市販の洗剤でコロナ感染予防対策は可能　北里大学の研究で判明

　身の回りのものの消毒殺菌のために使える“身近なもの”はないのだろうか―

　そんな悩みを持つ人のために、4月中旬、北里大学大村智記念研究所の片山和彦教授（ウイルス感染制御学）のグループが、日用品を対象にした新型コロナウイルスの「不活化効果」の研究を発表した。「不活化」とはウイルスの構造を破壊し感染力を失わせ、死滅させることをいう。

　実験方法は次のとおりだ。約1万個の新型コロナウイルスが入った溶液に各製品を加え、1分間または10分間放置。その際、製品に記載された使い方を参考に、洗剤など希釈が必要なものは希釈して使った。また、『クイックルワイパー』（以下、商品はすべて花王）など実験に直接使えないものは、シートに染み込んだ液体成分を加え、その後、動物の細胞を混ぜて、6日間かけてウイルスの増殖を調べたという。

　感染力のあるウイルスが残っていればすぐに増殖するはず。しかし、実験では多くの製品でウイルスの増殖が見られなかったという。具体的な結果を以下にまとめた。研究ではスーパーやドラッグストアに充分に在庫がある商品でも効果があることがわかった。

ゴム手袋をして水回りを掃除している — 消毒薬が不足している中、新たな研究結果で感染予防に光明が

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洗剤を普段通りの使い方で充分に感染予防は可能

　片山さんが続ける。

「実験はあくまで製品に書かれた使い方を参考に、本来の用途を想定して行われました。説明書から外れた使い方をすると危険な場合もありますから、間違った使い方はしないでください。手を洗う、拭き取り洗浄をする、衣類の洗濯をするといった普段通りの使い方で、充分に新型コロナの感染予防は可能だと思います」

　ウイルスは飛沫感染だけでなく、スマートフォンやテレビのリモコン、机といったよく手で触れる場所を介して感染を広げることもよく知られている。便からもウイルスが検出されるといわれ、トイレ回りも充分な掃除が必要だ。

　いわゆる「消毒液」ではなく、どの家庭にも常備してあるような、エタノールや界面活性剤を含んだ市販の製品、具体的にはキッチン洗剤やお掃除シート、洗濯洗剤などを対象に、ウイルス除去の効果があるかを確かめた点だろう。

　片山さんは次のように説明する。

「新型コロナウイルスは『エンベロープ』と呼ばれる脂質を含む膜に包まれています。エタノールや界面活性剤は、その脂質成分に反応してエンベロープを破壊することで、ウイルスの感染力を失わせます。同等の成分が含まれていれば、実験をした製品と同じ効果を得られるかもしれませんが、今回公表した製品以外は実験を行っていないので確実な保証はできません。製品名を公開したのは、間違いなく効果のある製品を使っていただきたいからです」　

　品薄の続くアルコール消毒液が店頭ですぐに買えるようになるには、まだ時間がかかるだろう。一方で、ハンドソープや洗剤はいまも充分に市場に出回っている。北里大の研究結果に加え、本誌で調べた身近な「コロナ対策グッズ」も表にまとめた。賢く難局を乗り切りたい。