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健康

認知症を予防する独自のメニュー「認トレ(R)」って?考案者が解説

 認知症は、決定的な治療法が確立されていない病気の一つ。早期発見や予防が重視され、さまざまな方法が試されている。

 当サイトで『週刊脳トレ』を監修いただいている「ひろかわクリニック」(京都府宇治市)の広川慶裕院長が提言している「認トレ(R)」もその一つ。単にパズルやゲームをするのではなく、人間の体をトータルに考えた独自のメニューがあるのが特徴だ。

 「認トレ(R)」とは、実際どのようなことをするのか、広川院長にお話を伺った。

 * * *

脳の活性化は食・運動・脳トレの3つで考える

「私は専門医として、認知症を防ぐ手だてはないものかと長年研究してきました。認知症の原因疾患の多くを占めるアルツハイマー病と脳血管性認知症は、いずれも血管の老化が一因です。そこで、認知症の対策には生活習慣の見直しがまず大切だと考えました。そして私は診療経験の中から『食事』と『運動』と『』という3つの要素に『コミュニケーション』を加え、生活習慣に体系的にアプローチを行い、認知症発症の予防・改善・遅延を目指すプログラム『認トレ(R)』を考案したのです」(広川院長、以下「」内は同)

脳のエネルギーを作る食事トレーニング

「まず食事のトレーニングです。脳が活動するためには他の臓器と同じく栄養が必要。栄養不足になると認知症のリスクが高まってくることもわかっています。

 ポイントは3つ。血糖値を上げないこと、良質のたんぱく質を摂ること、良質な油をとることです」

 広川院長によると、さまざまな研究から糖尿病の人は認知症のリスクが高まることが判明してきているという。


 糖と聞くと砂糖を思い出してしまうが、米や小麦などの炭水化物も糖質だ。

「糖質の摂取は1日130~180グラムまでにするのが目標です。血糖値の上昇を穏やかにすることが大事で、白米や精製された小麦は糖の吸収が早いので、雑穀米やソバを主食にするといいでしょう。また良質なたんぱく質は、脳の神経細胞の修復に役立ちますから、大豆製品や卵を積極的に摂るようにします。そして良質な油は神経細胞を守る働きがあります。抗酸化作用で血液の流れをスムーズにする、EPAやDHAといった成分が豊富なイワシやサンマを頻繁に食べたり、料理には動脈硬化予防に役立つオリーブオイルやアマニ油などを使用することをオススメします」

●炭水化物  摂取量を130~180グラムまでに
血糖値の上昇を緩やかに:雑穀米やソバを主食に

●良質なたんぱく質
一日の摂取目標量(グラム)=体重(キロ)×1~1.5グラム
体重50キロの人なら50~75グラム
食品中のたんぱく質の量:卵2個に約12グラム、木綿豆腐1丁に約7グラム、豚ロース100グラムに約19グラム

●良質な油
悪玉コレステロールを減らすオレイン酸 オリーブオイル
中性脂肪値を下げるα-リノレン酸 アマニ油
抗酸化作用のあるEPAやDHA イワシ、サンマ、サバ、ブリなど

栄養を運ぶ血管を強化!運動トレーニング

「運動トレーニング」も認知症予防に重要だという。

「適切に栄養を摂っても、それがキチンと脳に届かなければ、脳は働くことができません。そのために必要となるのが『血流』です。栄養を運ぶための血管を強くし血流を改善するのに運動は大切なのです」

 運動といっても、ジョギングや水泳などのハードなものでなくてもいいと、広川院長は言う。「認トレ(R)教室」で実践しているものは、イスに座ったままでできる体操だ。

「一度に全身を動かす運動をしなくてもいいのです。教室でよく行っているのは、指先を動かすだけの運動や、足だけを動かす運動です。一見、ゲーム感覚の遊びのようですが、こうした運動を習慣づけることで血管の老化を防ぐことができ、脳への血流がアップして活性化につながっていきます」

●簡単な運動法1

 片方の手の指を折り曲げておき、左右の指が1本ずれた状態で指を折りながら10まで数えていく。

●簡単な運動法2

 イスに座ったまま両手を上げて足踏みをする「着席ウォーキング」。足と同時に脇腹の筋肉も鍛えられる。

神経細胞を鍛える脳トレーニング

 3つ目は、「脳のトレーニング」。

「脳を使うことの大切さも科学的な根拠があります。脳には神経細胞が存在していて、記憶したり、考えたりすると、神経伝達物質を介して神経細胞が情報のやり取りを始めます。脳へ血液が順調に流れていると、情報の流れもスムーズになるのです。最近の研究では神経細胞は脳を働かせると、秒単位で別の細胞と次々に『つなぎ替え』を繰り返すことがわかってきました。これが何度も繰り返されると神経細胞同士の接続部は太く大きくなり、さらに情報の流れが向上。脳は活性化していくのです」

 脳も体と同じように、使うことで鍛えられるということなのだ。

「食事」「運動」「脳」を 三位一体で考えなければ、脳の機能は向上させられないと、広川院長。これに「コミュニケーション」の要素を加えることで、より効果的になるという。

「認トレ(R)」教室で認知症の数値が改善

 広川院長はこうした考え方を実践するため、2015年から京都府宇治市にある自身のクリニックで「認トレ(R)教室」を開始。週2回~3回のペースで行っている。

「教室では認知症やMCI(軽度認知障害)の患者さんや予防をしたいという方々を対象に、食事と栄養について解説したり、みんなで体操をしたり、クイズやパズルなどを解いてもらったりと、楽しみながら脳を活性化させる取り組みを行っています。教室という形を採用したのは、私が非常に重視している『コミュニケーション』を取り入れられるからです」

 他人と触れ合うことは、それだけで脳の刺激になるとのこと。教室では毎回、20~30人が参加するため、自然と会話が生まれる。それだけでなく、隣の人よりも上手く体操をしようとか、問題を早く解こうというライバル心もコミュニケーションの一つになると広川院長は言う。

「私が『認トレ(R)教室』を続け、参加するみなさんに生活習慣のアドバイスを行ってきた結果、”頭がすっきりした”、”物忘れが減った”、”日々を明るく過ごせるようになった”といった声が聞かれるようになりました。また、MMSE(世界的に採用されている質問形式の認知症診断)や長谷川式などの認知症評価スケールのスコアも向上したり、脳の画像診断では血流の改善が見られた例もあります。」

 広川院長は、認知症に対して効果を上げている「認トレ(R)」を、より多くの人に知ってもらうために、東京のクリニックでも月に2回開催している。また昨年11月に発売されたムック本脳と体が若返る認トレ®で認知症にならない! (オレンジページ)でも、脳や血管を強くする食品や料理、自宅でできる運動法、漢字や数字を使った脳トレなどを紹介。認知症予防に大切なポイントについてくわしく解説している。

「認知症の前段階で、つまり認知症予備群といわれるMCIは40代で起こる人もいますが、MCIなら認トレ(R)を習慣づけることで、改善の余地は十分あります。認知症の予防は、少しでも早くから取り組むほど効果は高まります。生活の中にぜひ取り入れていってください」

広川クリニック公式サイト

●認トレ教室のご案内

【ひろかわクリニック教室】
京都府宇治市宇治妙楽24-1ミツダビル4F
ひろかわクリニック リハビリ室
毎週水・金曜日と第1・3土曜日/10:00~12:00
参加申込:不要
お問合せ:info@j-mci.com

【品川駅前教室】
東京都港区高輪3-25-27アベニュー高輪603(品川駅前MCI相談室内)
第2・4月曜日/13:30~15:00
参加申込:要
申込先:認トレ(R)協会
お問合せ:info@nin-tore.jp

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この記事へのみんなのコメント

  • 甚五郎

    認知症も総合的に体をケアしないといけないんですね。特に食生活と運動は日ごろ怠っているので、広川先生のご本を参考に予防に励もうと思います。

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