座ったまま1分で腰痛改善!簡単セルフケア|介護予防トレーナーが指南
マッサージでも効果なし、整形外科でも原因不明。ぎっくり腰が怖くて、冬はなるべく安静に。そんな人こそ、今すぐ腰痛ケアを始めましょう! 多くの腰痛に苦しむ人々を改善に導いた達人に「こんなに簡単でいいの?」と思える、楽チン腰痛予防ケアを聞きました。
座りっぱなしや立ちっぱなしの人は腰痛になりやすい
厚生労働省の調査(「国民生活基礎調査」の中の自覚症状調査)によると、日常の慢性的な体の悩みの中で、ここ数年、常に1位、2位を占めているのが、腰痛。
特に、体がこわばる冬は、ぎっくり腰の発症が最も多い時期でもある。そもそもなぜ腰痛になるのか。約70市区町村で体操や健康指導を行うほか、国の要請で腰痛対策が必須の介護士に向けた指導も行う介護予防トレーナーの久野秀隆さんは、「腰痛になりやすい人には傾向がある」と言う。
「その傾向とは、日常生活で同じ姿勢を長時間続けている人。座りっぱなしや、逆に仕事柄、立ちっぱなしの人などです」(久野さん・以下同)
特に冬は、筋肉が固まって体が動きづらくなるのに加え、冷えで筋肉がさらに硬直するという悪循環となる。
「猫背の人も腰痛になりやすいですね。姿勢のいい人は座ったままが続いても、歩く時に背筋をのばせるので、筋肉の動く幅が広い。ところが猫背の人は、立つ・座るという動作の間も背中が丸まっており、動きの幅が狭くなる。常に背中が突っ張った状態なので、腰痛になるのは必然です」
背中や腰の筋肉を伸縮させるだけの簡単な体操で腰痛改善
自分では体を動かしているつもりでも、姿勢が悪ければ腰痛はよくならない。改善するためには、腰周辺の筋肉の伸縮動作を、いかに生活の中に取り入れるかがキモとなる。そこで、久野さんが推奨するのは、背中や腰の筋肉を伸縮させるだけの簡単な体操だ。
「すべての運動は椅子に座ったままで、特別な道具も不要です。足裏や足まわりなど、一見、腰に関係のない部分をほぐしておくのも実は重要。体はつながっているので、ここが緩むことで腰の負担が軽減され、姿勢もよくなります」
上の写真で前屈している女性たちは、久野さんが主宰する体操教室のベテラン生徒さんだが、はじめからこんなに柔らかかったわけではなく、コツコツと2年かけて柔軟性を手に入れた。
「私の生徒さんの大半は腰痛・ひざ痛・肩こり持ちで、通い始めの頃は筋肉もカチカチですが、日々じっくりと体操を続けることで、みなさん、ほぐれやすい体になっていきます。中には『スリムになった』という人もいますよ」
では早速、体操のやり方をご紹介。
恒常的に体を動かしている久野さんですら、運動不足が続いた時に「やってしまった」と言うことがあるほど、ぎっくり腰は年齢問わず起こるもの。そうならないために腰や足まわりの伸縮、ほぐし運動と、より体を動かしやすくする運動を3ステップで紹介します。簡単な動きなので毎日続けましょう!
ステップ1 背面をのばしてちぢめる
腰痛の最大の原因といえる凝り固まった背面(背中・腰・太ももの裏)の筋肉を伸縮させて緩める体操からスタート。
「背中には体温を作る細胞が集まっているので、どんどん動かせば代謝が上がり、気温が低い冬はダイエット効果も大きい」(久野さん・以下同)という、うれしいオマケも。
■背中を柔らかくする!肩甲骨寄せ
【1】椅子に浅く腰かけ、背筋をのばし、両手をおへその高さに上げ、手のひらを上に向けて腕を前に出す。
【2】ひじを軽く曲げ、肩甲骨を徐々に寄せながらひじを後ろに引いていく。
この時、肩を上げないように注意。肩甲骨が最も寄った状態に。
「肩甲骨を寄せる時は、肩甲骨の間に物をはさむようなイメージで、肩甲骨を意識して、胸をしっかりと張りましょう。背中が柔軟になって姿勢がよくなり、若々しく見える効果もあります。つまずきやすい人にもおすすめです(10回×3セット)」
■腰痛改善の必須運動 ヒコーキ体操
【1】背筋をのばして座り、手はひざの上に置く(これが基本姿勢)。
【2】正面を向いて座り、椅子の背もたれにもたれながら、手を遠くにのばし、おへそをのぞくように背中を丸くする。この時、腰まわりがのびていることを感じよう。
【3】飛行機となって飛んでいくようなイメージで、体を前に傾けながら両腕を後ろにのばし、あごを上げる。この時、親指は外側に向け、目線は上へ。腰まわりが緩んでいることを感じよう。
背中と腰の筋肉の伸縮を繰り返すことで、腰まわりを柔軟にする運動です。長時間乗り物に乗って、急に立つとぎっくり腰になりやすいので、その予防にもなりますよ(10回×5セットを、1日のうちに分けて行う)。
■カチカチの太ももを緩める もも裏のばし
【1】基本姿勢から左足をまっすぐのばし、かかとを上げる。
【2】背中はまっすぐのばしたまま前傾する。ももからひざの裏が気持よくのびていることを感じよう。その姿勢で10秒キープ。右足も同様に。
「この運動をすることで、ひざが曲がった“おばあちゃん歩き”が改善できます。ひざ痛の人にもいいですよ(左右10秒ずつ×2セット)」。
ステップ2 足まわりをほぐす
腰を支える足は、腰痛の発症に大きく関係する部位。どちらも併せてケアすれば、腰痛の軽減に加え、フットワークも軽くなり一石二鳥だ。朝は一日を健康に始める準備運動として、夜は長い一日の疲れをとり、翌日のむくみやつりを予防する目的として、朝晩2回行えば、体はぐっと楽になる。
「足裏ほぐしは足がポカポカになりますので、冷え症のかたにはてきめんに効きます」
■足の重心を整える 足裏ほぐし
【1】右足を左ひざの上にのせる(これが基本姿勢)。
【2】足裏に両手の親指がくるように手を置き、そのほかの指は足の甲をつかむ。
【3】【2】のまま右手を奥、左手を手前と、交互に前後させながら足裏をぎゅっと絞る。逆も同様に。
絞るのは土踏まずの範囲。手の位置を変えながら足裏をほぐしていく。
「手を前後に動かしながら足裏をほぐす体操です。私の教室でも肝となる体操で、ここがほぐれると足裏全体でしっかりと立つことができ、体全体のバランスが整います。ツボ押しではないので押さないこと!(左右10回×2セット)」
■浮き指を改善 足指曲げ反らし
【1】基本姿勢から左手で右足指全体をつかみ、グッと外側に反らす。
【2】内側に曲げる。【1】【2】の動きを左右の足で10回×2セット繰り返す。
「この運動で、今問題となっている浮き指を改善でき、歩き方が安定します。足がつりやすい人にもおすすめです。『足裏ほぐし』とセットで行えば、足先が動きやすくなり、歩くのもラクになりますよ」
■足まわりの仕上げに 足首まわし
【1】基本姿勢から右手で右足首を持ち、左手で右足指全体をつかんで内側にまわす。外側にもまわし、左足も同様に。
「誰もがやったことのある簡単な体操ですが、毎日行えば、フットワークが格段に変わってきます。大きく、ゆっくりとまわすのがポイント。体操後、足首を前後に曲げてみてください。体操前より動かしやすくなっているはずですよ(左右10回×2セット)」
ステップ3 余裕があれば…即効性アリの足・脇運動
腰痛に並ぶトラブルが、肩こりや足のむくみ。これを軽くする体操も簡単なのに効果大。
「1回の体操で効果を実感するので、やっていて楽しいですよ」(久野さん)
■肩まわりスッキリ 脇ほぐし
【1】始める前に両手を上げてみて、上がり具合をチェックしておく。両手を下ろし、右手を左脇の下に入れ、ぎゅっともむ。手を下に移動し、ウエストのあたりまでもみ続ける。
【2】もみ終わったら手を再度上げてみよう。体操前より腕がスムーズに上がるように。
「この体操で脇の下からウエストにかけて、つまめるところをほぐすことで、背面にある広背筋という筋肉の端っこに刺激を与えています。肩こりに効くほか、下着にのる脇肉を引き締める効果もありますよ!(左右各30回ずつもむ)」
■肌色の印象が明るくなる! ふくらはぎこすり
【1】左足のふくらはぎを右足のひざにのせ、右ひざで左のふくらはぎをこするように前後に動かす。ふくらはぎの外側、内側も同様に。
【2】【1】の後、ふくらはぎのラインもスッキリ!
「片足のひざにもう片方の足のふくらはぎをグリグリとこすりつけることで、固まったふくらはぎにイタ気持ちいい刺激があります。これは教室でも人気の高い体操です。血流がよくなり、肌の色の印象が明るくなりますよ(左右30秒ずつ)」
腰痛だけじゃない!「ほぐし」のメリット
全国のコンビニエンスストアの数が6万店前後といわれる中、整骨院などの施術施設の数は、なんと約14万軒もあるという。これほど多くの人が、不調に悩んでいるということだ。
「私の教室では最初に痛いところを聞くのですが、NO.1は腰です。でも、腰痛は病気でない限り、自分でケアするしかないんです」(久野さん・以下同)
ヘルニアや脊柱管狭窄症など、素人では触れられない部位にある痛みの原因は病院で治す必要があるが、筋肉を柔らかくするのは病院では難しい。
「それに整骨院の施術者やリハビリの理学療法士が、24時間体制でケアしてくれるわけではありませんよね?」
そう語る久野さんは、“子役”出身という異色の経歴の持ち主だ(『ウォーターボーイズ2』〈フジテレビ系〉などに出演)。その後、スポーツクラブのトレーナーを経て介護予防トレーナーとなったのは2011年。健康寿命を延ばす介護予防の必要性が叫ばれ始める前から、60〜90代の男女を対象に「元気に動ける体づくり」の指導を始め、神奈川県で主宰する教室を中心に活動の場を全国に広げている。
「教室では痛みの部位に特化せず、全身の筋肉をほぐす体操を行います。レッスンは1か月に1回ですが、みなさん自宅でも実践してくださり、腰痛改善だけでなく『体が柔らかくなり、楽に歩ける』『化粧ののりがよくなった』『お腹まわりがスッキリした』など、多くの効果が表れています」
こんな効果が出るのなら、試す価値はありそうだ。久野さん考案の体操で、今年も元気に過ごしましょう。
教えてくれたのは…
介護予防トレーナー・久野秀隆さん/シニアコミュニティーの構築と健康寿命の延長を目指し、70市区町村の一般市民向けの体操・健康指導を行う。著者は『座ったままぜんぶできる1分足裏ほぐし』(主婦の友社)など。実は元アイドル。32才。
撮影/横田紋子(本誌写真室)
※女性セブン2020年2月6日号
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