図るだけではなく、入居者が理想とする生活を実現すること、自立心を向上させることまで目標にしているという。


「最大45名という規模のホームなので、常勤の理学療法士がお一人おひとりの身体の状態を把握しやすくなっています。理学療法士が機能訓練のメニューを作り、介護スタッフと連携して実施しています」

 暮らしの動作に直結することを重視し、生活リハビリにも力を入れているそうだ。介護スタッフがその意義を理解し、積極的に取り組んでいる。

「トイレで立ったり、座ったりする。ズボンや下着を自分で下ろす。それもリハビリです。部屋からリビングに移動する際に、今までは車椅子だったのを歩行器に変えることも生活の中でのリハビリです」

 このような取り組みが成果をあげているのには理由がある。それは、介護福祉士の資格保有率の高さだ。アライブメディケア全体で、介護スタッフのうち、なんと71.1%(2019年4月時点)が介護福祉士の資格を持っているという。

「介護福祉士資格の受験には3年以上の実務経験が求められるので、介護技術、経験のある証明になります。入社してから資格をとる場合は受験費用を全額補助しています」

 いかがだっただろうか。自立支援のために必要な4つのケアを独自の評価表やシステムの記録を通じて推進し、目に見える効果をあげている「アライブ代々木大山町」。そのために必要な質の高い人材を確保し、手厚い人員配置を実現させている。そこには入居者や家族の希望を叶えるための明確な理論と、専門性を発揮して仕事に取り組むスタッフの姿があった。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

→このシリーズのその他の記事を読む

【データ】
施設名:アライブ代々木大山町
公式WEBサイトhttps://www.alive-carehome.co.jp/home/yoyogi-oyamacho/
所在地:東京都渋谷区大山町27-15
最寄駅:小田急線・東京メトロ千代田線「代々木上原」駅より徒歩約8分、京王新線「幡ヶ谷」駅より徒歩約10分・「笹塚」駅より徒歩約11分
類型:介護付有料老人ホーム
事業主体:株式会社アライブメディケア
敷地面積:1390.95平方メートル
延床面積:2467.58平方メートル
室数:45室
入居要件:概ね70歳以上、要支援1以上
構造:鉄筋コンクリート造地上4階
開設年月日:2017年10月1日
料金:初期費用(非課税)+月額費用(税抜)
(1)一括払い:標準・初期費用3200万円~、90歳以上・2462万円~
+月額費用34万6000円~
(2)年払い:初期費用468万円~+月額費用34万6000円~
(3)月払い:敷金(6ヶ月分)234万円~+月額費用73万6000円~
体験入居(7泊8日):10万5000円(税抜)

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。

●海を眺めながら上質な暮らしを!葉山の住宅型有料老人ホーム<前編>

●ライフスタイルに合わせで居室が選べる葉山の住宅型有料老人ホーム<後編>

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