親とすぐに言い合いになり困っているあなたへ|700人以上看取った看護師がアドバイス
「読んで気持ちが楽になった」と言われるこのシリーズ。700人以上を看取ってきた看護師の宮子あずささんに、今回も、親とのバトルに苦労している多くのかたたちのために、自身の体験もふまえて、何とか乗り切るやりかたを聞きました。
「どうせ私なんか死んでしまったほうがいいんでしょう」と言われたらどうするか
親が、「私は迷惑ばかりかけている」「どうせ私なんか死んでしまったほうがいいんでしょう」と、ネガティブなことを言うのには、皆さん困っているようです。それに言い返して喧嘩になるというのもお決まりのパターンです。
●親を説得するのは無理
ともかく、説得して話をおさめようとするのは無理だと思うことです。「そんなこと言ったってしょうがないじゃない」と封じてしまうのもよくありません。反対してもしかたない、同意するわけにもいかない。難しいところです。
●言い分を聞いてあげるほうが早くすむ
「黙らせようとするのは逆効果になる。聞いてあげるほうが早くすむ」ということを覚えておくといいと思います。封じようとする圧力に対しては、抵抗してもっとエスカレートしていくものです。
「早くすませる」と言うと冷たい言い方かもしれませんが、合理的に考えると、ある程度親の言い分を聞いてあげたほうが、結果的には短い時間で終わることができます。
理解はして、賛成はしなくてもいい
私は、母(作家・評論家の吉武輝子さん。2012年に肺炎のため死去。享年80)と何度も言い合いになって反省を繰り返した末、ちょっとずるいけど母に対して「輝子さんがそう思っているのはわかった」と言うようにしていました。
●考えを変えなさいと言っても無理
賛成や納得ができなくても、理解はしたと表明するわけです。真面目な人は理解したら、同意しなくてはならないと思ってしまうかもしれませんが、同意はしなくていいのです。ちょっと不真面目な対応かもしれませんが、親がそう思っていること、そう言いたいのだということを理解してあげるために聞く、だけど同意はしないというテクニックです。
母が、病院の良くないところを延々言っていたら、「輝子さんがそう思っていることはわかった」と聞いてあげるわけですね。そんなことを言ってはだめと言っても伝わらないし、考え方を変えなさいというのは無理ですから。私は親が思っていることをわかってはあげるというこの方法で乗り切りました。
●オウム返しに繰り返すのもいい
「そうなのね、そう言われて腹が立っちゃったんだよね」と繰り返してあげるのがいいこともあります。親が言ったことをそのままオウム返しをしてあげると、こっちがちゃんと聞いていることが伝わって安心するようです。
<親としょっちゅう喧嘩になってしまう時のためのまとめ>
●「そんなことを言うのはやめなさい」と反対したり封じたりすのは逆効果になる
●言い分を聞いてあげたほうが早くすむと覚えておく
●賛成・納得しなくても、親の思っていることを理解したと伝える
●親が言ったことをオウム返しに繰り返してあげる
今回の宮子あずさのひとこと
「しんどいものだと諦めて、頑張りすぎない」
前に「親とのことはやたらとしんどい」とお話したことに、自分もそうだという声をいただきました。これからも、年を取ってしまった親と、どうつき合っていくと少しは疲れなくなるかについてお話していきます。
親との関わりがしんどいかたは、そういうものだと諦めて、あまり頑張りすぎないようにお過ごしください。
新型コロナウイルスの感染拡大で大変な日々が続きます。ご自身もお疲れをためないようお気をつけください。
教えてくれた人
宮子あずさ(みやこあずさ)さん/
1963年東京生まれ。東京育ち。看護師/随筆家。明治大学文学部中退。東京厚生年金看護専門学校卒業。東京女子医科大学大学院博士後期課程修了。1987年から2009年まで東京厚生年金病院に勤務。内科、精神科、緩和ケアなどを担当し、700人以上を看取る。看護師長を7年間つとめた。現在は、精神科病院で訪問看護に従事しながら、大学非常勤講師、執筆活動をおこなっている。『老親の看かた、私の老い方』(集英社文庫)など、著書多数。母は評論家・作家の吉武輝子。高校の同級生だった夫と、猫と暮らしている。
構成・文/新田由紀子
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