猫が母になつきません 第198話「におわせる」
SNSで写真の端に高級なワインとか恋人の存在を感じさせるようなものを写り込ませて遠回しに自慢することを「匂わせ」というそうです。うちでは直接的に言わずにそれとなく気づかせるという意味でまさに「匂わせ」ではありますが、母はまったく匂わせる必要がないところで匂わせてきます。私が先日作った豚の生姜焼きが気に入ったらしいのに、母はなぜか「また作って」とは絶対に言いません。しかしやたらと豚肉と生姜が用意されているので食べたいんだなと思って作ります。素直に言えばいいのにと思いますが、素直になれない高齢者の方はきっと多いのでは? 理由はいろいろあるのでしょうが、頼むのはいやなんです、とにかく。昔の私であれば「食べたいならそう言ってよ」と憎まれ口のひとつもたたくところでしょうが、今は黙って作って、黙って出す。優しさではありません、省エネです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。
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